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紳士?

「お前たち、女性を困らせるのは良くないぞ」

声の方を見れば、つい先ほどまで令嬢方に囲まれていたはずの金髪がかったオレンジ色の髪の少年が立っていた。隣には、やはり囲まれていたはずの赤髪の少年がいる。


「!」

ボコボコにしたうちの二人だ。顔つきは幼いが、間違いない。あの時の二人だ。


「初めて参加した令嬢を怖がらせてはいけない。一度、皆で席を離れるんだ」

王子の一言で、席に集まっていた令息たちが渋々だが、自分たちの席へと戻って行ってくれた。


「大丈夫か?」

「はい、ありがとうございます。おかげで助かりました」

礼を言えば、少しばかり顔を赤らめたオレンジ色の少年。


「気にするな。これからは、困ったら私に言えばいい」

さも当然のように自分を頼れと言う。どうやら私の事は覚えていないようだ。

「私はラウリス・バルティス。第二王子だ」


隣にいた少年も自己紹介をする。

「俺はオレステ。オレステ・ロダートだ。よろしく」


「アレクサンドラ・ヴィストリアーノです。よろしくお願い致します」

令嬢らしく慎ましやかに挨拶をする。再び第二王子が顔を赤らめた。隣ではチタとチアが笑いを堪えている。


「良かったら、このままこの席に座ってもいいだろうか?」

「はい、どうぞ」

王子に言われては断れない。了承すれば、ちゃっかり赤髪も座った。囲まれていた時よりも面倒な気がして、二人に気付かれないように小さく溜息を吐いた。


チタとチアはこの状況が楽しいらしい。好奇の視線を送って来ている事が痛いほど伝わってくる。視線はそれだけではない。たくさんの嫉妬や悲哀、羨望の視線が私に刺さっている。先ほどまで二人を囲っていた令嬢方のものなのだろう。


「ヴィストリアーノ嬢は、王城での茶会は初めてだな?」

「はい、そうです」

「今まで参加しなかったのには何か理由でもあるのか?」

「私にはわかりません。今回、初めて招待状を渡されましたので」

多分、お父様が内々で処理してくれていたのだろう。本当の理由は絶対に言わないけれど。


「そうか……これからはもっと参加するといい。人脈作りには王城の茶会が一番だからな」

「そうですね」


また殴ってやりたくなる男だったらどうしようかと思っていたが、驚くほどまともな小さな紳士だった。あの人間性は魅了のなせる技だったのだろうか。


王子がチタとチアに目を向けた。

「相変わらず二人はよく似ているな」


「そうでしょうか?」

きっといつも言われているのだろう。笑顔で答えているチアの目が一切笑っていない。


「殿下には同じに見えるのか?俺は全く似てない様に思うけれどな」

そう答えて首を傾げたのは赤髪だった。


「え?」

チアが驚いた顔で彼を見た。

「だって瞳の色が全然違うし、雰囲気も全然違う。フェリチア嬢の方が怒らせたら怖い気がする」

言い方はアレだが、なかなか的確だ。


「ふふ、ロダート様は見る目があるのね」

チアが本当の笑顔になった。

「え?そうか?」

「ええ。アリーとアリーのお兄様以外ではあなたが初めてよ。私たちをしっかり区別してくれたのは」

チタも笑顔になっている。


「久々だわ。やっぱり嬉しいものね」

チタが嬉しそうに笑った。真正面でチタの笑顔を見た赤髪が真っ赤になる。

「ふふ、アリーよりチタの方が先かしらね」

チアが意味深に笑った。


「僕も二人の区別はつきますよ」

またもや背後から声が掛かる。後ろを振り返れば、黒髪の少年が立っていた。私が顎を蹴り上げてやった男だった。彼の背後にはたくさんの令嬢がいる。どうやら彼も、囲まれていた内の一人らしい。


「へえ、ロザーリオもわかるのか?」

赤髪が「仲間だな」とニッコリ笑った。


「殿下はわからないそうですね」

馬鹿にする風でもなく不思議そうに殿下を見る。


「し、仕方がないだろう、本当に二人はよく似ているんだから」

少し焦ったように早口で話す殿下。

「そうなのですか?見る人によって印象が違って見えるという事なのでしょうか。僕にはフェリチタ嬢は可愛らしく、フェリチア嬢は美しく見えます」


真っ直ぐに二人を見て言う黒髪の少年。凄いストレートに誉めた。そして私を見て、一瞬目を見開いた。


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