表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

52/73

実践

「そろそろよろしいですか?皆さん、これから一人ずつ披露していただきます」


最初はラウリスだった。炎のドラゴンを作り、風でまるで本当に飛んでいるかのように見せた。次はオレステで、水の槍を上からたくさん降らせ、土の槍で相殺させて見せた。ロザーリオは土の塔を作り、風で見事に切り刻んだ。


「皆、凄い」

「小さい頃からアリーと一緒に訓練したお陰だよ」

ロザーリオが笑った。オレステも一緒に笑う。


「確かに、あの頃は全くアリーに勝てなかった事が悔しくて、密かに練習した」

ラウリスだ。負けず嫌いなのは大きくなっても健在のようだ。


チタは氷でウサギを作り、土でケージを作った。チアは解けない白い雪を降らせ、土で出来た木に纏わせ雪の花の木を作った。ジュリエッタ殿下は水の蝶を舞わせ、風で天高くまで飛ばした。


皆、それぞれにとても素敵で、見惚れてしまった。

『私も負けていられないわね』


氷と雪を混ぜて、真っ白い馬を作る。次に炎で真っ赤な馬を作る。エンベルト殿下のエメラルドの瞳がキラキラしたのが見えた。2頭が揃ってエンベルト殿下の方へ走る。殿下の周りを2度程回り、雷を纏った翼を広げた2頭はそのまま天へと駆けて行った。


「なんて素晴らしいのでしょう」

エンベルト殿下と並んで見ていた、魔法学の先生が手が痛くなるのでは?と思いたくなるほどの拍手をしている。


「本当ですね。感動して身体が震えてしまいました」

エンベルト殿下も惜しみない拍手をくれる。


クラスの皆も拍手をくれたり、感動を言葉にしてくれた。その後に続いた生徒たちも、私たちの魔法をヒントに様々なものを披露した。


 最後はセレート嬢だ。

「私の魔法は聖魔法のみ。特に何かを見せるという事が出来ません。なので、目には見えませんが肌で感じて頂こうと思います」

そう言ったセレート嬢が、大きな魔力を放出するのが私の目にくっきりと見えた。エンベルト殿下も見えたのだろう。大きく目を見開いて、ピアスの着いている耳を手で触れた。


「熱いっ!!」

隣にいたジュリエッタ殿下が、悲鳴に近い声を上げた。他の皆も苦しそうな顔になる。


「皆!?」

ジュリエッタ殿下の胸元から煙が上がったのが見えた。着けている宝石が大きいせいで強大な魔力を受け、焼きごてのように肌を焼いているのだとわかる。このままでは、消えない傷が出来てしまう。


「ダメ!ダメダメ!そんなの絶対ダメーーー!!」

私の叫びと共に、自分からセレート嬢を上回る魔力が放出されて行くのがわかった。近くを飛んでいたのだろうか。ハヤブサが数羽、まるで私の魔力をまんべんなく行き渡らせるかのように、私たちの周りを素早く旋回する。


ハヤブサが行き渡らせた魔力は、キラキラした光となって皆の元へと舞い降りた。ジュリエッタ殿下たちは、突然痛みから解放された事で驚いた表情をしながら、自分たちの耳や指や胸元に触れている。他のクラスメイトも、不思議なキラキラを見て楽しんですらいた。


「皆!熱いのは!?」

私の切羽詰まった声を聞いたジュリエッタ殿下は、優しい笑みを浮かべた。

「アリーのお陰で大丈夫。痛みどころか何もないわ」

「胸元は!?」

「全然。何もなってないわ」


「皆も!?」

ラウリスたちがニコニコしながら頷く。

「……よ、良かったぁ」

大きく息を吐き安堵すると、途端に膝から力が抜けた。


まるで操り人形の、糸が切れたようにストンと座り込んでしまう。

「アリー、大丈夫?」

チタが、かがんで私の顔を覗き込む。

「うん、大丈夫。安心したら力が抜けちゃったみたい」


ラウリスまで私の横でしゃがみ込んだ。

「アリーが魔力を放出したのが、肌で感じられたよ。助かった。ありがとう」

そう言って私の頭を撫でたラウリスを、マジマジと見てしまう。すぐ隣で見ていたチタもキョトンとしている。


「ラウリス、もしかして魔法にかかっちゃってる?」

チタが聞くと「はあ?」という顔をするラウリス。

「なんでだ?」

「だって、アリーに憎まれ口も叩かず素直にお礼なんて……」

「チタ、おまえ失礼だな」


うん、きっと皆がそう思ったはず。気付けば、チアたちも目線を合わせようと、皆で私の周りでしゃがみ込んでいた。これってコンビニの前で、よく座り込んでる柄のよろしくない子たちみたい。


そんな事を思っていると、後ろから声がした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ