学校に入学する準備をします
15歳になった。
あと2カ月ほどで王立ミケーリ魔法学校へ入学する。ヴィストリアーノ家は、王城にほど近い場所に屋敷がある為学校からは少し遠い。
お兄様もそうだったように、私も寮生活をする事になる。まあ、週末は帰って来るしメリーも一緒に行くのでそこまでは寂しくない。
「ねえ、メリー。これなんてどうかな?」
今日は、寮生活の為の買い物で街に出てきている。飾り気のないシンプルなワンピース姿で貴族令嬢っぽくない服装にしている。
「ああ、よろしいですね。そちらで必要なものは一通り揃いますね」
会計を済ませ、空間魔法で買った物をしまう。この魔法の便利な所は、私が許可した人物と共有出来る事だ。今は、学校の寮で支度を整えてくれている使用人と共有している。お陰で、買ったそばから寮へ運ばれて行くのだ。
「ああ、疲れたぁ」
無事に買い物が終わり、カフェで一息つく事にした。
「そういえばお嬢様」
メリーが何かを思い出したように言葉を紡ぐ。
「皆さんにお守りを作って差し上げてはいかがでしょう?」
「お守り?」
「はい。皆様高位の貴族。万が一何か悪い事に巻き込まれる事になるやもしれません。学校だからと油断するのは良くないと思いますよ」
「なるほどね。確かに一理あるわね。よし、お守り作ろう……でもどうやって作るの?」
お守りというと、神社で買うお守りを思い出してしまう。お守りを作るってどういう事なのだろう。
「宝石に付与したいものをイメージしながら魔力を封入するのです」
メリーが当然と言うように教えてくれた。
「へえ、メリーはよく知ってるわね」
「ええ、暗部でもありましたので」
「そっか。なるほどね」
「宝石かぁ。石はどんなものでもいいの?」
「はい、宝石であれば。せっかく作るのであれば、いつも身に着けていられるものがよろしいかと思います」
「じゃあ、何かアクセサリーのような物がいいかなぁ」
私たちはお茶を飲んだ後、再び街を巡った。
あと数日でいよいよ学校へ入学する。
「学校まであと少しだな」
ラウリスがお茶を飲みながら言った。
「本当ね。皆、同じクラスで良かったわ」
チタがニッコリしてオレステを見る。
「ああ、ちゃんと勉強しておいて良かったよ」
オレステが少しおどけたように肩を竦める。
ミケーリ王立魔法学校は、貴族であれば誰でも入学する事が出来るが、クラス分けの為のテストが入学の前にあったのだ。
「そう言えば、今学年では聖魔法を持つ生徒がいるらしい」
ラウリスが思い出したように言った。
「聖魔法か。それは希少だね」
ロザーリオだ。
「じゃあその方は聖女か聖者になるという事?」
「聖女だ。男爵令嬢だそうだ。聖女になるのかはわからない。本人の希望だからな」
「ふうん」
聖魔法が希少であるという事は周知の事実だ。だが、一般的には浄化と治癒に特化している魔法という事くらいしかわかっていない。そこは変わっていないようだ。
魔物も少ない平和なこの国では、聖魔法を必要とするような事件が起きた事がほとんどない。治癒なら、多少であれば使える人も結構な割合でいるので、聖女に対しての信仰心は薄い。
「あ、そうだ」
私も急に思い出した。空間魔法で目当ての物を出す。
「はい、これ」
小さな箱を5個、テーブルに並べる。
「なあに?」
チアが一つの箱を手に取った。
皆にも箱を渡す。
「わぁ、可愛い」
チタが小さな石のついたピンキーリングを箱から出した。
「私も一緒だわ」
チアもピンキーリングを手に取り、光に当てている。
「俺のはピアスだ」
オレステはピアス。ロザーリオとラウリスもピアスだった。
「どうしたの?これ」
チアが私に問いかける。
「あのね、皆にお守りを作ったの」
「お守り?」
「そう。皆、寮生活になるでしょ。親元から離れて万が一、何か悪い事に巻き込まれるなんて事が起こらないとは言い切れないでしょ。だから作ったの。私もほら、着けているのよ」
チタとチアとお揃いのピンキーリングを見せる。
「可愛い」
チタが早速自分にも着けた。チアも着ける。
「ピッタリだわ。ありがとう、アリー」
「一応、物理攻撃軽減、精神攻撃には完全防護にて対応しております」
「ぷっ、なんのセールストークだよ」
そう笑いながら、ラウリスたちも着けた。
「いいな、ありがとう」
「なんか仲間って感じでいいな」
オレステの言葉に、ちょっとだけ皆で照れる。
その時だった。