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戦場でした

「そうだよ」

お兄様が私を手招きした。お父様に下ろしてもらい、今度はお兄様の膝の上に座る。

「国王、王族に気に入られるって事は、アリーの場合だとお嫁さんにさせられてしまうって事になるね」


「およめさん」

「そうそう。年齢的に言って、第二王子の婚約者とかにされちゃうかな」

「第二王子……」

それってあのクソ王子じゃない?


「僕としては第一王子の方がおススメだけれどね。彼には既に何人も婚約者候補がいるから、なかなか難しいだろうなぁ。歳も離れているしね」

第一王子は知らないな。


でもあのクソ王子の嫁にだけはなりたくない。それではまた、今までのアレクサンドラと同じ運命を辿ってしまうかもしれない。まあ、それならそれで、めっためたにしてやるだけだけれど。でもやっぱり嫌だ。少しも好きになれない男なんて。


「アリーはおよめに行かないよ」

「え?」

「ずっとおとうさまと、おかあさまの子どもでいるの。おにいさまもアリーがいた方が、さびしくないでしょ」

私の答えに皆が笑った。


「そっかあ、アリーはずっとこの家にいるって事だね。いいね。そしたらずっと一緒にいられるね」

笑いながらお兄様が私の頬にキスをした。だから私もお兄様の頬にキスを返した。




 あれから3年の月日が流れた。


8歳になって初めて、茶会に参加をする事になった私。公爵家という立場上、我が家でも茶会は何度か開かれていた。


だが、私は魔法を完全に扱えるようになるまでは、公の場に姿を現さないようにしていたのだ。隠蔽を完璧に出来るようにならなければ、いつ、どこで私の力がバレるかわからない。幼い私にとって、余りある魔力を制御する事は、なかなか難しい事だった。


3年かけて、魔力を制する事が出来るようになり、晴れて公の場へと参上したのだ。だから知らなかったのだ。ここは、茶会という名の戦場だという事を。


 お母様が「今回ばかりは断れなかったの」と悲痛な面持ちで私に渡してきた招待状。あれが今のこの状況を作り出した元凶だ。道理で、メリーが心配そうに見送った訳だ。


「まさか、集団お見合いだったとは」

王城から来た招待状。それがこの茶会という名の集団お見合い、いや戦場だ。上位の同年代の貴族令息令嬢を集めて開かれた茶会。バカみたいに騒いだり、紳士ぶって気取っていたり、令息たちはこの場を素直に楽しんでいるようだ。


しかし、精神年齢は令息たちよりも遥かに高いであろう令嬢たちは、目の色を変えていい物件を探している。


人気が恐ろしいほど集中しているのは4人。残念ながら、私が来た時には既にこの状態になっており、中心にいるであろう令息の姿は見えない。その4人の周辺には色とりどりのドレスが揺れている。


「怖い」

女というのはどの世界でも怖いのだと実感していると「本当にね」と言いながら私の隣に腰掛けた少女。幼い頃からの友人、フェリチタ・カンプラーニ侯爵令嬢だった。持っている皿の上には、こぼれ落ちるほどのスイーツが載っている。


「チタ、それ一人で食べるつもり?」

「そんなわけないでしょう。アリーの分も載っているの」

「ああ、そうよね。ありがとう」

ミルクティー色の髪をハーフアップにし、アップにしている髪の結び目を右に寄せて小さなお団子にしている。


「あら?被っちゃった」

反対の隣に座りながら、これまた大量にスイーツを載せた皿をテーブルに置いたこちらは、フェリチア・カンプラーニ侯爵令嬢。同じくミルクティー色の髪をハーフアップにし、アップにしている髪の結び目は左に寄せて小さなお団子。


「流石双子。考える事は一緒ね。しかも持って来ているスイーツも大分被っているわね。ふふ、たくさん食べられるわ、ありがとう」

私は笑いながらも、持ってきてくれた二人に礼を言う。


三人でお茶をコクリと飲み、早速スイーツに手をつける。


「そう言えば本当ねって何が本当なの?」

「ああ、それはね。茶会に参加している令嬢方の殺気立った熱意が怖いって私が言ったの」

視線だけで4つほどある、密集地帯を交互に見る。


「なるほどね。ま、王城の茶会なんていつもこんなものよ」

何度か出席している二人にとっては、通常通りらしい。

「チタとチアは、誰かいいなって思う人はいないの?」

二人に質問すると、同じタイミングで笑った。


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