9話.街道沿いでテンプレ発生?
定番のうちで作る料理を載せてみました。
2020/8/28 男爵 → 伯爵に変更いたしました。
9話.街道沿いでテンプレ発生?
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「どうしてこうなった?」
事の起こりは3日目の昼だった。
「今日の昼は、何にしようか?」
「「みゃうみゃっみぃー(スパゲッティー)」」
「出す?作る?」
「急ぎでもありませんし、作ってはいかがです?あと少し行きましたら野営地がありますよ」
「じゃあ、そうするか。」
野営地には俺たちの他に誰も居なかった。俺たちは邪魔にならない場所に大八車を置く。焚火の後があるところが炊事場なんだろう。
さりげなく大八車が陰になるようにして、簡易竈を出し寸胴鍋に水を入れて炊きだす。
「パンはどうする?」
「「みゃみゃうー(たべるー)」」
「はいよー」
今日は発酵させないで作るパンを試してみよう。寸胴鍋の横で竈に火をくベ、温める。強力粉を200gとベーキングパウダーを小さじ2杯、ボウルにふるいながら入れ、合わせてふるい、エンが砂糖と塩を加えて泡立て器でよく混ぜる。
別のボウルで卵2個とヨーグルト80gをよく混ぜ、混ぜ終わったボウルに一気に加える。
エンがゴムベラで手早くさっくりと混ぜ、粉気がなくなった所で8等分に分ける。
クッキングシートを敷いた鉄板に生地を置き、丸い形になるよう簡単に成形する。ヤンとランも手伝いそうに見ていたが、毛が入るとね…、遠慮してもらった。
茶こしで強力粉をふりかけ、竈で15分ほど焼ければ出来上がりだ。
焼き上がりを待ってる間に寸胴鍋が沸騰したので1.4㎜の細目のヤツを取り出す。塩とオリーブオイルを鍋に入れ、軽くかき回したらパスタを入れる。プロの様に広がるようには無理だ。
麺が茹で終わるまでにパンの竈の上部で手早くソースを作る。エンにフライパンでひき肉を炒めてもらい、俺はかぼちゃを適当に薄めにひと口大に切り、しめじを小房に分け投入。
油がまわったら、水を加え、かぼちゃに火が通るまで煮、玉じゃくしの底で少し形が残る程度につぶすとカボチャの色がきれいに染まる。そこに牛乳をプラス。
ちょうど茹で上がったパスタを投入して完成だ。何とも香しい匂いが辺りを蹂躙するかのように立ち込める。
その時、街道を恐ろしい勢いで走り抜ける馬車と馬に乗った集団が無言で通り過ぎた。
「料理に砂が入ったらどうすんだよ。ったく!」
「魔物に追われていますので仕方がないのでは?」
「え゛?」
「ザウルス系の魔物が。ほら、そちらに」
2体の恐竜に似た魔物が砂埃を上げ迫ってくる。あまりにも料理に気が入って、索敵を忘れてた。っていうか、、
「擦り付けじゃん?!」
「食事の邪魔になりますので、排除しますね。」
エンがフライパンを置き、一瞬で恐竜の上空に飛び移ると、両手に50㎝程の極太の針で脳天を串刺しにしていった。正味10秒掛かってない。
「エンさん強い。。。」
「「みゃう(うん)」」
口に鍵フックを引っ掛け、2体を軽々を引き摺ってきたエンに、俺とヤン、ランは引き気味だ。
エンは野営地に木陰になってる木に次々と吊り下げ、俺も急いでバケツを取り出しエンの下へ持って行く。
「血抜きの間にご飯を食べましょうか。」
「はーい」
と、そこに先ほどの集団が戻ってくるのが見えた。
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時は少し戻り、馬車一行。
「ええぃ!もっと早く走らぬか!」
「隊長!今の距離から攻撃も出来ますが?」
「馬鹿者!アレの外皮は硬い。無駄な攻撃になるのが分からんか!諦めてくれるのを待つしかない。とはいえ、アレの執着は並大抵ではないからの。困ったもんだ。」
その時馬車から顔を出し、若い男が声を出してきた。
「早く引き返せ!僕の魔法で仕留めてやるんだから!」
「マジで勘弁してください!旦那がチョッカイ出さなきゃ平穏無事に帰れたんだ。旦那の代わりに足止めした2人のケガだって軽くないんだぞ!」
「うるさい!僕が頼んで足止めさせたワケじゃないぞ!僕の魔法が当たれば討伐出来たんだ。邪魔したのはお前らなんだぞ!無理やり馬車に乗せやがって。家に戻ったら父上に言いつけてやる!」
癇癪を起した男に何を言っても無駄だと、隊長は黙って馬を走らせる。そもそもこんな依頼は受けたくなかったのだ。
「隊長。この調子で騒がれては逃げきることは難しいかと。」
「黙らせるしかないか。眠らせろ。すぐに目が覚めるかも知れんからサイレントも一緒にやれ。」
ローブを着て馬を走らせている男二人が何やら呪文を唱え、最後に「サイレント!!」「スリープ」と叫ぶと、辺りの音が消え静かになった。
ようやく静かになったと安心するも、しばらく走ると野営地に人が居るのが見えた。叫ぼうとしても、先ほどサイレントの魔法を使用したため、逃げろと声を届けることが出来ない。結果的に擦り付けの形となってしまった。
無言で通り過ぎたあと、後ろが心配になり振り向くと、何故かアレの走る砂埃が消えていた。追いかけるのを諦めた?そんな馬鹿な。アレ、暴食ザウルスは絶対にエサを前に諦めない。だとしたら。。。
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「パンが焦げなくて良かった。1人2つな。」
「「みゃん(うん)」」
「エンが手早く仕留めてくれたから今日も美味しく頂けるご飯に感謝して「「「いただきます!(みゃうみゃうん)」」」
拠点以外でも充実した食事を作れるって幸せだなあとフォークでくるくるまいてパスタを一口。アルデンテとか分からんが十分においしい。ヤンとランも器用に食べている。口の周りはベチャベチャだけど。
そんな時、先ほど擦り付けした馬車がゆっくりと戻ってきた。馬から降り柵に手綱を括り付けると、馬車の後ろの荷台に乗せられたケガをしている人たちの治療を指示し、こちらに歩いてきた。
「暢気に食事をしているのは驚いたが無事のようだな。先ほどは済まなかった。サイレントの魔法のせいで危険を知らせることが出来なかった。許せ。」
「え、あの魔物は魔法でこの人たちを黙らせたってこと?」
エンに問いかけると、ゆっくり首を振り、「あの魔物はそんな魔法使えません」とひとこと。
「ん?理解が追い付かない。エンは分かる?」
「多分逃げるために、物音を立てないようにする為に魔法を使ったのでは?」
「なるほどね。だからと言って擦り付けが許されるワケじゃないけど。」
「本当にすまん。許される行為ではないのは重々承知している。」
「っていうより、邪魔。今食事中なんだけど。せめて食い終わるまで待ってよ。」
「おぉぅ。重ね重ね失礼した。では後程。」
そして食事を再開しようとしたとき、馬車の中から一人の男が飛び出し、辺りを見回すと、木にぶら下がってる恐竜を見て、いきなりナイフで目の辺りを突き刺そうとした。
目玉をくり貫こうとしているのか?ザクザクと刺すと次は、炎の魔法を唱え、燃やし出した。
「何やってんだよ!」
俺が流石にそう叫ぶと、他の奴らも気付いたのか止めに入る。そしたら今度は俺たちの方に叫びながらやってきた。
「これは僕、ガブル伯爵の子息、ガブル・フォンバットの獲物だ!」
頭にウジが沸いてる?擦り付けをしといて何言ってんだ?
「旦那!みっともねえ真似すんのは止めて下せえ!」
さっきしゃべり掛けてきた人が必死で止めようとしている。でも暴言吐いてるやつはお構いなしに
「この獲物は元々、僕の魔法で弱ってたんだ!それを掠め取ろうなんて許されない!」
「「「「「・・・」」」」」
もはや呆れて誰もしゃべらない。せっかくのご飯も台無しだ。尚も意味の通じない理屈で自分の獲物だと主張する男。
俺が何も言わないのを、自分の主張が通ったと勘違いした男は、今度はエンを見てニヤニヤと下種な目で見始めた。
「お前、こっちに来い。」
と言ってエンの腕を掴み引っ張って行こうとしたが、エンを立たせることも出来ない。奮闘むなしく動かないエンに激怒し殴りつけようとした。
「止めろ!」
俺はすぐさま、エンを止めた。伯爵の子息は自分が止められたと勘違いし、激高するが他の人たちにはエンが躊躇なく攻撃仕掛けた手が見えていたらしい。急いで伯爵の子息をエンから引きはがし、俺たちに謝ってくる。
伯爵の子息は喚き散らし、お付きの奴らはペコペコ頭を下げ捲り、エンは殺気が漏れ始め、俺は途方に暮れている。
どうしてこうなった??
ウザキャラって、思考回路が単純なやつしか思いつかないのはなんでだろう。