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透明の空  作者: 兎束作哉
第4章 澄んだ空
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06 最高の日



「あずみんと、かこいんは仲良しさんなんだな」

「……ミスった」



 次の日、風邪を引くこともなく学校に行けば、教室出入り口付近で綴にタックるをかまされ、その後ずっとこんな調子で抱き付かれている。空澄は、俺と綴がどんな関係かも知らないだろうし、もしかしたら喧嘩していたことすら知らないかも知れない。だから、いつものように脳天気に「仲良しさん」と俺たちの関係をまとめる。

 そんな空澄は相変わらずだが、1つ変わったことがある。



「仲良しってもんじゃねえよ。な?梓弓。僕と、あずゆみはもう切っても切れない、離れることも出来ない恋人同士なんだからよぉ」

「おっきい声で言うな、つか、絶対違うからな!」

「仲良しさんだなあ~」

「空澄言っておくが、絶対勘違いするなよ」



 一応分かっていないであろう空澄に釘を刺す。その間も、綴にベタベタとされて気持ちが悪かったが、甘えるということも知らなかったであろう綴が、人に甘える、他の人にも興味を示した、ということはかなりの進歩なのかも知れない。俺にとってはあまり嬉しくないが。

 そんな風にベタベタしていた綴だったが、ふと何かを思い出したように俺に1枚の手紙を渡してきた。しっかりと赤い封蝋が押されている。俺は、嫌々ながらもそれを受け取る。



「何だこれ……?」

「アミューズからの招待状。ああ、多分梓弓を勧誘したい、とかそういやつじゃなくて、どっちかっつったらそっちの御曹司に向けて」

「は、はあ!?それなら、空澄に渡せば……」

「いや、だって此奴が理解できるとは思わないし?」



と、失礼なことを言った綴と、確かにと思ってしまった俺のことなど別に気にも留める様子なく「パーティーの招待状か?」と空澄は首を傾げていた。


 取り敢えず、開けてみないことにはどうにもならないと、敵からの招待状を綴が持っている時点でまだ繋がっていたのかとスパイ説を一瞬疑ったが、綴もそういうことに関しては脳がないので目を瞑り、手紙を封筒から取りだした。



「『AMUSIから 空澄財閥御曹司、空澄囮へ 空澄財閥のこれまでの悪事を太陽の下にさらけ出す証拠が我々の手元にある。己の全てを知りたければ、空澄家の書斎の扉を開くべし』って、何だこれ、意味が……」

「家の書斎?父さんの?」



 そう、空澄は俺が読み上げた文章を聞き口にした。何故、空澄家の書斎に行ったら悪事が……と色々突っ込みたくなったが、俺には空澄家の闇など何も知らないわけで口のだし用がない。だが、空澄は知りたいんだろうなと、その横顔から伝わってきた。



「空澄?」

「あずみん、一生のおね……」

「言わなくてもついていくから、安心しろ。勿論、綴もついてきてくれるよな」

「僕も!?僕関係ねえんだけど……まあ、梓弓のお願いなら」



 空澄の言葉を遮るように言えば、綴も驚いていたが了承してくれた。

 空澄を1人でそんな敵がいるかも知れない所に、といっても家だが危険があるのなら今度こそ俺が守りたいし、相棒である綴を連れて行けば、心強いだろうと思った。

 依存対象としての守るではなく、ただ1人の友人として守りたい……そう思ったからだ。同じ過ちは繰り返さない。


 指定された日付を確認し、俺達はその日のために作戦を練った。



「でも、可笑しくねえか」

「何が?」

「つづりが間違っててんだよ、綴だけに」

「しょうもないこと言うな。つづりってアミューズのか?」

「だって、そうだろう。AMUSEって最後IじゃなくてEだからよ」

「人は誰しも間違いぐらいあるだろ」

「そんな、組織の名前をデカデカと間違える奴いねえだろ!」



と、綴に突っ込まれる。調べてみれば確かにつづりは違ったが、ただたんに間違えただけだろうと思った。



「そうだよな、空澄。空澄?」



 空澄の方を向けば、何か考え込むように、口元に手を当て人差し指で唇を触っていた。



「どうした?空澄何か……」

「あっ!いや、何でもない!あずみん、また何か巻き込んじまって悪いな!」

「そんな……友人だからな、当然だろ」



 そう言ってくれると嬉しい。と空澄は何てこと無いように笑っていた。先ほどみた空澄は気のせいだろうと考え、俺達はその日は解散し、土曜日に集まることになった。それも、土曜日と言えば4月27日、空澄の誕生日だった。



(最悪だな。最高の日にするつもりだったのに)



 色々と準備をして祝う気満々でいたのに、この仕打ち。まあ、空澄の情報などアミューズには伝わっているわけだし、わざと狙ったに違いないが、悪趣味だと思った。

 先生も不在だったし、嫌な胸騒ぎはする。

 そうして、そんな嫌な胸騒ぎを抱えながら、空澄に案内され父親の書斎だという部屋に連れてきて貰った。そこは書斎と言うより図書館で、どんな風に取るのか分からない位置にまで本が本棚にぎっしり敷き詰められていた。本当にこんな所に……と、書斎をくまなく探そうと、1歩踏み出すと、空澄が俺と綴の手を引いた。



「あずみん、かこいん、多分こっちだ」



と、空澄はいつもとは違う顔つきで俺達の腕を引いてとある本棚の前までやってきた。そして、空澄がある本を抜き取ると、その本棚はガラガラと動き通路が現われた。まるで、からくりのようだと、先の見えない何処まで続いているか分からない闇の通路をみて俺達は固唾を飲み込んだ。




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