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嫉妬

 ダンスの授業。今日は、男子生徒も合同で実際にペアを組んで踊るらしい。皆はとっととペアを組んだ。

「私、ハブだわ」

ショックを受けていると、何人かの男子生徒が私の前にやって来る。


「ヴィストリアーノ嬢、良かったらお相手願えませんか」

来ました。ハブからのモテ。いきなり来たより取り見取りという現状に、感極まっていると後ろからニュっと何かが伸びて来た。

『これ、何かしら?』

伸びて来たのは誰かの腕だった。腕はそのまま私の腰に巻きつく。


「皆さん、申し訳ありませんがここは私に譲って頂けませんか?」

私の右手を取り、左手はしっかり腰に回っている。あっという間に男子生徒たちは霧散した。


「私のモテ期が」

「モテキってなんでしょうか?」

ニッコリと微笑んでいるが、目が笑っていないエンベルト殿下。

「いえ……なんでもございませんわ」

「そうですか?なんとなく不快な気持ちになったのは気のせいでしょうか?」

「オホホ、気のせいですわよ」


動揺を隠せずおかしな言葉遣いになる。ペアが全て完成したのか、音楽が鳴り出した。

「ねえ、アリー」

順調に踊っていると、殿下が真剣な顔で話しかけてくる。


「先程わかった事がありまして。今まで私自身も、知らなかった事なのですが」

「うん?」

「私はどうやら、相当嫉妬深いらしいです」

「へ?」


「ラウリスたちはアリーの友人だとわかっていたから、なんとか我慢出来ていましたが、他の男性はダメみたいですね。先程のように、アリーをダンスに誘っている姿だけでも許せない」

にこやかに話しているけれど、内容が黒い。


「アリー、申し訳ありません。あなたを誰にも触れさせたくありません」

ボフンッ!よくよく聞けば、ストーカーにでも発展しそうな内容なのに、顔どころか殿下に触れられている全てが爆発したように熱い。

「い、い、今言う事?」

「今言わないでいつ言うのです?」

「うっ」


腰に回されている腕に力を込められた。必然的に殿下との距離が狭まる。気付けば殿下の顔が私の耳元にある。

「アリー、逃げたくなったとしても、逃がしてあげられませんから」

囁くように言われ、全身がゾクゾクした。心臓の音がさっきからドクドクとうるさい。それでも私はグッと堪える。


「ルト、わ、私だって、ルトが離れてって言っても離れてなんかあげないから」

睨むように殿下を見れば、頬を染めた殿下の顔があった。

「アリー、言うようになりましたね。今すぐキスしていいですか?」

「ダメだから!」


曲が終わり、フラフラになりながら皆の所に戻る。

「アリーどうした?頭から湯気が立っているぞ」

戻った途端、ラウリスに言われてしまった。

「あなたの兄上にやられたのよ」


「へえ、お熱いです事」

チアがいつものニヤニヤ顔になる。

「おかげさまで」

そう言ってやれば、一瞬キョトンとした顔になったチアが笑った。


「あはは、言うようになったわね、アリー」

何がそんなに楽しいのか聞きたくなるくらい笑っている。

「殿下よりマシだもの」

「ふふふ……アリーが幸せだと私も幸せよ」

「……それは私も一緒よ」

顔を見合わせて二人で笑った。




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


今日のダンスの授業は、ペアになって本番のように踊るのだという事は知っていた。勿論、私はアリーと踊るつもりだった。

ダンスの先生からペアを組むようにと言われた瞬間、ラウリスはジュリエッタ王女を誘っていた。ジュリエッタ王女も、嬉しそうに頬を染めていたし、嬉しい報告が聞けるのはそう遠くない事のようだ。


光栄な事に、たくさんの視線をいただいている。私にダンスに誘って欲しいと目で訴えている令嬢たちだ。そんな中、ひと際強い視線でこちらを見ているセレート嬢。照れるような仕草で私を見ているが、先程から耳がチリチリと熱い。


私はアリー以外と踊るつもりはない。公式の場ではない場でくらい、好きな人とだけ踊りたい。ゆっくりとアリーの元へ向かう。途中でセレート嬢の傍を通る。彼女は何かを確信したように、私を見て笑顔を作った。勿論、その笑顔を目に入れずに素通りする。


アリーを見れば、何人もの男たちに手を差し出されているではないか。その光景を見た瞬間、余裕は消え何もかもがすっ飛んだ。私は慌ててアリーの元へと向かった。


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