2話 譲れないもの
本日二本目の投稿です。初作品なのでアドバイス等ありましたら、コメントいただけると助かります。
戦いが終わりスマホを見ると既に8時34分になっていた。楓に初日からの遅刻はダメと言っておきながら自分が遅刻しては元も子もないので全速力で走って向かうことにした。入学初日の教室の空気がとても重いことなど頭にはなかった。
遅刻ギリギリの滑り込みセーフで教室の前のドアから入った俺は入学仕立ての誰も喋らない教室で全員の視線を集めることになる。
「ご、ごきげんよう」
シーン・・・
「(終わった...)」
こうして俺の高校生生活1日目は盛大な自爆で始まった。
「(暫くはぼっちか~)」
俺は自分の席に着くと小さくため息をついた
その後入学式や自己紹介、担任の先生からの連絡事項を聞き昼前には学校は終わってしまった。
「(家で食べるか)」
自業自得ではあるが居心地の悪い教室を早々に出ようとしたところで、俺のスマホにメッセージが届いた
楓:天気いいし公園で食べない?
俺:いいよ
俺:どこ集合?
楓:2丁目公園で
俺:りょ
学校ではお互いに干渉しない。俺が中学2年生の時に決めたルールだ。釣り合いがとれてない俺と楓がお互いに学校の生活を平和に過ごす為である。
公園に着くと先に終わっていたのか、楓が本を読みながらベンチに座っていた。
「待たせたか?」
「5分くらい」
「そこは「私も今来たとこ」って返せよ」
「あんたに猫かぶってどうすのさ。待ったから飲み物買ってきて」
「別に遅刻してないだろ...ミルクティーだっけ?」
「いや、米とミルクティーは無いから」
「じゃあお茶な」
自販機で買って戻ってくると、楓がナンパされていた。万が一楓の知り合いだと困るので話が聞こえる位置まで近づいた。
「新入生?この近くの美味しいとこ知ってるんだけど奢るから来ない?」
「いや結構です。」
普通にナンパだった。楓が完全に興味ない目をしている。助けに入るか...
「なに?誰かと待ち合わせ?」
「はい」
「彼氏?」
せっかくだし彼氏のふりしてみるか。
「すみません。うちの彼女になにしてるんすか?」
「はぁ?お前が彼氏?嘘つくなよ偽善者が」
「(ですよねぇ~。逆の立場なら俺でも信じないもん。実際違うし。)」
「俺らを悪者にして、少しでも彼女に近づこうって魂胆がバレバレだよ」
ニヤニヤした顔をしながら胸ぐらを掴む先輩達。今のうちに早く逃げろと楓にジェスチャーするが
「その人は私の本当の彼氏です。その汚い手でさわらないでください。」
「(なにしてんの!? 俺の頑張り水の泡なんだけど!!)」
泥沼の争いが始まろうとしたその時、
「こんなとこに居たのか、楓。探したんだよ」
クラス1のイケメン佐藤陽翔が割り込んだ。
「僕の彼女を助けてくれてありがとう!」
「ちっ、やっぱり彼氏持ちかよ。残念だったな坊主、俺らもお前もチャンス0だってよ」
先輩達はそう吐き捨てるように言うと去っていった。
「大丈夫だった?楓さん」
「(さすがイケメン、アフターケアも完璧である)」
「助けてくれてありがとう。」
「この後暇かい?自己紹介も兼ねておひるでもどうかな?」
「私は暇だけど」
「(楓がこういう類いの誘いで好意的な返事を初めてみたな。)」
「君はどうだい?」
「(このイケメン俺にまで気が使えるだと...しかし)」
「俺は家族が待ってるから、今日は遠慮しとく」
すごい顔で楓に睨まれたがこっちにも致し方無い理由がある
「そうか、それは残念だ。」
俺は2人が見えなくなるのを確認すると、公園の横の工事現場に来ていた。さっきから背中にとてつもない殺気を感じていた。間違いなく奴だろう。足場の一番上から殺気が漏れている、俺は気配を消して奴の前にいきなり飛び出した。
『っつ!!なんだこの人間はどこから来た!?これでは探し物が見つかんないじゃないか。』
人間の俺には聞こえないと思っているのか子供様にベラベラと独り言を喋っている。
「『何を探してんだ?手伝ってやろうか?』」
『いいよ。あの女くらい一人で回収できるよ。』
やはり精神年利が低いな俺と喋れてる違和感に気付いていない。
「『それは無理だな。あの子は俺の大切な人だ。』」
『!?!?何で人間のお前が俺のこと認識できてしゃべれるんだ?』
「『さあな、今からでもあの子から手を引く気にはならないか?』」
『無理だね!これは決まったことだ。』
そう言うと彼は影から二本の短剣を取り出した。
『おかしいと思ったんだ。あの女そんなに強い訳でもないのにどうやってあのじじいを殺したのか、オマエヤッタノカ』
瞬間やつの殺気が膨れ上がりが跳躍した。これはマズイ体が逃げろと冷汗が背筋を伝う。時間を稼ぐため足場のボルトを素手で抜き奴が突っ込んでくる少し手前で思い切り後ろに回避する。すると狙い通り足場に突っ込んだやつは崩れた足場の下敷きになった。しかし、足場はすぐに細切れにされやつは俺をにらみながら言った。
『コザカシイ』
しかしその言葉とは裏腹にその顔は俺のことを見下すのをやめていた。
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