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いい気分だったのに

「もしもし、ラウリス君や」

「なんだ?」

「いつの間にジュリエッタ殿下とそういう事になったのさ」

授業中、先生が資料を取りに行って留守になったので、少しばかり揶揄ってやろうと思ったのだ。


カリカリと、ノートを取っていたラウリスのペン先がボキリと音を立てて折れた。

「な、な、な」

真っ赤になって「な」しか言わない男にニヤリと笑う。


「動揺しているねえ」

「う、うるさい」

「うんうん、それで?何て言ったのさ」

「ダンスをしながら……って、言うか、アホ」

今、言いそうになったよね。


「照れるな、照れるな。私は嬉しいのよ。大好きな二人が恋人同士になってくれて。勿論、将来は結婚するのよね。そしたらジュリエッタ殿下と離れ離れにならなくて済むのよね」

留学が終わったらバイバイは辛いもの。


「ああ、そのつもりだ。今度の長期休暇で、あちらの国に挨拶に行く」

男らしい一面に、なんだか嬉しくなった。思わず頭をワシャワシャと撫でてやる。


これでもう、全ての憂いはなくなった。私もエンベルト殿下を好きになって、ラウリスもジュリエッタ殿下を好きになって。前のようにはならないと確信を持つことが出来た。


「ふふ、皆で一緒に幸せになろうね」

素直な気持ちで言えば、ラウリスが笑って「そうだな」と答えた。

もうすぐ1年が終わる。私の心の中は晴れやかだった。




「私の晴れやかな心を返して欲しい」

3階の一番奥にある、大きなテラスに呼び出されてしまった。この辺りは、老朽化が進んでいる為、無闇に入る事を禁じられている場所だ。


「わざわざ騙してまで私をここへ連れて来たのは何故なのかしら?」

目の前に立っているセレート嬢と二人の令嬢。私はこの二人のうちの一人にまんまと騙されてしまった。


「ふふふ、動物が危ない目に遭っていると言えば、絶対に付いてくるって思ったわ」

勝ち誇ったように笑う令嬢に少しだけムカッとする。それにしても……セレート嬢の取り巻きはもっと人数がいなかっただろうか。


「随分と人数が少ないようだけれど?喧嘩でもしたの?」

すると、セレート嬢は泣き出した。

「酷いわ。アレクサンドラ様のせいだと言うのに」

「え?私の?一体どういう事?私、特に何かした覚えはないのだけれど」

本当に思い当たる事はない。


首を傾げていると、もう一人の令嬢が怒り出した。

「何言っているのよ!あなたが変なキラキラの物をバラまいたせいじゃない!」

「変なキラキラ?」

以前の魔法学の時の事だろうか?でもそれが何だというのだ。


「他の皆さんは、あのキラキラを浴びてから私の傍には来て下さらなくなったのです。だからアレクサンドラ様のせいですわ」

「どうしてあれのせいだってわかるの?」

それ以外の何かかもしれないのに。


「私の聖魔法を打ち破る事が出来るのなんて、闇の魔法しかないじゃありませんか」

「いや、だから私、闇の力とか持ってないから。考えてもみて。闇の力がキラキラする訳ないじゃない」

「あら?そう言えば……」

一人の令嬢が納得しかけたが、もう一人の令嬢に脇を小突かれてしまう。


「そうやって、また私のお友達をなくそうとしているのですね」

セレート嬢が泣く仕草をするけれど、なんとなく涙は出ていない気がする。


「考えたのです。あなたの闇に対抗するにはどうしたらいいのかと」

手で顔を覆いながらも話を続けるセレート嬢。もう私は、闇の力を持っているという前提になっている。

「ずっと、この方法でやって来たので今回も、同じ方法でやっていましたけれど」

そう言って顔を上げた彼女は、やはり泣いてはいなかった。それどころか、ニタアと笑った彼女の顔は、完全にホラーだった。


「やはり、隠れキャラのルートですと、通常の通りには行かないのだとわかったのです。ですから、やり方を変える事にしました」

隠れキャラって、メリーが言っていた?


「ずっと、あなたを孤立させる事ばかり考えていました。でも今回は上手く行かなかった。だから今回は違うんだって思ったのです」

セレート嬢が、ずいっと私に近付いた。


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