29 修行の成果
厳しい修行の日々は瞬く間に過ぎていった……今日もスラリン島に来ている。装備はララノア師匠の薦めもあって、白い着物姿で、ララノア師匠と同じくらいの長さの刀を装備している……安物だが。修行は主にスラリン島で行っていて、女神の箱庭に転生して以来、一番長い時間を過ごしているのはこの場所かもしれない。そう思うと、冒険者成りたての頃スラリン姉妹と呼ばれていたのは間違ってなかったな、今度パーティ名をシスターズからスラリンシスターズに変更するか……
「斬鉄剣」
対峙しているDランクのデビルスラリンを前に、刀を納刀して構える……刀にオーラを纏い、目にも止まらぬ斬撃を繰り出すが……硬いデビルスラリンの体に刀が弾かれる。
「こら~集中せい!トモエ~!もっと刀に纏うオーラを薄く鋭くするイメージだよ!刀を鈍器にして殴ってどうする」
目標の3年はすでに過ぎて、17歳も終わりかけ、そろそろ18歳になろうとしている、身長も伸び完全に綺麗な大人の和服美人という感じになってきた……男だけどね。
未だに斬鉄剣を習得することが出来ていない……スキルの習得は順調だったのだが……
まず俺やファナはブラッドソードに生命力を流して感覚を覚えることから始めた。強撃のスキルは武器にオーラを流した状態で、敵に攻撃したときに解き放つ感覚で使う。ファナのように鈍器や斧で戦うには相性がいいスキルだ。剣閃はそれを鋭く振りぬいて飛ばすような感覚で、何年も使い続けたスキルだけあって、スキルの習得は順調に終了した。
問題は刀剣術の習得だが、これに修行の時間のほとんどを使ったといってもいい。刀で戦う冒険者ってかっこいいよね……くらいに考えていたが、一切武術の経験がない中、刀剣術を一から覚えるのはなかなか骨が折れる日々だった。例えると前世では外国のバスケットを見るのが好きでダンクとか技術に憧れていたが、実際の俺は左手でドリブルをすることもできない引きこもりおじさんだったわけで……左手でのドリブルから練習を始めたような日々だった。
デビルスラリンが得意の闇魔法ダークストライクを打ってくる、もう半年はこいつと戯れているおかげで、避けたり刀で切り払うこともできるようになった……刀を納刀し、オーラを纏わせる、目を閉じて……オーラを薄く鋭く……刀を振りぬいた。
「斬鉄剣」
目にも止まらぬ斬撃は、今度こそ硬いデビルスラリンの体を両断した、デビルスラリンは煙になって消え、経験値が体に入ってくる。久しぶりのLvアップの感覚だ……ステータスを確認してみる。
トモエ Lv19 Dランク フレイヤの加護 影魔法 身体強化 浄化 魅了 吸精 従魔召喚 強撃 剣閃
3年かかって、Lv2しか上がってないが、今までが順調過ぎたのもある。Lvはいつまでも自分より弱い敵を倒していても上がらない……だからファナは獣人娘たちとパーティを組んで3人で活動している。パーティ名は獣耳姉妹……「ケモミミシスターズ」だそうだ。残念ながらシスタープリンセスのネーミングセンスはファナが原因だったようだ。まぁ俺とファナはスラリン島出身のスラリンシスターズなんだけどね……刀を納刀してララノア師匠の元へ戻る。
「よくやったのぅ!見事な斬鉄剣だ、その感覚を忘れるな!今のお前なら100回に1回は斬鉄剣が打てるだろう」
たわわな胸で抱きしめてくれる……ふがふがっ、身長も同じくらいになったがちょっと高さを調整して胸に飛び込んでいく……
「100回に1回じゃ成功してる気があんまりしないですけどね」
「馬鹿者が!何百年にもわたっておれが鍛えた刀剣術の末に編み出した斬鉄剣を、たった3年で完璧に使えるようになるわけなかろう。1回できたのだ、それを目に、体に焼き付けていればいつか必ずお前が完璧に使えるようになる日がくるさ。少し遅れたが、修行はこれにて終了とする。後は地道に技術を鍛えよ」
ララノア師匠が笑いながら頭を乱暴に撫でてくる……斬鉄剣は一日にしてならずか……
スラリン島のアンちゃんに挨拶して帰ろうとするが、3年の月日で変わってることがもう1つある。
「アンちゃんそろそろ帰るね」
「お疲れ様~、トモエくんも毎日スラリンと戦うの好きよね……、明日も来るんだったら羊羹とか食べたいな~」
このアンドロイドの成長ぶりである。以前半年くらいお菓子を餌付けしていた時には町にいる同じ顔をしたアンドロイド達と変わらなかったのだが、今では身長も伸び髪の毛も伸びて、幼いフレイヤ様という感じだったのが、段々とフレイヤ様の外見に近づいてきている。無表情だった顔は気怠くて暇そうな顔をしているし、町のアンドロイド達は一切外見が変わらないのにこの娘だけが成長している。
「残念だけど、修行が今日で終わってね、明日からは来るかわかんないかなぁ~」
「ええ~そうなの!?また明日から暇じゃないの~、ファナにもたまにはお喋りしに来てって伝えてよね」
「分かったよ、甘いお菓子を忘れずに持っていくように伝えとく」
「頼むわよ~」
もうほとんど人間にしか見えない成長ぶり、毎日餌付けして会話してたせいなのかな……思えば甘くないお菓子を二日連続で上げたとき、甘いのがいいと言い始めたあたりではもう成長は始まっていたのかもしれないな……家に帰って風呂に入ったが、ファナは獣人娘たちとルードの町方面での依頼を受けてるらしくここ1週間は不在だ。
1年くらい前まではパルミラも住んでいたが、パルミラも用事が出来たとか言ってエルフの里に帰っていったしロザリアに至ってはもう3年以上エルフの里に行ってから帰ってきてない……エルフの時間の感覚は人とは違うんだろうが、シャロンがいるとはいえ、ロザリアとパルミラ二人とも居ないというのも夜は寂しいもんだぜ……二人の肌の感触を忘れてきたな。
「よしトモエ、今日は斬鉄剣習得のお祝いだ!褒美をやるからおれの部屋にこい」
「……確か昨日はいつもより納刀の構えが綺麗になったお祝いで褒美をもらいませんでしたっけ師匠」
「硬いことをいうな今日は修行終了のお祝いだぞ、いつもより豪華な褒美だ……好きだろ?」
大好きです……連日他の人の部屋で寝てるとシャロンが少し拗ねるんだよな~。




