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やってみれば?

 自分ではない自分を思い、泣きながら叫ぶ。

「あなたは……それを知っていて尚、自分のくだらない目的のために、何度もアレクサンドラを殺したのよ!!」

「アリー!」

「アリー!」

「お嬢様!」

エンベルト殿下に背後から抱きしめられた。お兄様も、メリーも泣いていた。それでも私は話す事を止めない。


「神様に言われたの。アレクサンドラの心が完全に壊れてしまえば、輪廻の輪に乗れなくなってしまうって。輪廻の輪に乗れない魂がどうなるか、あなたは知っているかしら?

輪廻の輪に乗れない魂は、消滅してしまうのですって。わかる?それほどアレクサンドラの心は危ない状態だったの。何も悪い事などしていない彼女がそんな事になるなんて……私は許せなかった」


「だからね。5回目のあの場で、私はアレクサンドラの代わりに皆をぶっ飛ばしたの。本当はもっとボコボコにやってしまいたかったけれど、神様に止められてしまった。それにね、その時にアレクサンドラの笑い声が聞こえたのよ。そしてありがとうって言ってくれたの。あれだけしかしてないのに。アレクサンドラは本当に優しい子だったのね。今は、全く違う人生を満喫していると聞いて本当に良かったって思ったわ」


お兄様とメリーが更に泣いた。


「私はね、アレクサンドラの声を聞いて許す事にしたのよ。そもそも、男性たちは魅了のせいでおかしくなっていた訳だし。あなたの事すら許したわ。もう馬鹿な事をしなければいいと思っていた」

再び怒りが湧き上がる。


「けれど、あなたは全くダメだった。まあ、それでも。想像していたような事態にはならなかったのが幸いして、そこまで怒りは湧かなかったわ。だけどね。途中から再び怒りが湧いて来たの。私を氷の中に沈めようとした時辺りからね」


セレート嬢を睨みつける。


「魅了で思う通りに動かした、実行犯である伯爵令息を。あなたの悪行を止めようとした取り巻きの子を。あなたは当たり前のように切り捨てた。どうせ死んでも困らないただの駒だとでも思ったんでしょ?それでも上手く行かなくて、私の命を直接奪おうとした」

ふと、頭の中で閃いた事を口にする。


「以前、あなたから悪役令嬢を知っているか?って聞かれたけれど……悪役令嬢ってもしかしてあなた?」

セレート嬢の顔が、怒りで真っ赤になった。

「はあ!?ふざけんじゃないわよ!私はヒロインだって言っているでしょ!!悪役令嬢はあんたよ!」


「ふふふ、なんだ。てっきりあなたが悪役令嬢なのかと思っちゃった。やっている事が正に悪役なんだもの」

「何ですって!?」

私の言葉にキレまくっているセレート嬢に、冷ややかな視線を送る。


「ねえ、どうして自分の力で恋愛をしないの?それだけの容姿を持っているなら、自分の力だけでなんとか出来たでしょうに。

ねえ、わかってる?伯爵令息もそこの取り巻きの子も、アレクサンドラも。あなたのくっだらない恋愛ごっこのためにいるんじゃないのよ。自分で本気の恋愛が出来ないような人間のなり損ないは、もう一度、初めからやり直した方がいいんじゃない?大丈夫。あなたがいなくなっても、この世界は崩壊なんてしないから」


笑顔で言ってやる。今の私は本当に魔王の気分だ。


「う、うるさい!これは私の世界なの。ゲームなのよ。他の誰が死んだって困らないに決まってるじゃない。最悪、何かあったらリセットすればいいんだから!」


バシーンという音と共に、セレート嬢の身体がゴロゴロ転がった。勿論、私が殴ったから。しかも裏拳で。

「ふふふ、じゃあリセットかけてみなさいよ」

「痛いわね!やってやるわよ!!私の世界だって証明してやるわ。リセットよ!もう一度初めからやり直すわ。リセットしなさい!」


教室中に、彼女の叫び声が響いた。


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