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30 エルフの死生観

翌朝目を覚ますと、ララノア師匠の部屋だ……なんだか体がだるい……師匠はもう起きてるようだな。

布団がもぞもぞと動いて、シャロンが顔を出した。


「おはようございますご主人様、朝ご飯を頂いておりました……夜ご飯は食べる時間が無かったので少し多めに頂きましたわ」


……これだよ、シャロンの奴すぐ拗ねるんだよなぁ。でも他の女と夜遊んでても、拗ねるだけで許してくれるだけ優しいともいえるのか……起きてリビングへと向かうと師匠がソファーに座っているがテーブルの上に刀と着物が置いてある。


「おはようトモエ、本当のご褒美はこれだ、本日よりトモエをおれが編み出した刀剣術、斬鉄剣の免許皆伝とする、一人前の斬鉄剣の使い手としてこれからも精進するように。この装備は泉水の国という、刀や着物などが盛んな国の、Bランクダンジョンに一人で潜っていた頃に、ダンジョンの最下層にいた魔物、怨霊の武士と戦った後に手に入れた品物だ、おれが普段装備しているBランク装備、刀「情熱」とガーネットの着物と色違いでな能力も一緒だ……いつか弟子に託そうと思っておったのよ」


ララノア師匠の刀「情熱」は持ち手の所や装飾がガーネットが飾られている緋色を基調としていて、刀身が黒い黒刀。着物は白をメインで黒い帯、ところどころにガーネットの色が入った着物だ。そしてテーブルの上にある装備もBランクの装備だ。


・刀「静寂」 絶対に壊れない不壊のスキルを持つ黒刀

・ラズライトの着物 自己修復のスキルを持つ丈夫な着物


刀「静寂」は持ち手の所や装飾がラズライトが飾られている藍色を基調とした黒刀だ、不壊のスキルがついてるから刀身が黒いのかな……ラズライトの着物は黒をメインで黒い帯、ところどころにラズライトの色が入った着物だ。Dランクの俺がBランクの武器と防具を装備できるとは……


「この二つを装備すれば、Cランクのザパンどころか、Bランクの魔物や冒険者とも互角に渡り合えるだろうのぅ、Cランクの装備でも特殊なスキルを持つ装備はあるが、Bランクの装備にしては大人しい方の装備だよ……だがのぅ、近接攻撃を得意とする冒険者が一番恐れるのは武器を失うことだ、特に普通の刀は折れやすいからのぅ……斬鉄剣はどんなものでも切れる刀剣術だが、魔物だけでなく対人戦でも役に立つ……なにも切るのは人間ではなくていい、武器を切れば無力化できるからのぅ」


……斬鉄剣でこの刀を切ろうとしたらどうなるんだろうな、もったいなくてできないけど。


「ありがたく頂きます師匠、この刀と着物に見合う冒険者になりますよ!」

「まぁまずは斬鉄剣を10回に1回は成功するくらいまでにはなってからだのぅ」


二人で笑いあった後ララノアさんがソファーから立ち上がると、ちょっとふらついて倒れそうになった。


「師匠大丈夫ですか?……昨晩頑張り過ぎましたかね」

「馬鹿者、あれくらいでへばるおれではないわ……これはそうだな、満足してしまったからかもしれんな」

「満足……ですか?」


もう一度座りなおしたララノアさんが真剣な表情で俺を見つめる。


「トモエよ、エルフっていう種族はのぅ、長命の種族とはいったがもうほとんど不老みたいなもんなんだ。成人して、ある程度育ったらずっとそのままの姿なのさ……おれはもう500年以上生きている……おれより年上のエルフは、エルフの始祖様と呼ばれる人だけだ。アリエルの母親である現女王は200か300歳くらいだが、おれより年下のエルフでも亡くなった奴は結構多いんだ、なんでだと思う?」

「冒険者をやっていて、魔物にやられたとか……病気になったとかですか?」

「まぁそれもあるだろうのぅ、だが冒険者をやってるエルフなんて数えるくらいしかいない。皆エルフの里で静かに暮らしてるのさ……だからだろうな、飽きてしまうんだろう生きていることに。段々と生きている目標や目的……意味を感じなくなって、自然に死んでいくのさ。おれが見てきた限りだと死ぬ直前まで体は若い頃のままだった」


なんだろうな……前世でも墓の話とか親が死ぬ話とかお葬式とか、そういう話は聞きたくなかったけどそんな気持ちになる……


「おれがなぜ500年以上も生きているのかと、それは刀剣術を極めることに情熱を捧げていたからだ。毎日が強くなることに夢中で、斬鉄剣を編み出し、気づけばAランクにまでたどり着いた。そして、おれが作った刀剣術……斬鉄剣をトモエに伝授したと思ったら、おれは生きることに満足してしまったんだろうのぅ」

「そんな……ララノア師匠が死んでしまうなんて言わないでくださいよ、俺もまだまだ強くなりますんで、そのうち一緒に冒険に行きましょうよ!」


寂しくなってしまってララノア師匠に抱き着いてしまう、死ぬとかいなくなるとか聞きたくない。

俺はこの女神の箱庭で出会った人達を誰も失いたくない……


「可愛い奴め、安心しろ、トモエが斬鉄剣を完全に習得するのを見届けるまでは死なない。だがな、エルフというのはほぼ不老な種族で、お前の周りにはおれを含めて4人はエルフの女がいるだろう。トモエが寿命を迎える時がきたとしても、おれ達4人は若いままお前の傍にいるだろうな。ず~っと見送る側というのも辛いし生きるのに疲れてしまうもんなんだよ」


ララノア師匠は俺のほっぺたに優しくキスをして抱き締めてくれた。



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