14 一夜限りの愛?
なんだ……温かい……温泉や温水プールに浮かんでいるような……
温かくて、なんだか気持ちよく溶けていきそうな。ふわふわと浮いているような感覚を感じていると、段々と意識がはっきりとしてくる。仰向けでベッドの上に寝ているようだが、体が動かない。
「うーん、王子様……好きです」
サキュバスの姫様に全身抱き枕にされて頬ずりされている。寝言も可愛い……正直最高な状況だが、姫様が寝ている間になんとか抜け出さないと。身体強化を使っても全く動かない……というか別に良くないか。
温かい……前世ではこういう温もりを求めていた。こんなに可愛い子に抱きしめられて、寝言で好きだと言われている……もしかしたら魅了にやられてるのかもしれないし、玩具扱いされてるのかもしれないけど、こんなに誰かに愛されているのは初めてだ。このままこの子の腕の中で抱きしめられたままでもいいのかもしれない……この子とこのまま仲良くやっていけないだろうか。
そんなわけないよな、俺は人間で彼女は魔物で、人間を餌にするサキュバスだ。ポーク達も捕まってるだろうし、なんとか助けを呼ばなければ……がっしり嵌っているようだけど何とか左手を出す事ができた。Dランクの魔物に対抗できる、ロザリアさんに連絡を取らないと。携帯を呼び出し静かに電話する。
「はいはい、ロザリアだけど、トモエどうしたの?」
「小声ですみません、町の南東にある、鉄のフェンスがついた洋館にポーク達と一緒にサキュバスの群れに捕まっているんです。俺はDランクのサキュバスの姫様に捕まってて、身動きが取れません助けに来てもらえませんか?」
なんとか姫様が起きないようにと静かに電話するが、頬ずりされるくらいに距離が近いからいつ起きるか気が気でない。状況だけ見れば最高なんだけど……真剣さが伝わったのか、ロザリアさんも小声で答えてくれる。
「分かったわ、私と冒険者仲間の子と2人でそっちにいくわ。10分くらいはかかると思うの、突入するときに大きめの爆発音が鳴ると思うから、それを合図になんとかあなたも逃げ出そうとしてみて」
電話が切れた、なんとか助けを呼べたが、体は1ミリも動かない。俺にあとできることは、魅了は使えない……吸精が使えるか?これだけ体全体が密着しているから、効果は抜群はなずだ。
他に方法がない、もうすぐロザリアさんたちが突入する合図が鳴るかもしれない。姫様をもう一度鑑定してみると。
サキュバスプリンセス Lv18 Dランク スキル 影魔法 魅了 吸精 状態異常 疲弊
疲弊!?……疲れて弱っている。それでもがっしり嵌っていて体は動かせないくらい抱き着かれているが、弱っているなら吸精が効くかもしれない……合図が聞こえたらやるしかない!
でも本当にいいのか。この子は魔物かもしれないが、俺のことを好きだと言ってくれる……
話せばわかってもらえたりしないか?共存できないのか……たった一夜だけど愛した姫様を攻撃するのか?……悩んでいるうちに大きな爆発音が聞こえる。
「なに、何の音?」
姫様が目を覚ましながら体を起こそうとしている、って姫様洋服着てないじゃん。
密着している今やるしかない……!!
「エナジードレイン!!」
抱きしめられていた体中に何かを吸収している感覚を感じる……てかめちゃくちゃ気持ちいい。これはサキュバスのスキルだわ。ものすごい勢いで何かを吸い取っている。
「ぎゃああああああああ!!!!!」
姫様は叫び声を上げながら俺の胸を叩き離れようとしているが、何かが嵌って抜けないのか、離れることができない……効いている、今しかない。俺は逃げようとする姫様に全力で抱き着いた。
密着している体全体で姫様の生命力を吸い取っている。疲弊しているから弱弱しいが、叩かれたりひっかいたりして、ダメージをもらっているが、吸い取る生命力で回復していく。
段々と姫様の抵抗が薄れていく、俺を好きだと言ってくれた子を倒そうとしている、どうしたら良かったのか……自然と口から言葉が突いて出る。
「ごめんね、好きだって言ってくれたのにごめんね」
姫様はその言葉を聞いてか、俺の顔の近くに顔を近づけ、キスをして?とばかりに目をつぶった。
心が通じあった気がした。彼女は俺の事を好きで、俺も彼女を好きだと思った。
彼女の唇に優しくキスをした……彼女は弱々しい笑顔を見せて笑って……
煙になって消えた。




