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1 パパはぜんぜんわからない

将来を期待していた優秀な王子がいきなり婚約破棄! そのときパパである王はどうふるまうのか!? 今、父の慟哭の声がひびく!


典型的な婚約破棄のお話を、婚約破棄をした王太子のパパ、つまり王様の視点から見たお話です。


全四話で完結です。


 シャルル2世は驚愕した。


「婚約破棄だと!? それは真か!?」


 驚愕の余り執務机から立ち上がり、机に両手をついて、ぷるぷると全身を震わせている。


 シャルル2世がフランデルの王に即位して40年。

 即位の時より仕える侍従長ですら見たことがない驚愕ぶりだ。


「い、遺憾なことながら、はぁはぁ、ま゛間違い御座いませんっ。

 ふフィリップ殿下はっ、今夜っ、王家主催でっ開催されておおおりました舞踏会にてっ、

 婚約者であるブルゴン公ソフィ嬢に対して言い放ったとのっことで御座いましゅっ」


 侍従長が荒い息の下から懸命に答える。

 取るものも取りあえず、駆けに駆けて来たのだ。


「な、なんという事だ……まさかあのフィリップが……」


 王は、がっくりと座り込んだ。

 一気に10年ばかり老け込んだようだった。

 在位40年の歳月が見事な銀に変えた髪や髭までが情けなく垂れている。


 フィリップは御年23になる王太子である。

 幼き頃から学問に優れ、武芸の鍛錬も怠りなく、麒麟児の呼び声も高い王子であった。

 20を越えてからは、幾つもの政務を任されて後継者として不足なきことを示してきた。


 それがこの愚行。王にとっては青天の霹靂である、



「何故だ!? 何故なのだ!? 何が不満だったというのだ……」


 ようやく息を落ち着かせた侍従長が答える。


「真実の愛が、現れたそうで御座います」


 王は、カッと目を見開いた。その目は血走っている。


「真実のっ愛だとっ!? 馬鹿な!」


 その瞬間、王の目に冷たいものがきらめく。


「相手の女はカンパニョーラ侯の娘フランソワーズだな。蛇めがやりおる……」


 カンパニョーラ侯は野心家で、かつて娘を王太子妃の座に据えようと画策していたのだ。

 何らかの手段でフィリップを手懐けたに違いない、と王は考えたが。


「いえ、ズェルマなる女との間に見つけたそうで」


「何者だ!? 大貴族にそのような名の娘はいないぞ」


「カロー商会の会頭の娘だそうで」



 カロー商会は、王都で一二を争う大商人だ。


 王の失望はさらに濃くなるばかりだった。


「話にならぬわ……フィリップ一体お前は何を考えておるのだ……かの商会から多額の借財でもしておったのか……」


 侍従長は恐る恐る告げた。


「会場で目撃した者の話では、小柄で凛とした黒髪美人であったそうです」


「美醜など問題ではないのだ!」



 婚約者であるソフィ嬢は不美人ではないが、美人とは言えなかった。

 だが才女で努力家であった。

 妃教育も順調で、今すぐ王妃となっても問題なくこなせる段階だった。

 美貌はそうそう長く保たないが、聡明さは長く保つ。


 フランデルの王妃として必要不可欠なのは、緊急の場合は摂政を務められる能力なのだ。

 その点でソフィ嬢は、大貴族出身だけあって貴族の立場も王家の立場も判っている得難い人材だった。

 大貴族の娘達の中で、間違いなく一番の人材だ。

 王は、彼女の能力に満足し、大切にしていたのだ。



 大切にしていたのは才女だからだけではない。

 王家とブルゴン公家の同盟の象徴でもあるからだ。

 ブルゴン公は王家の血を引く名門にして最大の貴族であった。宰相や大臣を何十人も輩出している。


 だが最近、その地位を脅かすものが現れていた。


 領地経営の成功で一気に力を伸ばしてきたカンパニョーラ侯だ。

 カンパニョーラ侯は、自分の娘フランソワーズを王太子妃の座へつけることを望んだ。

 それに対して、彼の勢力拡大を望まない王家とブルゴン公家は手を組んだのだ。


「フィリップを呼べ! 今すぐここに!」


 雷に打たれたように侍従長が動きかけた時、執務室の扉が開け放たれた。


「父上。重大な報告に参りました」


 長身の優雅な青年が現れた。フィリップ王子だった。


 その瞳には隠しきれない昂揚と、知性の光が同居していた。


 恋に狂った愚かな男の目ではない。






誤字脱字、稚拙な文章ではございますがお読み頂ければ幸いでございます。




宜しくお願い致します

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