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透明の空  作者: 兎束作哉
第3章 毒蛾の空
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09 財閥のパーティーにて



 シミのない真っ赤な絨毯に、眩いシャンデリア、匂いなれていないワインや料理、そして聞いたことのないピアノの曲が流れる会場で俺は完全に萎縮してしまっていた。



「あずみん、似合ってるぞ!」

「これ、凄く動きにくいし、髪の毛も慣れないし……こんなに面倒なのかよ」

「背筋ピンだ!」

「……うっわ」



 予定より早く空澄の家に行き、空澄家の使用人に髪や服を仕立てて貰い、空澄家の所有する車で送迎して貰って上を見上げるのも苦しい高級ホテルに連れてこられた。ボディーチェックもそこそこに会場に入ればそこは見たことも無い世界だった。


 動きにくい黒いフォーマルに、ベタベタと塗られオールバックの髪に、そして革靴と兎に角落ち着かなかった。空澄はこういう場に何度も来ているのか慣れた感じに、いつもより背筋を伸してしっかりと顔を上げていた。空澄もいつもと違い、髪を結んで小綺麗な感じに仕立てて貰っていて、御曹司というのを改めて見せつけられた感じだった。此奴もちゃんと御曹司なのだと、あまりみない顔に違う世界の人だと距離を感じて染み合う。

 会場では、俺達のような学生はおらず、スーツを着た大人ばかりだ。それもそうだろう。ここにいる殆どの人は俺達が一生働いても稼げないような額の金を払ってこのパーティーに参加しているのだ。


 空澄に背中を叩かれ、背中を伸すがやはり空気に圧倒されて胃が締め付けられるような感覚になる。気を紛らわすために人間観察をしようと俺は会場にいる奴らに目を向けた。職業病と言っても良いのかも知れない。



(金髪のルビーの瞳の男性が久遠財閥の御曹司で、あっちの白い頭の奴が華月財閥の御曹司……か)



 この日の為に、多少は知識を入れて望んだのだが分かるのは御曹司の顔と、そのトップに君臨する大人だけだった。後は見知らぬ奴という認識で、俺の知識はあまり役に立たなかった。しかし、俺なんかよりずっと長く生きている大人達に囲まれても空澄は全く動じていなかった。寧ろ堂々としていて、流石だと思った。

 そんな空澄を見ていると、ふと空澄がこちらを向いた。



「どうした?」

「いいや、お前は違う世界の人間なんだなって思っただけだ」

「あずみん?」



 ついぽろっとでてしまった言葉に、空澄は首を傾げていた。理解できていないならそのままでいてくれと思いながら、他の御曹司と同じ空澄のルビーの瞳を見つめた。



(俺は、お前の目が1番綺麗だと思うけどな)



 同じ色だろうに、1番空澄のルビーの瞳が輝いて見えるのは、俺が空澄に執心しているからだろう。綴に言われた言葉が何度も頭の中で再生される。



「あっ、珍しい。来てたんだ、囮」



 ふぁあ……と欠伸をしながら近付いてきた男は、華月財閥の御曹司の華月翔空かつきしいだった。囮は「久しぶりだな!翔空!」と挨拶をしていたが、俺は頭を下げることしか出来なかった。



「そっちの、誰?」

「あ……俺は」

「あずみんは、俺様の友人のあずみんだ!」



 ちらりと華月にみられ、俺は慌てて頭を上げ名を名乗ろうとしたが、それよりも先に空澄が口を開いた。全く説明にもなっていなかったが、華月は理解したようにうん、と1度頷いていた。



「へえ、囮友達いたんだ。初耳かも」

「あずみんは凄いんだぞ!俺様の最高の友人だ!」



 熱弁する空澄とは対照的に、興味ないと再度欠伸をした華月をみて御曹司にも色んな奴がいるんだなと思った。それと同時に、金持ちで甘やかされてきたのか自由な奴が多いとも思う。



「囮の話には興味ないよ。あ、でも、囮の友人さん。囮と関わらない方がいいよ。囮危ないから」

「危ない?そんなわけ――――」

「今日、財閥の血縁者はボディチェックされたけど、ボディーガードやその他関係者はボディチェックがされなかった。それどころか荷物検査もなかった……囮、この意味分かるよね?」

「全然分からないぞ!」



と、分からないのに胸をはって答える空澄を、華月は無視し俺の方を見た。


 俺も分からないから振られても困ると視線を逸らそうとすると、磨りガラスのようなルビーの瞳を俺に向けじっと見つめてきた。目が離せない。



「囮の友人さん、大体変だと思わない?」

「変?何が」

「囮って名前……安直だと思わない?空澄財閥の闇が垣間見れる気がして。ぼくは『普通』じゃないと思うけど」



 そう華月は言うとスッと息を吸った。

 俺も前々から思っていたことで、まさかここで言われるとは思っていなかった。空澄は、ん? と首を傾げていたが、俺は自分の疑問に答えを出してくれそうな華月の話に聞き入っていた。

 空澄が、親が無関心だと言ったのも合わさって、何かあるのではないかと思ってしまったからだ。



「何か、知っているのか?」

「さあ?でも、ぼくの所は、空澄財閥の真似をして黒い泥に手を突っ込んだようなものだから、多分そういうことなんだろうね」



 俺には到底理解できない話だった。

 知っていて、教えてくれているのだろうが、俺が理解できていないだけ、そんな気がした。華月は常人では理解できない天才なのかも知れない。



「さすがは、華月家の長男……ってところか」

「ん?ぼくは長男じゃないよ?」



と、華月は首を傾げた。俺は思わず「は?」と口に出てしまい、慌てて口を押さえる。



(でも、記事にはそうやって書いて……)



「ぼくは、末っ子だね。事実上の長男にはなっているけど……父親の最高傑作。ぼくの兄姉は皆消されていったよ」

「……」

「まあ、分からないか。凡人には。そういうことだから、ぼくは忠告したよ。それでも一緒にいたいって、囮と一緒に堕ちた言って言うなら、どうぞ勝手にって感じ、ぼくには関係無いから」



 じゃあね、と手をひらひらと振って華月は何処かに行ってしまった。


 久遠財閥がどうかは知らないが、これで確実に華月財閥と、空澄財閥には公に出来ないような何かがあると確信に変わった。信じたくはないし、それを知らないような空澄が真相にたどり着いたら……そう考えると益々、俺は空澄を守ってやらなければと拳を握りしめた。




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