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魔馬の暴走

 近衛騎士が大声を張り上げる。

「皆様、直ちにここからお逃げ下さい。暴走した魔馬が、こちらに向かって真っ直ぐ走って来ていると伝令がありました。私たちの誘導の元、直ちに避難してください!」


何人かの令嬢たちが、まだ姿さえ見えていない恐怖に悲鳴を上げた。それでも流石は上位貴族の集まり。ほとんどの者たちは、近衛騎士の言う通りに動いている。


「アリー!チタとチアも!早く一緒に逃げるんだ」

ラウリスたち三人が、私たちを守るように動く。

「チタ、チア。ラウリスたちと逃げるのよ」

私は魔馬が来るという方向へ向かおうとした。


「何言っているんだ?アリーも逃げるんだ!」

ラウリスが私の手を掴んだが、その手を振りほどく。


「アリー!」

チタが私を呼んだ。

「大丈夫、私は魔馬を止めるわ」

「バカな!いくらじゃじゃ馬でも、そんな事出来るはずがないだろう!」

ラウリスが叫ぶが、私は笑顔で首を振る。


「心配してくれてありがとう。でも、大丈夫だから」

そう答えた矢先、微かに蹄の音が聞こえた。


「もう来たわ。早く!皆は逃げて!」

「アリー!」

魔馬の方へと走り出した私をラウリスが大声で呼んだ。


「心配しないで。本当に大丈夫だから。二人をよろしくね」

そのまま皆に背を向けて、魔馬が来るであろう方向へと走った。



 けたたましいほどの嘶きが聞こえてきた。花園のような場所を抜けると、向こうから真っ直ぐこちらに向かって真っ赤な身体に金色の鬣をした魔馬が向かって来ていた。

「綺麗な子ね」

魔馬の後ろでは、追いかけている人間たちが微かに見える。馬で追っている人もいた。しかし、魔馬のスピードには誰も追いつけない。


そんな一団から突然、飛び出した人がいた。真っ白い身体に真っ赤な鬣を持った魔馬に乗っている。物凄いスピードで、逃げている魔馬を追って来ている。銀色の髪をなびかせて魔馬を操る美しい人の姿が、まるで絵画のように見えて一瞬、目が釘付けになった。


銀髪の男性は私に気付いたようで、エメラルドのような瞳を見開いた。

「君!危ない!」

そう言われた所で、今更どくつもりはない。


既に魔馬は目と鼻の先。

「よし、来い!」

私の存在に気付いた魔馬は、私を吹っ飛ばすつもりなのだろう。方向も変えずに向かって来た。


足に魔力を込める。そのまま高くジャンプをし、見事に魔馬の背中に乗る事が出来た。

「さあ、いい子だから大人しくしなさい」

興奮している魔馬には、私の言葉は届いていないらしい。私をなんとか振り落とそうと暴れ出した。


「いけない!!」

銀髪の男性が叫んでいるが、私は全く気にしていない。


「それくらいじゃ私は落とせないわよ」

鬣にしがみついて腿に力を入れる。そして魔力を魔馬に少しずつ流す。

「聞こえる?いい子だから大人しくするのよ。このままだと危険とみなされて処分されてしまうかもしれないわ。お願いだから、いい子にしなさい」


私の魔力に反応した魔馬は、次第に大人しくなった。数分も経たないうちに、魔馬はすっかり大人しくなる。


「いい子ね」

背中に乗ったまま、魔馬の鬣のすぐ横を撫でてやる。身長の低い私では、それが精一杯だった。


追いついた銀髪の男性が、物凄い形相で近づいてきた。

「君!ケガは!?」

白い魔馬から飛び降りて、私の元へとやって来る。遠くからでも美しい人だと思ったが、近くで見ると鳥肌が立つくらい美しかった。


「驚かせてしまってごめんなさい。私は大丈夫だしこの子ももう大丈夫。すっかりいい子になったわ。だからお願い、処分するなんて事はしないで。ほらっ」

魔馬が暴れた原因が、私の足元から少しズレた場所にあった。


「これは……鞭の痕?」

左側の臀部の辺りに、鞭で出来たような傷があった。何度も同じ場所を叩かれたようだ。

「きっとこれのせいで暴れ出したのだと思うわ。そうよね」

魔馬に話しかけると、返事をするように短く嘶いた。


「君は魔馬の言う事がわかるのですか?」

「ええ、なんとなくだけれど」

昔から動物や動物の形を取った魔物の気持ちがわかる。


「それは凄い。じゃあ、こちらの魔馬の事もわかりますか?」

「……」

じっと白い魔馬と見つめ合う。


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― 新着の感想 ―
[一言] 魔馬をママと読んでしまう今日この頃
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