加護を頂きました
「こどもって、頭がおもいのね」
『そうね。でもお陰で私の声がまた届くようになったわ』
「もしかして、わたしは神さまをわすれていた?」
『そうね。でも無事に話せるようになった。と言ってもこれで終わりになるけれどね』
「どうして?」
せっかくまた神様と話が出来るようになったのに。
『もうあなたはアレクサンドラ・ヴィストリアーノという人生が始まっているわ。私の所に来ることはないはずよ。だから、ここで私の干渉はおしまい』
「……寂しいけれど、しかたないのね」
『会話は出来ないけれど、時々は上から様子を見るわ』
「ふふ、ありがとう」
『あとね、あなたには私の加護を付けたの。だから魔力が今までよりも更に上乗せ。全属性が使えるわ』
「そうなの?うれしい」
『ふふ、私もあなたとの時間は楽しかった。話せなくても見守っているから、アレクサンドラとして楽しんで』
「わかった。ありがとう、神さま」
着替えを済ませ、メリーに手を引かれて階段を下りる。食堂へ入るとお母様がもう席に着いていた。私も席に着くと早速、料理が運ばれてきた。
「……」
お母様の前にはチキンのグリル、私の前にはササミ入りのお粥。
「わたし、もう元気よ」
「うふふ、そうね。でも一応ね。明日の朝は豪華にしましょう」
「……わかった」
食事が終わり、居間に移動する。私はしっかりとお母様の膝の上に乗った。
「あら?今日は甘えん坊さんね」
「うふふ」
「ふふ」
二人で微笑み合っていると、扉が不意に開いた。
「あれ?アリーが甘えん坊になってる」
入って来たのはお兄様とお父様だった。お父様は真っ直ぐこちらに近づくと、私をひょいと持ち上げる。
「アリー、馬から落ちたって?」
「えへへ」
「大きいコブだな。それ以外はどこも痛くはないか?」
私の後頭部にそっと触れたお父様。
「うん」
ニカッと笑ってみせると、優しい笑顔で微笑まれた。
アイスブルーの髪に、紫色の瞳をした美丈夫に微笑まれるとなかなか壮観だ。王城で国王様の側近をしているお父様は、今でも秋波を送られるほど女性からの人気が高い。
因みに私は、お母様の金の髪とお父様の紫の瞳を受け継いでいる。
「あれ?」
お兄様が首を傾げる。
「どうした?」
「少し待って」
そう言ったお兄様は、私をジッと見つめ「鑑定」と小さく呟いた。
「魔力が上がっている」
「どういう事だ?」
お父様が訝し気な表情になる。
「アリーの魔力が格段に跳ね上がっているんだ……え?神の加護?全属性?」
お兄様の発する言葉を聞く度に、お父様の顔が険しくなる。
「アリーは、自分が変わった感じはするか?」
私を抱いたままのお父様が問いかけてくる。加護を知られたのなら素直に言うしかないだろう。
「あのね、神さまとお話ししたのよ。たすけてくれたの」
嘘ではない。本当でもないけれど。
「それは……凄いな」
私を膝に乗せてソファに座る。
「アリーは神様と話をしたのだな」
「うん」
「私たちの娘は、神に愛されたお陰で助かったのね。本当に良かった」
お母様が胸の前で手を組み、その場で祈りを捧げた。でもお父様は複雑な表情をしている。お兄様も困ったように笑っていた。
「アリーの命が助かった事は喜ばしい限りだが、全属性か……アリー、魔法は使えるか?」
「?」
「父上、アリーはまだ5歳だよ。これから習うのだから無理だよ」
そっか。ちゃんと使い方を教わらないといけないんだ。納得しているとお父様が意を決した表情になった。
「アリーにはすぐにでも魔法の練習をさせよう。隠蔽を取得させなければ、全属性だとバレてしまう。しかも神の加護がついているなんて、国王にこの事が知られでもしたらマズイ。気に入られてしまう」
「王さまに?」
そんなに大事なの?