6 一人前の箱庭冒険者
初めて町の外に出た、孤児院の子供たちは孤児院から出ること自体ほとんどないのだが、
首都ルーンの町は広く外に出る門が東西南北4カ所設置されていて、南門付近の魔物は初心者向けなのだそうだ。初心者向けなだけあって、南門付近の魔物はこちらから攻撃しない限り襲い掛かってくることはない。魔物は2種類いて、まっしろスライムとつのウサギだ。パーティを組んで戦うため、女の子3人組と男の子3人組、そして俺とファナちゃんの2人に別れた。
男女で別れても良かったけど、ファナちゃんが俺から離れたがらなかったし、俺も男だけでパーティでやるより可愛い女の子と一緒にパーティ組んだ方が楽しいしな。
孤児院で武器を支給されたが、こんぼうと木剣があって、男3人は木剣をもらって嬉しそうに振り回していたが、かよわくて可愛い俺には重たくて、両手でなんとかこんぼうを持っている……
骨格から女性の体にしてるから、見た目通り力がないんだよな~。
ジャンパースカート姿でこんぼうってのもなかなか似合わない見た目だが。
将来的にはこう……バトルドレスというか、漆黒のドレスとか装備したり
貴族の令嬢の女騎士みたいな正装とか着て、冒険者姿もお洒落を楽しみたいところだ。
そんなことを考えていると、シスターロザリアから今後の目標などが伝えられた。
「これから13歳の成人の儀式の日まで、まっしろスライムを倒して経験値を稼いでLvをあげて、ゼニーを稼ぎ魔石を拾って、卒院した後の為の資金を貯めるのですが。1つ目標があります……魔物はとても低い確率で魔物カードを落とす事があります」
ゼニーは通貨で、魔石はどんな魔物でも落とすもので、大きさや色で値段が変わってくるが、様々な用途があり、前世でいう電力の代わりのようなものを担っているから……
お湯を出すにも部屋の明かりをつけるのも燃料として魔石が使われているその他にも魔石用品はたくさん女神商会から売られているため、箱庭協会に売ることもできるが、基本的には買うくらい必要なので自分たちで使うことになるだろう。
シスターロザリアがまっしろスライムの絵が描かれている魔物カードを皆に見せている。
「魔物カードには使うと身体能力があがったりするものが多いのですが、まっしろスライムはスキル浄化を覚えることができます。 浄化のスキルは体に付いた汚れや、装備の汚れを取り除いて清潔にする冒険者には必須のスキルで、一人前の箱庭冒険者になりたいなら13歳の成人の儀式の日までに1枚手に入れるように頑張ってくださいね」
浄化のスキルは凄くほしいスキルだったから嬉しい。女の子3人組も嬉しそうな顔をしている。
俺も嬉しいし、ファナちゃんも欲しいな~という顔をしている。
たぶん……
「ファナちゃんさっそくやってみようか。最初に俺がやってみるから近くでみててね」
ファナちゃんがにっこり笑って頷く。
まっしろスライムはぽよんぽよんと動いている白くて丸い生き物だが、こちらには全く反応しない。携帯で鑑定をしてみると、
・まっしろスライム Lv1 ランクG スキル 浄化
町の周りを綺麗に浄化してくれているのかな……
そ~っと背後から近寄って両手でこん棒を思いっきり振り下ろした。
「かいしんのいちげき~!」
1発ではやっつけれなかったようで何度かこんぼうで叩くと倒す事が出来た。
魔物の死骸は残らず煙のように消えていくなか、小さい魔石が落ちていた。
煙のように消えるなんて、ファンタジーだなぁ……
魔石を拾って次はファナちゃんの番だよと伝えると、ファナちゃんがにっこり笑って頷く。
次にみつけたまっしろスライムの背後から近寄って、ファナちゃんが両手でこん棒を振り下ろすと先ほど何度か叩かないと倒せなかったまっしろスライムが一発で倒せたみたいだ。魔石を拾って
嬉しそうに近くに寄ってきた。
「あれ……ファナちゃん力強いんだね。凄いね~偉い偉い」
頭をなでると嬉しそうに目を細める。この調子で褒めながらファナちゃんを育てていこう。
俺のパーティメンバー第1号だな!……ていうか俺より力も強いし。
見た目ばかり気にしすぎて俺が弱いだけなのかもしれないが。
腕とかムキムキになりたくはないし……Lv上げたらなんとかならないかなー。
「今の2匹で2人で分けてゼニーは50ゼニー、Lvは上がってないけど経験値は入ってるのかな?」
ファナちゃんに話しかけていると少し遠くで見守っているシスターロザリアが教えてくれた。
「経験値は数字では分からないけど、魔物を倒したときに少し何か吸収しているのを感じるはずよ!
まっしろスライムは弱くて経験値が少ないから分かりにくいかもしれないわ!」
なるほど、自動販売機のジュースも1本150ゼニーくらいだから、貰えるゼニーも少ないんだろうけど。カードを目指して、まっしろスライム退治を頑張りますか!
成人の儀式の日まで半年間、ほぼ毎日まっしろスライムを叩く日々が始まった。