表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
透明の空  作者: 兎束作哉
第3章 毒蛾の空
36/63

05 〇



「お前、全く役に立たないな」

「あぁ~♡荒っぽい、梓弓も格好いいな。僕、もっと梓弓の事好きになりそう」

「喋るな、黙ってろ……クソが」

「あずみん、どうするんだ?」



 栗花落先生が消えた後、仕方なく動けない綴を担ぎながら、時間を気にし安全地帯を探すことになった。毒ガスとはまた準備万端だな、と思いつつ白瑛コースの棟だけでもかなり教室があるというのにどう探せばいいのかと思った。

 綴は動けないし、空澄も……それも、1度間違えて入ってしまえば皆死んでしまう。暗殺と言いながらかなり大がかりで、それこそ謎解きのようなゲーム。



(まさに「アミューズ」の名にふさわしいか)



 綴の時もそうだったが、その組織に所属している暗殺者は随分と頭が可笑しいようだった。ただ殺しをするのでなく、自分の腕とスタイルに自信があって自惚れていて、そうしてターゲットをおちょくる天才だと。

 空澄は、イマイチ状況が理解できていないのか俺の後をついてくる。時間は残り15分になった。教室を一通りみてみたがガスマスクは何処にもおいていないようだった。きっと中に入らないと分からない場所に置いてあるのだろうと。だからといって、間違えた教室を開けてしまうと1発アウトだ。



「そういえば、さっき栗花落先生が落としていったものがあって。あずみんこれ」



と、空澄は言い出せずにいたのか、ポケットから1枚の紙切れを渡した。そこには「○」と「129」、「300」の数字が書いてある。


 綴もそれを覗いたが3人ともこれがどんなヒントなのかさっぱりだった。因みに、綴は成績はいいが、テストになると毎回サボっている。



「○……いや、ゼロか?それに何だこの数字」

「クイーンはそういうの好きなんだよ。毒のスペシャリスト、毒蛾の暗殺者。梓弓って何にもしらねえんだな」

「お前が知りすぎなだけだ」

「世界には沢山の暗殺者がいる。梓弓はこの日本でしか仕事してねえから、分からねえと思うけど、世界には凄い奴らがいっぱいいる。まあ、その中から今回選ばれて、僕がJ、クイーンがQの座を貰ったわけだけど」

「……じゃあ、Kもいるのか」

「いると思うぜ?誰かは知らねえけど、Kは相当強いみたいだぜ」



 そりゃそうだろうな。と、俺は綴を担ぎ直しもう1度ヒントに目を通す。

 今は、アミューズの情報よりもこのヒントを元に教室を割り出すのが先だと思った。刻一刻と迫っていく時間に焦る。



(○が、そのまま記号の○なのか、ゼロなのか、果たして英語のOか。後、数字も意味が分かんねえし)



 頭を抱えながら必死になって考えるが、全く思いつかない。空澄の方を見ると、俺と同じく悩んでいるようで頭を掻いていた。

 すると突然、空澄は俺の手を握ってきた。思わず手を振り払おうとしたのだが、空澄は離そうとしない。



「何だ、空澄」

「俺様の位置からそれ見えないから、見せてくれ」

「それを先にいってくれ。ほら……○と数字と……というか、お前拾ったときにみなかったのか?」

「取り敢えず拾っただけ!落し物かと思って、後で交番に届けようと思ってた!」

「はあ~」



 純粋さに何も言えなくなって、さらに頭が痛くなる。

 俺は取り敢えず、空澄に紙を渡し綴の様子を見る。大分麻痺がとけてきているようで、もう少ししたら完全に動けるようになるだろう。安全地帯を見つけ、ガスマスクをつけたら、栗花落先生を探す。近接戦に持ち込めれば、俺と綴がどうにか出来るだろうと。



「綴」

「何だよ、梓弓」

「今回は、力を貸せ。俺が援護にまわる」

「おい、おい、おい、おい!梓弓!」



 いきなりそう声を出す綴。元々敵だったためか、それとも此奴の性格のせいか、やはり協力してなどくれないだろうと言うだけ無駄だったと俺が忘れてくれ、と言いかけた時、綴が俺の髪を掴んで引き寄せた。



「……ッ」

「僕も同じ事を考えていた。矢っ張り、僕達気があうな。最高の恋人あいぼうじゃねえか」

恋人あいぼうになった覚えはないぞ、綴」



 そう、上機嫌に共闘を許諾した綴は声を弾ませる。

 先生に、栄養ドリンクを貰う時にこの間の課題の成果について報告した。その時俺は、弱点の克服の糸口は見つけたが、暗殺者同士が共闘し合えばもっとよくなるんじゃないかと言う考察も同時に提示した。先生は、それについてよく気づいたなと、褒めてくれた。

 近接戦が苦手な俺は、それを補うために近接戦を得意とする暗殺者と相棒バディを組むことが必要だと結論づけた。



(まあ、上手くいくか分からないけどな……綴の動きはある程度この間分かったが、破天荒すぎて息が合うかどうか)



 そんなことを考えながら、今はそれどころじゃないと空澄にヒントの紙を返すよう言った。どうせ、空澄も解けていないだろうと思ったからだ。



「空澄、そろそろ紙を……」

「――――円周率」

「は?」

「これ、○って考えたとき円周率の129番目の数字は2、300番目の数字は3。もしかして、2の3の教室じゃないか?」

「は、は、はあ!?」



 空澄の出した回答に頭が追いつかず俺はその場で叫ぶことしか出来なかった。



(○はそのまま○と考えて、円の円周率?数字はその円周率の桁を表しているって言うのか……?)



 もし、空澄の出した答えが本当なら、今すぐに2の3の教室に引き返すべきだ。だが、それが本当に答えなのかどうかも分からない。だが、ここはそれに賭けるしかないと、それが答えだと直感でそう思った。俺は、綴を担ぎ直し、空澄の手を握って走り出した。残り時間は5分だ。階段を3階まで上がり、つきあたりの教室まで行かないといけない、きっと間に合うだろうが、これで外したら後がない。元々1回しかないチャンスだ。

 俺達は全力で階段を駆け上がり、廊下を走った。



「でも、何で空澄、そう思ったんだ」

「そうって、さっきのヒントか?」

「ああ、そうだ。○が何かって言うこともそうだが、円周率、何でその桁まで覚えているんだよ」

「う~ん、俺様数学だけは出来るんだよな。円周率はかなり言えると思うぞ!3……4桁とか……?後、記憶力……とかも、自信ある!」



(そういう、次元の話でじゃない)



 空澄の記憶力と数学の点数の良さだけは知っていた。だが、円周率をそこまで覚えているなんて、もうπを使えばどうにかなるのに……と、俺の頭では理解できない空澄の頭の構造についてとやかく言っているうちに、2の3の教室までついた。



「ここ……か」



 教室は自動ドアだがボタンを押すようになっており、押した瞬間扉が開く。もう3分も切っており、引き返すことは出来ないと思った。



(もし間違っていたら……) 



 死の恐怖を感じ、手が震えているのが分かった。だが、この恐怖はきっと自分が死ぬ、というよりかは空澄も……という不安からきたものだろう。綴は阿呆みたいに興奮しているし、彼奴は放って置いてもいい。



「……」

「あずみん、俺様が開ける!」

「は、待て、お前じゃなくても」

「だって、俺様のせいで巻き込んでいるんだからな。これぐらい、開けさせてくれよ。あずみん」



 そう空澄は、笑う。



(巻き込まれているなんて思ってない……そんな風に、思わないでくれ)



 どうにか止めようとして、空澄に手を伸ばしたがスカッと空を切るだけで掴むことは出来なかった。

 そうして、扉のボタンに触れ自動ドアが開いた瞬間、空澄の身体が横に倒れた。



「……ッ!?空澄――――ッ!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ