40 エルフの里へ
まだ眠い……シャロンが朝ご飯を食べているようだ。昨晩は長い夜だったから夜ご飯も兼用だろうか、誰かといる時は絶対に出てこない、気が利く女性だよシャロンは、布団がもぞもぞ動いてシャロンが顔を出す。
「おはようございますご主人様、朝ご飯を頂いておりました、ありがとうございます。あの眼鏡エルフは朝早くに部屋を出ていきましたわ」
「おはようシャロン、いつも悪いね」
「ご主人様が魅力的で、女性に好かれるのは仕方ありませんわ……ですが、私やファナを大事にすることを忘れないで下さいね」
シャロンはファナとだけは仲良くしてるんだよな、他の女性とは会話もしないんだけど。たまに二人で手を繋いで笑ってる時がある、ファナのコミュ力の高さには驚かされるよ。朝ご飯を食べに行こうと部屋を出ると、部屋の前にイリスが待っていた。
「あの、昨晩はありがとうございました。男性に興味があって、冒険者になって里を出て、それでCランクになって、それでも誰にも声をかけることが出来なくて、トモエさんに優しくして頂いたおかげで、ようやく夢が叶いました。これから、精一杯仕えさせて頂きますトモエさん……いえ、旦那様」
旦那様って、恥ずかしいな。でも俺も一緒なんだ、いいスキルを手に入れて、見た目もいいから声をかけてもらえて良かっただけで、自分から異性に声なんてかけれなかったよ。今でも全然ダメだ……だからイリスの気持ちは凄い分かる。
「これからよろしくねイリス、頼りにしてるよ、イリスの手料理は美味しいからね」
「ありがとうございます……家事以外も頼りにしてくださいね」
イリスが恥ずかしそうに笑っている、可愛いな。そのまま朝食を食べようと二人でダイニングに向かっていると玄関から銀色の猫を抱えたララノア師匠が歩いてくる。
「トモエ、この猫がお前の従魔かのぅ、庭に居たら玄関の前で寝ているのを見つけたわ可愛い猫だのぅ」
師匠が手を離すとアルシエは俺の近くまで素早く寄ってきて変身を解いた。
「ただいま戻りましたあるじ様、いろいろ報告したいことがあるのですが、あのお腹がすいてて、少しご飯を頂いてもよろしいでしょうか」
腹ペコ吸血姫が魔界から帰ってきたようだな。少しアルシエに栄養を補給してからリビングのお馴染みのソファーに全員集まった、俺とファナとシャロンとアルシエ、それにララノア師匠とイリスの6人だ。
「えっと、ファナは知ってるし、師匠もシャロンは見たことあるとは思うけど一応イリスは初めてだから紹介しておくね、俺の従魔の夢魔姫のシャロンと吸血姫のアルシエだ」
シャロンとアルシエは会釈をする。二人はファナとは仲が良いけど、他の人と仲良くする気はそんなにない感じがするんだよね、逆になんでファナは二人と仲がいいのやら。
「ふむ、姫が二人か、エルフの姫も入れて3人も姫を揃えることになるのぅトモエ、姫が好きなのか?」
「たまたまですよ……それでアルシエ、魔界へ里帰りはどうだったか報告してくれ」
アルシエは背中に抱えていた魔界から持ち帰った装備をテーブルの上に置いて報告を始める。
「まずシャロンのお母様にシャロンの無事と伝言を伝えて、ブラッドソードをお返ししてきました。お母様はとても喜んでおられて、鞭を探して戻る予定だと伝えたら、代わりにこれを渡してくれと頼まれました」
・デーモンローズ 生命力を込めることで射程が伸び実態のある残像を生み出す魔の鞭
Bランクの鞭だ、実態のある残像ってどういうことだろう……
「これはお母様が使っていた貴重な鞭ですわ、こんなにいい物をどうして私に」
「シャロンが夢魔として大人になったお祝いだそうです。戦闘でも私生活でも活躍して旦那を惚れさせろと仰ってました、あと、暇が出来たら旦那も連れて里帰りしてこいと……味見してやるそうです」
「絶対里帰りはできませんわね、お母様に味見されたらご主人様がおかしくなってしまいますわ」
シャロンは母からの伝言に嫌そうな、しかし嬉しそうな顔をしている……仲の良い親子だったのだろう。
「僕も父上と母上に挨拶してきたら、この両手剣を頂きました。これであるじ様達を前衛として支えます」
・ディフェンダー 常に自分の生命力を少量回復する守りの剣
Cランクの前衛向きの剣だ、これでアルシエがタンク、ファナがアタッカー、俺とシャロンが中衛という所か、後方支援や魔法という所が足りてないけど、バランスは良くなってきたな。
「さて、アルシエが帰ってきたばかりで悪いんだが、エルフの里に皆で向かう予定なんだ。増築の件は後はイリスに任せていいのかな?」
「はい、皆さんがエルフの里に行ってるうちに増築作業をここで私が職人の皆さんと行いますので。留守番はお任せください。アリエルお嬢様にもよろしくお願いしますね」
「分かった、さっそく出発しようと思うけど、師匠準備は大丈夫ですか?」
「いつでも行けるように、馬車は準備してある、1時間後くらいにおれが呼ぶまでに出発の準備をしておけ」
必要なものは影の中に収納して、馬車に乗りエルフの里へと向かった。そういえば、ルーンの町以外で寝泊まりすることって無かったな、エルフの里はルーンの町から数日北に行ったところにある迷いの森から行くらしい。
「エルフの里は迷いの森を抜けた所にあるんだが、里への正しい道順はエルフしか分からない。トモエ達をもちろん信頼しているんだが、エルフの掟で、道順を見せるわけにはいかんのよ、森の中を通っている間は馬車の中にいてくれ」
ララノア師匠に申し訳なさそうに言われたが、見た目が整っていて、少数種族のエルフが生きていくには必要なことだったんだろうな……ファナが俺の肩にもたれかかって寝ている、シャロンは影の中にいるし、アルシエは猫になってファナの抱き枕になっている。馬車に揺られながら、野宿を挟んで数日で迷いの森へ入り、半日くらい進んだ頃、ララノア師匠から馬車から出ていいぞと声をかけられた、馬車の外に出ると、水と樹木が綺麗で、幻想的な景色が広がっていた。




