表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/73

美しい二人

「アリー!」

私を見つけたチタとチアが走り寄ってきた。ラウリスたちもこちらへやって来る。


チタとチアに片方ずつ手を握られる。

「良かった。大丈夫だという事はわかっていたのだけれど、やっぱり心配で」

チタがウルウルしている。

「魔馬の件は心配していなかったけれど……この状況は予想外ね」

チアは二人を見上げている。


「やあ、君たちが噂のカンプラーニ家の双子のレディたちですね」

エンベルト殿下が爽やかな笑顔を向けた。二人はうっすらと頬を染めた。

『その気持ち、わかるよ』

美しい顔に微笑みを向けられるとそうなってしまうという事は、先程自分が体感した事だ。


「フェリチタ・カンプラーニでございます」

「フェリチア・カンプラーニでございます」

二人が挨拶をすると、エンベルト殿下も挨拶を返した。


「フェリチタ嬢とフェリチア嬢はアリーの友人なのですか?」

「はい、幼馴染です」

チアが答えるとエンベルト殿下が笑った。

「そうですか、それは楽しそうですね」


意外な言葉に二人は一瞬、言葉を失った。それでもすぐにとても嬉しそうな表情で「はい」と答えていた。


それからエンベルト殿下は、ラウリスの頭を優しく撫でた。

「すまなかったね。騒ぎを起こしてしまって」

「いいえ、兄様は大丈夫ですか?」

途端に弟の顔になったラウリスは、エンベルト殿下を気遣う。

「ふふ、私は大丈夫。アリーが見事に魔馬を止めましたから」


男三人が驚いた表情で私を見た。きっとエンベルト殿下が魔馬を止めたと思っていたのだろう。


「お集まりの皆様。この度は私の不注意で騒ぎを起こしてしまった事、本当に申し訳ありません。引き続き、こちらで楽しんで頂けたら嬉しく思います」

エンベルト殿下は、ホール全体に聞こえるように大きな声で挨拶をした。声変わりが始まっているのだろうか、少しハスキートーンだ。


後ろではお兄様も頭を下げていた。そんなお兄様に近づいたのはロザーリオだった。

「ジャンネス様、ジャンネス様も彼女が魔馬を止めた所を見たのですか?」

「私は残念ながら。ただ、アリーなら出来るのは間違いないですから」

こちらも美しい顔で微笑む。会場中の令嬢方は、先程から二人の男性に釘付け状態だ。


「エンベルト殿下、そろそろ参りませんと」

お兄様が真面目な顔に戻り、エンベルト殿下を呼んだ。

「そっか、そうだね。あの魔馬の治療をしないと。じゃあまたね、アリー」

「はい」


戻る間際、お兄様が私の前で膝を折る。

「帰りは?一緒に帰る?」

「お兄様が早く終わるならそうしたいな」

「わかった。そこの王子に後で掛け合おう」


「ふふ、ちゃんと聞こえていますよ」

エンベルト殿下が答えるが、丸っと無視をして私を抱きしめたお兄様。

「じゃあ、また後でね」

いつものように頬にキスをしてくれる。


「うん、またね」

私もキスを返した。

「チタとチアも。またいつでも遊びにおいで」

「はあい」


「ねえ、ジャン。今の羨ましいのだけれど」

そう言っているエンベルト殿下の背中を無理矢理押して、お兄様達はホールから去って行った。


 パタリと音を立てて閉じた扉を暫く見つめる。最初に声を出したのはチタだった。

「私、エンベルト殿下を間近で見たの初めてよ。ジャン兄様に負けないくらい綺麗な人ね」


チタの言葉を切っ掛けに、会場中が二人の美しい男性の話でもちきりになった。


「ねえ、それよりも」

チアが私に向き直る。

「魔馬はどうだった?」

チアは魔馬の方に興味があるらしい。


「全身が赤くて鬣が金色だった。すっごく綺麗な子だったわ」

「そうなの?赤い身体の魔馬は見た事ないわ。で?どうして暴れていたの?」

「左のお尻の所にね、鞭で出来たような傷があったわ」

多分、躾とかではなく折檻されたのだろう。


「痛みのせいだったのね」

チアが沈痛な面持ちになる。私はチアの手を握った。

「でも大丈夫。大人しくなったし、エンベルト殿下が処分する事はないって言っていたから」

「それなら良かった。やっぱりアリーは凄いわね」


「どうして魔馬を止められたんだ?」

黙って話を聞いていたラウリスが話に入ってきた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ