90話.チートの使い方3
ついに90話!
そしてサブタイの回収です。
90話.チートの使い方3
*****~*****~*****~*****
「双方とも!準備が良ければ摸擬戦を始める。始める前に摸擬戦のルールの説明だ。いいか?殺し合いではない!致死性の高い攻撃には俺が介入することがある。その時点で終了だ。」
アボとイェルガーを見ながら(特にアボを見ながら)注意を促していく。
「最初のルールでは、アボットが伴獣の随伴を禁止、及び初級魔法以外の使用の禁止。イェルガーは特に制限なし。これで間違いはないか?」
「はい!」
「言い訳も出来ない様にするにはこれくらいはね♪」
「余裕ぶっこいて後悔しても遅えぞ!」
「私語は控えろ!!」
「続いて、これは戦闘技術の授業の一貫であるから、真剣以外…模造剣などでの摸擬戦とする。アボットは棍だから問題ない。イェルガーは…一般的なツーハンデッドソード。刃は潰してあるから問題は無いか。」
2人の武器を見ながらガースは危険性は少ないと、摸擬戦を開始しても問題無いと判断した。
「それでは…始め!!」
*****~*****~*****~*****
「覚悟はいいか?すぐにヤっちまうと楽しみが減っちまうからな。嬲りながら、甚振ってやるよ。」
んー。さっきから思ってるんだけど、どこからその自信がきてんだろ?何か“隠し玉”でもあるのか?
たかが15歳のガキに大人げないかも知れないけど、“縛り”はあるけれど、本気でやるか?ヤンとランをバカにしやがったヤツだし。。
「そだねー。簡単に終わっちゃったら、勿体ないもんねー。(泣いて許しを請いても絶対に止めてあげない♪)」
最後のセリフはイェルガーにしか聞こえない程度の小声で。
「先手は譲ってあげるから早く来なよ。ん?もしかして、こんな“か弱い”テイマーにビビってるの?イェルガーくん?」
案の定、怒り沸騰のイェルガーは、手に持っているツーハンデッドソードを上段に掲げ、迫ろうと右足を踏み込み、蹴り出そうとして…
「なっ!?」
イェルガーは理解出来ないとばかりに、素っ頓狂な声を上げた。何故なら、地面を踏み抜けなかったからだ。
その隙に、アボの棍が鋭く「シュッ」と音を立てて、左腕の付け根を刺突する。
「ギャッ!痛ぇ!!」
「あんまり遅いから、攻撃しちゃったじゃん。早くしないと、また攻撃しちゃうよ、イェルガーくん?」
「なんっ!ぐっ!なんで、うっ!何が!っつう!」
混乱しているイェルガーを他所に、チクチクと攻撃をするアボ。
「地味にエゲツねぇ…」
ガースが思わずつぶやいた。が、ほかの生徒たちは理解が出来ている訳もなく、タイガは理解しているであろう、エンに聞いてみた。
「何がどうなってるの?」
「イェルガーの足元を、よくごらんなさい。蹴り出す足が地面に|めり込んでいる様に見えますでしょう?」
よく見ると、踏み込んで前に出ようとする際に、蹴り出す足が前に進んでいないことがわかる。
「小鳥が空へと飛び立つ際、翼だけの力だけでなく、脚の力が大きく作用しているのはご存じですか?
鳥は軽量とはいえ、翼を羽ばたくだけでは空へと飛び立つことは難しいのです。勢いをつけ、脚で地面を踏み抜き、跳躍の力も借りて飛び立つのです。
ですから、飛び立つ瞬間、地面を踏み抜く際、その跳躍の力を奪ってしまえば飛び立つことは出来ません。
アボット様の場合、イェルガーが地面を踏み抜く瞬間に、土の初級魔法の「落とし穴」の応用で地面を瞬間的に下げ、前に進めない様にしているのです。
分かりましたか?タイガさん。」
「分かったような、分からないような。。。」
「では分かりやすく実際に、その身で体験してみてください。別に危険なこともありませんので。それでは、おもいっきりジャンプしてみてください。」
「え?こんな感じ?って!え!!」
タイガがジャンプしようとしゃがみ込み、地面を踏み抜こうとした瞬間に地面が陥没し、飛び上がることも無く、視線はそのまま。
姿勢もしゃがんだ状態から足を伸ばしているのに、しゃがんだ時の視線のままなので、タイガは混乱して声を上げてしまった。
「ご理解して頂けましたか?今はタイガさんの周辺ごと、「落とし穴」を展開しましたが、これをアボット様は精密に踏み抜く脚の部分のみ行っています。
いくら初級魔法とはいえ、ここまで精密に行える術者はほとんどいないでしょう。チートと言っても過言ではありません。」
タイガは落とし穴から抜け出しながら、エンの話をやっと理解した。
「これをアボット様は戦闘の最中に効果的に使えば、攻撃した際の隙を作り出すことにもなりますし、すぐに決着も着けれるのでしょう。
イェルガーにとってもいつ「落とし穴」が来るかも分からず、ろくな攻撃も出来ない状況になりますので、戦う相手と考えれば非常に厄介な相手となります。
しかし、敢えてアボット様は、常に「落とし穴」を使い、イェルガーを動けなくさせています。言い訳も出来ない様に、完膚なき敗北をイェルガーに与えるためなのでしょうが…。相当、起こっているのでしょうね。(…半殺しで済めば良いのですが。)」
「最後に不穏な発現が聞こえたような気がするんだけど。。。」
「イェルガーくん?まだ一撃も真面に放ってないけど、さっきまでの自信はどこ行っちゃったのー?」
「くそ!いてっ!この野郎!卑怯なマネしやがって!!ぎゃっ!!」
「何が?初級魔法はルールでOKのはずでしょ?イェルガーくんも遠慮しないで剣での攻撃だけじゃなく、魔法でも攻撃してくれてもいいんだよ?」
「言われなくても…!原初の炎よ我の…うわっ!」
集中を乱すために足元の地面をグラグラさせてみる。意外に効くなあ。
「その恥ずかしい詠唱、何とかならない?聞いてるこっちの顔が赤くなっちゃうよ。」
「ちくしょう!ぐっ!うるせー!」
やっと詠唱の終わった魔法も「ファイヤーボール!」と放った瞬間、地面を傾かせ、在らぬ方向へ飛んでいく。
ついには、何も手も出せなくなり、アボに棍で突かれるか、叩かれ放題になってきた。
「ギャッ!痛い!や、止め!悪かった!」
…なんか奥の手でもあるのかと思ったけど、この程度か。よくもこの程度でヤンとランをバカに出来たもんだな。まあいいや、そろそろ潰すか。
「じゃあ、次は“闘衣”を使った攻撃をしていくよー♪」
アボの腕から始まり、棍まで魔力が覆われていく。イェルガー相手では確実に殺傷目的の攻撃の様に見えるが…?
「イェルガーくんしっかり“闘衣”で防御しなよー!」
敢えて、言葉で伝える。これで、アボはイェルガーが闘衣を使える前提で攻撃を行うと宣言している。その為、殺傷能力のある攻撃だが、相手が防御できると判断しているので、問題ないと言い訳できる。
イェルガーはついには立ち上がれなくなり(腕を伸ばしてもその分、地面がめり込む)剣も手放し、藻掻くばかりの状況で頭がお留守になっている。
そしてアボが小声で何かを呟いて、殺人的な棍の一撃を振りかぶり、棍が頭部に当たる寸前、ガースが2人の間に入り込み、摸擬戦の終了を告げた。
「終了だ!」
一瞬、アボがガースを睨みつけ、2人の間に剣呑な雰囲気が訪れる。が、アボは棍を下ろし、闘技場から降りようと背を向けた。
「もう遅いけどな。」
最後の一撃を放つ寸前にアボが呟いたのは「泥沼」。
闘技場に、イェルガーの姿はすでになく、イェルガーの居た場所には不自然に泥状になった地面が、水たまりの様に波紋を波立たせているだけだった。
え?イェルガーくん死んじゃ…??
アボの沸点がどのくらいかは分かりませんが、怒らすと一般的な倫理感は通用しないのかも知れません。
イェルガーくんの生死が気になると思って頂けた方は
是非★★★★★のエナジーをお願いします。




