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忠告したのに

 馬術の授業。

「意外と選択している人が多いのね」

馬術は希望者のみの科目になっている。受けない人は魔法学の補習授業をするらしい。


「本気で馬術をやりたいと思っている令嬢は、私たち以外いない気がするけれどね」

チタとチア、ジュリエッタ殿下と私以外の令嬢方は、普通に制服を着ている。本気でやるつもりはないという事だ。私たちは勿論、しっかりと乗馬服を着ている。


「残念だわ。馬で駆け抜ける楽しさを知らないなんて」

「そうよね。あの爽快感は知ってしまったら病みつきになるわよね」

チタも賛同する。チタも馬に乗る事が好きなのだ。


「私たちはほどほどにしておきましょうね」

チアとジュリエッタ殿下は微笑み合った。


 時間になったようで、先生が数頭の馬を連れてやって来た。

「あ!」

エンベルト殿下が魔馬に乗ってやって来た。以前にも乗っていた、真っ白な身体に真っ赤な鬣の魔馬だ。並ぶように歩いてくるのは、私が幼い頃に捕まえた真っ赤な身体に金色の鬣の魔馬だった。すっかり大人しくなって、やはり美しかった。


「今日は馬と触れ合う事がメインです。ですが、この2頭は無闇に触れようとしてはいけませんよ。初めて見ると言う人もいるでしょう。この2頭は魔馬です。普通の馬とは比べ物にならない程速く走ります。だからこそ乗り手も相応の訓練が必要になるのです。振り落とされたり、下手をすると呼吸困難になってしまう事もあるからです。今日は普通の馬との違いを見てもらうために連れて来ました。もう一度言いますよ。無闇に触れようとしないでください」


エンベルト殿下が話している間も、私はうずうずしてしまう。気のせいでなければ、魔馬もこちらを見ている。


「では、馬の方はあちらで、魔馬は私が質問等を受け付けます」

殿下の言葉で一斉に皆が動いた。私も魔馬の方へと向かおうと足を踏み出した時、セレート嬢たちの会話が聞こえて来た。


「デルフィーナ様なら、魔馬でもすぐに打ち解けてしまいそうね」

「そうよね。聖女様は動物にも愛されるって言いますもの。きっとすぐに仲良くなれるんじゃないかしら?」

グループ内でセレート嬢を誉めそやしている。


「私はまだ聖女ではないのですから、そんなに大事にはなさらないで」

困っている風を装っているが、その顔はニコニコだ。

「何をおっしゃっているのですか。聖魔法はデルフィーナ様しか使えないのですから、聖女様になるに決まっているじゃないですか」


うすら寒い会話を続けている彼女たちを無視して、今度こそ魔馬の方へと向かおうとする。が、セレート嬢の一言で再び足が止まってしまった。


「では、少しだけ魔馬に近づいてみようかしら?」


「え?」

思わず声が出てしまう。


「何か?ヴィストリアーノ様」

私の声が聞こえたセレート嬢が、こちらを不思議そうに見た。


「偶然、お話が聞こえてしまって。あの、魔馬は本当に危険ですので気を付けた方がいいですわ」

「あら?ヴィストリアーノ様ったら。デルフィーナ様は聖魔法の持ち主ですのよ。魔馬くらいすぐに懐かせてみせますわ」

「そうですわ。もしかして……ご自分にはない力を妬んでいらっしゃるんじゃありませんか?」


親切心で忠告したと言うのに、どうしてこんな風に言われるのか。イラッとしたがそこは貴族令嬢としてぐっと堪える。


「皆さん、やめてください」

セレート嬢が止めた。


「ご忠告ありがとうございます、ヴィストリアーノ様。でもご心配頂かなくても大丈夫ですわ」

もの凄い笑顔で言っているが、何を根拠に大丈夫と言えるのか。いや、本当に危ないって。


「あの、本当に」

私の言葉を無視したグループは、とっとと魔馬の方へと行ってしまった。


「何なのでしょう、あれは。アリーに向かってあんな言い方するなんて」

ジュリエッタ殿下がプンプンしている。可愛いかよ。

「あれは、ほうっておくと誰かやられるわね」

チアが悪い顔になっている。

「見に行きましょうよ」

チタまで……


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