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介抱される

 後ろに立っていたのは、優しい笑みを浮かべたエンベルト殿下だった。

「皆、楽しそうで何よりですが、そちらの腰を抜かしてしまったレディを介抱させて頂いても?」


「そうだね。腰を抜かしたアリーは、なかなか見られなくて面白いけれど」

ロザーリオが立ち上がって、スペースを空ける。なかなか失礼な事を言った気がするけれど、気のせい?


「ふふ、エンベルト殿下にたっぷり介抱されなさい」

チアがニヤニヤ顔になった。

「お言葉に甘えて、たっぷり介抱させてもらいますね」

殿下も何やら悪い笑みを浮かべる。


「え?え?アリーは大丈夫なの?」

ジュリエッタ殿下が、エンベルト殿下の悪い顔を見てソワソワしている。もうホント、可愛すぎる。そんなジュリエッタ殿下の肩に手を置いたのはラウリスだった。

「大丈夫だ。アリー的には大丈夫じゃないかもしれないが、別に痛い事をされるわけではないから。どちらかというと、甘過ぎて砂糖を吐く事になるだけだ」


「砂糖を?」

ジュリエッタ殿下が首を傾げる。それ、真正面から見たかった。絶対に死ねるほど可愛かったに違いない。役得のラウリスを睨みつけると……耳が赤かった。


「さて、保健室へ行きましょうね」

そう言ったエンベルト殿下は、軽々と私を抱き上げた。勿論、周囲からは悲鳴の嵐状態だ。


「ちょ、マジで。恥ずかしい」

「ですが、歩けないのでしょう。こうするしかありませんよね」

余裕の顔がなんだかムカつく。その顔を崩してやりたい。突発的にそう思った私は行動を起こす。


「ルト。ありがと」

腕をエンベルト殿下の首に巻き付け、耳元で囁くように言ってやる。一体どんな顔をするだろうと、殿下の顔を見上げれば……真っ赤になっていた。


「アリー、そういう不意打ちはダメです。理性が焼き切れてしまう」

そう言われた私も顔が爆発してしまった。


「ふふふ。ホント、アリーを前にしているエンベルト殿下って面白いわ」

チアが笑っている声が、微かに聞こえた。



 保健室に到着すると、ベッドにそっと座らされた。そしてそのまま抱きしめられる。

「アリー、君のお陰で最悪の事態は免れた。ありがとう」

私も、腕を殿下の背中に回す。途端に殿下の抱きしめる力が強くなった。


暫く静かに抱き合っていたが、殿下が私のこめかみにキスを落としてから変わった。こめかみから始まって、頬やおでこ、眉間に瞼に鼻の頭。顔のありとあらゆる場所にキスの雨を降らす。私はされるがまま、心臓が壊れないかと心配しているだけだった。


最後に口のすぐ横にキスをされる。ドッキンと心臓が大きく動いた。

「ふふ、可愛い」

私の心臓の鼓動が激し過ぎて、死にそうになっている顔を見て殿下が笑う。


「ホント、私、死にそう。心臓が」

途切れ途切れに言葉を発する私の頬を、殿下の手が優しく触れた。

「深呼吸してください」

言われるままに、大きく息を吸い込み大きく吐いた。何度か繰り返して少し落ち着きを取り戻す。


「どうです?楽になりましたか?」

「うん、なった」

笑顔で言えば、殿下の手が再び私の頬に触れた。


「ダメですね……」

頬を何度もさすりながら殿下が呟く。

「何がダメなの?」

「……私の何かが振り切れました」

「何が?」

聞いた途端、両頬を手で覆われ口を柔らかいもので塞がれてしまう。


「!」

食むように塞がれた口が、チュッというリップ音と共に解放された。

「これ以上深くしてしまうと、更に他の何かが振り切れてしまいそうなので止めておきましょう。とっても残念ですが」


やけに耳に残ったリップ音に翻弄されている私に、熱の籠った殿下の妖艶な笑みは、とても耐えられなかった。そのまま、私の意識は空を飛ぶように消えた。




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 最北の地。大きな火山から連なる山々。何かを感じたのだろうか。大きな影がゆっくりと動いた。影はとある方向を向き、何かを感じ取るように首を伸ばした。


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