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壊れた世界を今日もゆく!  作者: テキサス
2章『ハリボテ英雄は許されたい』
17/25

ゲヘナ 

 地下牢の環境は最悪だ。

 寒いし、床が硬いせいで体が痛む。


 (まぁ、あの洞窟よりはマシですけどね…)


 上の方での喧騒がやみ、足音が遠ざかっていくのを感じる。少し待つが、耐えきれない。


 (期待していいんでしょうか)


 はやる気持ちを抑えながら、わたしは舌先で丁寧に、硬口蓋に魔法陣を描いた。途端、ボロボロと風化していく、わたしの手を拘束していた黒魔鉄の錠。


 (脱走の意思には反応なし、と)


 その場に立ち、少し伸びをする。


 計画の失敗を報告して、監禁されてからどのくらい経ったのだろう。クソ親父の妙なサドっ気に付き合わされるこっちの身にもなってほしい。


 ゴォォォン!!


 地下牢側には梯子がない。

 天井の隠し扉を氷弾で破壊すると、跳躍して、空いた穴の淵に腕を引っ掛けた。そのまま登る。


 すぐ上は工房の隅っこだ。姿勢を直し、部屋を見渡す。すぐに中央の男の死体が目に入った。


 (…こんなラッキーなことがあるんですね)


 この日をどれだけ待ち望んだことか…と思いながら、その死体に歩み寄る。首を掻き切られ、目を見開いて死んでいる。


 (杖も装備してないとは…相変わらず間抜けですね)


 ノードス=ウィズドラ。


 わたしの父にして、たった1人の家族だ。無能のくせに、娘の研究成果を学会で発表し、チヤホヤされてイキリ散らかす、真正の屑。


 職人派筆頭のこの男のせいで、わたしはマルシェとブレアを暗殺することになっていた。


 似たような命令を受けていたアーノルドと連携して、いいところまで行ったのに失敗した。命からがら逃げ出した私に待っていたのは、大きな罵声と、ぐちぐちと続く嫌味だけ。


 (ほんと、娘が天才だったという幸運だけの男のくせに…)


 流石にイラっとした私は反抗してしまい、矯正できるまで地下牢行きということになった。


 死体からネックレスと指輪を奪い、工房の一角、ちょうど作りかけの魔導レーダーがある辺りに向かう。


 (盗みをしないお相手さんは、十中八九、大義を掲げたクソブレアの手の者でしょうね…)


 まあ、わたしはもう、政治には関係ないか。

 目的地に到着したわたしは、目の前の、何の変哲もない壁面に右手を向ける。指輪を付けた人差し指をトンと付けた。


 「主の呼び掛けに応じ、顕現せよ。…ストレージオープン」


 人差し指に付けた指輪が光り輝き、目の前の壁面からは、少しずつ黒い杖が姿を現す。それを左手で引き抜くと、じっくりと見つめる。


 (たまりませんね…)


 やはり杖の所有権は指輪に宿るようだ。安心した。


 魔法杖ノア。我が家の家宝だ。あの伝説のご先祖様がこの国を離れる時、置き土産として、この家に残していったらしい。


 黒い繊維が捻れたような見た目だ。さらにその周りを、漆黒に染めた眼球のようなものが、ぷかぷか螺旋状に回り続けている。私が杖に手を伸ばすと、回り続けながら避けるようにその球が動く。握って、とてもよく馴染むのを感じる。


 (出発の準備は整いましたね…)


 覚悟がなかなか決まらない。父の死体の所まで歩いていくと、その顔を踏みつけた。何度も。何度も。


 (やっぱり、鎖に反応はありませんね)


 もういいのかもしれない。…いや、憂いは断ち切るべきか。自分の胸の谷間に走った傷跡を、指先で撫でる。


 (ちょっとヌルッとしてる。…お風呂に入りたいですね)


 父がわたしが産まれてすぐ、刻みつけた傷跡。


 代理母から受け取ってすぐ、彼はわたしの胸部を切開し、自ら作った魔道具を埋め込んだんだとか。


 曰く、父親に害意を持って行動すると、その程度に応じて心臓を締め付ける鎖。物心ついてから才覚を発揮し始め、父を見下し始めたわたし。そんなわたしに対し、愉悦の表情で彼は語った。


 「お前は一生俺の道具だ。生まれた時から決まってたんだよ」


 すぐに反抗してみると、残念な事に、私の心臓は本当にギリギリと締め付けられ、その苦痛は形容し難いものだった。命の危機を感じたわたしは、それ以来ずっと、父親の命令を聞いていた。才能ある人間の若さを消費して、凡人に奉仕させられた。


 (ほんとうに屈辱です…)


 そんな日々も今日で終わりらしい。もう自由だ。


 帝国はなにやら騒がしく、ブレアがやっとクーデターでも起こしたのかもしれない。けれど、この完全体ノア様なら、容易に国外に脱出できるだろう。


 (どこにいきましょうか)


 昔からの夢があった。


 学園島『アイデパズオー』の、『レレ魔法学園』の生徒になりたい。情報が遮断されていて分からないが、あそこでは、かなり研究が進んでいるという噂がある。それこそ、帝国を超えるほどに。


 今から受験チケットとなるゴールデンドラゴンを探そうか。いや、適性ある人間が望むと勝手に近づいてくるとも言われている。だったら、


 (教国『ファテロン』…)


 長く他人に使役されてきて、己のなかにフラストレーションが溜まっているのを感じる。ユザーミ帝国第三帝国軍中将。この肩書きはいつも父のコネだと笑われ、心臓の鎖を恐れて言い返すことも出来なかった。


 (…こんどこそ)


 教国は有能な人材に優しいと聞いたことがあった。教国で立身出世し、ある程度野心を満足させてから、学園島に向かおう。そのうちチケットも見つかるだろう。


 未来へのモチベーションはMAXだ。


 意を決して、右手に闇魔法でメスを生成すると、胸元の傷跡に指し込んだ。そのまま一気に引く。


 「ぎぃっ」


 左手も使って傷口をベリベリとこじ開け、肋骨が見えた。その隙間に、思ったよりも大きな肺が、呼吸するごとに動いてるのが見える。


 (あんまり自分の体内は見たくないです…)


 肺の中央に、どくどくと脈打つ、銀の鎖が巻かれた心臓が隠れている。かなり見えにくい。


 (こういう時、胸が大きいと損です…)


 回復魔法は使えない。傷が塞がるから。麻酔も使えない。局所であっても脳は鈍るし、何より痛みも重要な情報源だ。


 (あまり得意じゃありませんが…)


 自分の全身に強化魔法を掛けた。

 そして、黒いメスを細かく高速振動させる。同じく闇魔法で黒い棒を生成し、服を引き裂いて巻いた。…それを口に咥え、意を決する。


 (敵の魔法使いに利用されないとも限りませんし…よし!)


 「ウ…グゥ!!」


 振動するメスを肋骨に当てた。







 「よくやった。ゼルア中将」


 ここのところ帝都近郊を騒がせていた奴等が、ようやく捕まった。その中にはマルシェの仲間もいる。


 「白髪褐色の少女。あれだけこちらに連れて来い」


 「は!直ぐにでも!」


 ゼルアはその銀髪を揺らすと、すぐに少女の方へ向かう。


 (本当に…使える女だ)


 逃走するルシエド一派を捕らえたのもアイツだったな、と思い返しながら伸びてきた髭を撫ぜる。あれから、状況はますます優勢になった。


 マルシェが投降してきたのだ。


 こちらからは、彼女にだけは手出ししないよう命令していた。精神的な弱さのせいか、自分から殺し合いを仕掛けられない彼女は、この状況に困っていたのだろう。


 (俺が垂らした蜘蛛の糸に、気付きながらも縋るしかないとはな)


 ようやく行動できる、と思ったのだろう。


 ルシエド一派の希望である彼女は、わざと負ける訳にはいかなかった。かといって古巣である第一帝国軍を積極的に潰すほどの気概も、持ち合わせていないようだ。


 (本当に、甘さの抜け切らない女だ…)


 ルシエドが捕まって、一週間後には処刑だというビラを帝都中にばら撒いた。もちろん、大事な神輿を失うつもりなんてなかったが。


 マルシェは案の定、ばら撒いた翌日には同志達の詰所に来た。予め決めていた通り、俺に連絡が寄越される。


 「…ブレア。アタシが代わりに処刑されるから、巫女様の命は見逃してくれ」


 敬語をやめ、こちらを睨み付けながら、少しつっぱるように言った彼女の本質は、全く変わっていない。


 白々しい。


 いくら単細胞の猪女と言えど、かつて神童と言われた頭脳は状況を俯瞰できていたはずだ。


 俺がルシエドを殺すつもりがないことも。わざわざビラを巻いて、余裕のある処刑日を伝えようとした理由が、消耗せずマルシェを殺したかったからだということも。


 (……まあ、もっと深い理由については誰にも分かるはずがないが)


 そして、彼女自身がルシエドを救いたかったというより、身代わりで死ぬという英雄的行為で、慰められたかっただけだということも。


 ゼレアに連れられて、少女が磔の前にやってきた。彼女は地面に倒され、ゼレアに背中を再び押さえ付けられる。警戒するように数人の同志がそれを囲んだ。


 マルシェを見る。まだ意識を取り戻していない。そして『神の機体』を見る。ここらで余興の一つといこうか。それとも。


 「目覚めさせろ」


 マルシェの方に顎をしゃくりながら、近くに居た同志にそう命令する。


 すぐに彼女の顔面に、いくつもの水球がぶつかった。







 『骨吐き洞窟』を破壊してからの生活は忙しかった。


 国内外のメディアの取材に答えたり。ブレアと共に巫女派のイメージアップイベントに参加したり。圧倒できなかった領域の主との戦闘の悔しさから、密かに修行を積んだり。久しぶりに友達と遊んだり。


 だから、気付けなかった。いや、気付きながらも深く知りたくないから、わざと自分を忙しくしていたのかもしれない。


 ブレアはクーデターの準備を完了し、それを実行。お手本の様な流れで帝国を制圧した。


  (アタシは、何も出来なかった…)


 ブレアに協力するわけでもなく、ルシエドと共に対抗するわけでもなく。


 家に篭ってただ呆然としていただけだ。定期的に届くルシエドからの通知に、連絡用魔導具を握り潰した。



 腹が減って、街を歩く。

 兵隊に見つかっても、アタシが存在しないかのように無視される。


 ちらほらと何処かに連れて行かれる人々が目に入った。それに抵抗して、歩兵に暴力を振るわれる一人の子供の姿。


 「おい!やめろ!!」


 アタシが声を掛けると、すぐに歩兵が手を止めた。


 「おやぁ、マルシェ様じゃないですか。流石に敵わないなぁ、親分に手を出すなとも言われてるし。分かりました。辞めます。ごめんね僕ちゃん〜」


 そう言って子供の頭を撫でると、彼はヒヒヒと笑って、仲間達を呼んだ。少ししてアタシ達の元から離れていく。残されたのはアタシと、その子供だけ。他の人々は相変わらずそいつらに連行されたままだ。


 「…ありがとう!マルシェ様!!」


 痛みを堪えるような笑顔で、こちらを見上げてくる。そこに、弱者が強者に媚びるような表情が見えた。相手の期待を感じてしまって、胸が苦しくなる。


 「ああ…いいんだ…」


 そう言って踵を返すと、早歩きでその場を遠ざかる。誰かの人生を背負う程の、心の余裕はない。腹は空いたままだ。


 あの子はこれからどうするのだろう。中途半端に救って、庇護者が見つかったかもしれないというピュアな期待も裏切って、アタシは一体何がしたいんだ。


 歪んだ自己満足。後味の悪いお礼を受け取っただけだ。いや、アタシはそんなものにでも慰められたかったのかもしれない。



 「上っ面の正義に他人を巻き込むな」


 自分のことを棚に上げてそう言った、ブレアの見下した表情が頭をよぎる。アタシは、嫌な女になってしまった。結局のところ、古傷はずっと癒えないまま。




 子どもの頃は、英雄になりたかったのに。


 昔読んだ絵本を思い出す。子供向けの絵本の割に、敵達の背景が暗く、そのストーリーも生々しかった。陰湿なやり方で主人公に襲いかかる敵達は、躍起になって彼を否定しようとした。


 けれども、印象に残っているのは主人公の事ばかりだ。


 いつでも真っ直ぐ。悪者に引っ張られず、正攻法で障壁を突破してみんなを救う。


 翳ることのない、やさしげで素朴な顔。片手剣と片手盾。シンプルな防具。頭には兜を付けずにハチマキを巻いていた。頭を指差して、馬鹿なのか、と問う敵。それに対してニカッと笑って、


 「俺が俺である為に必要なんだ!」


 と元気に言葉を返す主人公。それが妙に胸に刺さってしまった。同じセリフを言いたくて、ハチマキを頭に巻いて、誰かからツッコまれるのを待ったこともあった。


 「わたくし、英雄になりますわ!!」


 彼みたいになりたくて、みんなに止められながら、御前試合に出たこともあった。




 彼だったら、みんなに愛されていたと思っていたのに、本当は誰にも愛されていなかったというショックに、耐えられただろうか。



 作中で彼は一度だけ涙を流した。


 ギリギリで助けることが出来なかった、死にかけのお婆さんに、彼の頬に付いた切り傷を心配された時だ。その時だけは等身大の少年で、顔を歪ませて泣いていた。…でも、その一度だけだ。


 少年と、その作者の『想い』が詰まった場面だった。



 けれど、わたくしがアタシになってから、その本は一度も読んでいない。







 長い夢を見ていた。


 衝撃で頭が少し揺れる。顔が濡れている。すぐにまた衝撃。目を開けると、高い位置で革命広場を見下ろしていた。ステージの上だ。磔にされているのか。


 眼下にはそれを囲むように、大量の銃を構えた歩兵や魔導兵。


 そして同じくステージの上には、ブレアとルシエド、加えて少数の歩兵。


 最後に目に映るのは、ゼルア中将に背中から組み敷かれた少女の姿。


 「…むぅう!」

 (…セツッ!)


 猿轡を嵌められたまま叫んだ。


 「……」


 セツは答えない。彼女も猿轡をされていた。その赤く濁った瞳で、地に伏せながら、こちらを見上げている。すっと頭が冷える。けれど、心臓の鼓動がどんどん激しくなる。


 「これも、お前の中途半端さが産んだ悲劇の一つだな」


 ブレアがそう言うと、ゼルア中将が、セツの頭部に魔導銃を突き付けた。鳥肌が立ち、凍りついた頭はまともに回ってくれない。  


 (やめろ、やめてくれ。アタシだけで…)


  ルシエドがそれを見て、驚いたように目を丸くする。いつも余裕のある彼女らしくない。猿轡を嵌めたままうめき、後ろ手の拘束具をガチャガチャと鳴らす。


 (誰か、アタシ達を助けて…)


 そんな彼女を抑えながら、ブレアが続ける。


 「これから先、俺はこの国の膿になりそうな人間を更に粛清していく。…もちろんこの俺自身も例外ではないが」


 あの英雄の少年が絵本の中から飛び出してくるのをイメージするが、勿論何も起きない。


 「次は共和国を征服する。植民し、資源を搾り尽くし、帝国の版図を広げる」


 (……何も、起きない?いや…)


 彼をイメージしても、彼自身が現れる事はなかった。でも、あの絵本に込められた『想い』。


 「そうすれば忌々しい教国も敵ではないだろう。ルシエドを神輿に帝国教会を広めて、世界への影響力を奪ってやる」


  (なんだ?心がポカポカする)

 

 その『想い』はアタシの胸に燃えていて。


 ブレアが言葉を止め、こちらを無表情で見つめている。


 「俺は、そうすると決めている。…お前はどんなんだ、マルシェ」


 (言われなくたって…)


 凍っていた頭がゆっくりと回り始める。

 両手には黒魔鉄の手錠が付けられていた。その部分だけでぶら下がっているのて、手首と肩が少し軋んでいる。


 右手に力を込める。が、ヒビも入らない。


 (猿轡で詠唱も出来ないし、これじゃ魔法陣も描けない。半端な魔法じゃ手錠を壊せないばかりかセツ達も巻き込む…)


 ふと閃く。


 (そうかコッチを壊せばいいんだ)


 気付いてからは早かった。右手をブチブチと引き抜く。ピチャッという水音と、裂けた肉、位置のずれた骨は気にしない。磔に足裏を当て、力を込める。同様にして左手も引き抜き、そのまま浮遊感。


 ステージの上に降り立った。

 騒めく兵達を抑えて、ブレアが前に出てくる。


 「考えなしの行動。無謀だな。…ふむ」


 ブレアはぐるりと周囲を見渡してから言う。


 「この兵力を相手に、無事に勝利するのは幾ら貴様でも無理だろう」


 そして、こちらに向かって歩きながら続ける。


 「それは、化け物を相手するこちらとて同じ事。帝国内での潰し合いは避けたい」


 困惑するアタシを通り過ぎ、


 「……俺と一騎打ちをしろ。勝てば後は、貴様の自由だ」


 ざわめきが広場中に広がった。





 黄金の魔導兵に乗り込もうとするブレアを、ゼルア中将が必死に止めようとしている。彼女はブレアの前に立ちはだかりながら、


 「……どうして!ずっと、あんなに準備をしてきて…ようやく目的が果たせそうなんですよ!」


 ブレアが冷たく、硬い声色で答える。


 「俺は常に、帝国の利になるかどうかという観点で物事を考え、そして選択している」


 「それならブレア様しか…!」


 「ブレア大将…だ。俺しかいないなら、俺が勝つだろう」

 

 彼女は唇を噛み締めて俯いた後、セツやルシエド、そしてアキラ達の方を向く。


 「あの、ブレア大将。人質を…」


 ブレアは、俯いたままのゼルア中将の横をすり抜けながら呟いた。


 「要らん。勝った方が正義だ。そいつに帝国を任せろ。分かったな」


 少し沈黙があって、


 「…はい」


 彼女が答える。


 「負けるとでも思っているのか?」


 「いえ!そんな事は…」


 ブレアはそのまま黄金の魔導兵に手をかざした。機体がしゃがみ込み、掌を差し出す。


 私はそれを眺めながら、傷ついた両手を治療している。


 (回復魔法の系統は苦手なんだよな…)


 ブレアの考えはよく分からない。チャンスを与えられたようで、状況は絶望的なままだろう。ブレアを失った兵達がアタシの言うことを聞くかも分からない。そもそも本当にブレアに勝てるのか?





 広場は閑散としている。ブレアに命じられて、アタシ達以外は遠くまで退避した。

 遠目に人影が動くのを目が捉えるが、すぐに視線を戻す。


 ブレアが乗り込んだ黄金の魔導兵を見上げた。……あれが噂の『王の機体』か。オーラが違う。

 (恐らく、特級領域の主よりも、一回りは強い。直感が警告しっ放しだ)


 正直、今の自分で倒せる自信がない。


 (それでも…)


 身体をほぐし、その周りに雷を纏っていく。拳の周りに岩を造成し、圧縮する。


 (このまま終わらせないためにも…)


 大きな駆動音を上げて、こちらに武器を振りかぶる巨体を睨み付ける。アタシは、そのまま進む足を止めない。



 「…アタシが、アタシの待ち望む英雄になる」

 


 


 


 

 


 

 

 

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