87話.ピザ窯を作ってピザを食べよう
以前、庭にパンも焼けるように石窯を作りましたが、結局ピザしか焼かない現実。。。
87話.ピザ窯を作ってピザを食べよう
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結界の魔道具の件もひと段落したので、『フーヴォの通う店』の裏庭で石窯を作る準備をしている。と言っても耐火煉瓦と木材をストレージから出しただけだが。
「アボット様?どのような形の石窯を作るおつもりですか?」
「理想はドーム型だけど、拠点にすでに作っちゃったから、今回はランクを少し下げて、かまぼこ型にしようかなって。」
「なるほど。ではアーチの型を作りますね。図面を見させて貰えますか?」
さすがエンさん。略して『さすエン』。勝手知ったる感じで、図面を読み取り、指金などの大工道具を使って、コンパネに切り取るアーチ状の線を描き、トリマー(魔石駆動に改造済み)で瞬く間にアーチの土台となる型を作っていく。
俺は前回、活躍しなかった通称トロ舟(ホームセンターから拝借したコンクリートを混ぜる箱)に角スコで耐火セメントを練り込んでいく。
今回の石窯(ピザ窯)は二層式で作る予定だ。
一層式の石窯は、構造がシンプルだし小さいサイズで作ることが出来るので、使用する材料(耐火レンガなど)が少なくて済む。
また、炉のサイズも小さく、二層式タイプにくらべると、調理のときに使う薪や炭などの燃料も少なくて済むので経済的だが、俺の場合は複製でいくらでも作り出せるので問題ない。
それに一層式の石窯は、二層式に比べると炉のサイズも小さいことで、温度が下がるスピードも速いし、追い炊きも出来ないから。
従って、調理できる時間が短くなってしまう。下がっていく温度の中で調理するので、温度管理は難しいし、再び温度を上げるためには、一度調理をストップして、燃料を燃やさないといけなくなるので、今回は追加で薪や炭などの燃料を追い炊き出来る二層式に決めた。
まあ、一層式の石窯だと一度、薪や炭などの燃料を移動もしくは捨ててから調理するスペースを作るのが面倒臭いってのもあるけどさ。
「ヤンさんランさん、レンガ積むの手伝ってね。」
「「みゃん!」」
図面を見ながら、レンガを並べていく。ふと視線を感じて、辺りを見渡すと、キラリが窓から覗いているのが見えた。
「…アボット君ってDIY好きなの?」
「嫌いではないかな。」
「ふーん。…なんかエンリさんのねじり鉢巻きって、「DIY」っていうより「日曜大工」って感じだよね。」
ちなみに今日のエンの恰好は、どこぞの芸能人が体を張って芸をする際に良く着るピンクのツナギの上に、ねじり鉢巻きを巻いている。
「褒めても何も出ませんよ?」
「似合ってるかも知れないけど、キラリさんの言い方だと、褒めてないような気がする。」
「…そんなんじゃないけどね、恰好と作業の手さばきにギャップを感じると言うか何と言うか…。」
「プロ顔負けの腕前だなんて…。褒めてますよね?」
「恰好の話じゃなかった?」
若干、ズレた内容の会話の中、準備は進んで行く。アボとヤン、ランが器用に耐火コンクリートを練り込みながら耐火煉瓦を乗せて行く。
二層式の枠をレンガで積み上げると、エンが作ったかまぼこの木型を乗せ、アーチの土台の準備が整った。
一度、楔を使いながらレンガを並べ、設計通りにアーチが並ぶかを確認した後、目地にコンクリートを満遍なく塗り込んでレンガをはめ込むことを繰り返していく。
しばらく時間を置いて、コンクリートが少し固まると、静かに楔を抜き、隙間にコンクリートを押し込む。少し手間だが、急ぎでもないしね。慎重に進めていく。
「木型、抜けるかな?ダメなら焼いちゃえば良いんだけど。出来れば綺麗に抜きたい。」
「一応、解体出来る様に組み立てましたので大丈夫だと思いますよ?」
「じゃあエンリに任せた。その間に、煙突部分を作っちゃおう。ダンパーはどんな形状だったっけ?」
せっかく図面があるのに、見なかったら意味がない。いくら急いでいないからと言って、やり直したくはないから慎重に。
エンがカコンっと木型を綺麗に外してくれた。
「うーん。やっぱり目地のところ、入りきらずに、隙間が開いてる状態だね。」
「コンクリートをぐりぐり押し込みましょう。」
エンがキレイなイナバウワーの恰好で天井部分の目地を補修していく。見事な角度だ。俺の方も金属の煙突を取り付けれた。
「なかなか良いんじゃない?」
「最後に入り口部分を塞いで完成かな?」
背面部に使用した、カットした耐火煉瓦もパズルの様に組み合わせ、開口部を除いて塞ぐことが出来、鉄の扉も付けた。これでピザだけでなく、パンも焼ける石窯になった。パン窯では余熱を逃がさないように石窯を密閉する扉がないとね。
見た目は完成したように見えたので、ソワソワと今か今かと覗いていたキラリが思わず聞いてきた。
「完成した?もうピザ焼いちゃう?」
「火入れが終わったらね。」
「火入れ?」
「火入れをすることで耐久性の高い石窯になるんだって。それにコンクリートも完全に乾いてないから水分も含んでるでしょ?火入れで乾かす感じになるのかな?」
「へー。まだ食べれないのか…。」
適当に誤魔化したが本来は、耐火コンクリートは水を加えて作るため、多くの水分を含んでいるので耐火コンクリートが完全に硬化していないタイミングで火入れをしてしまうと、急激に水分が蒸発し、耐火コンクリートが収縮してクラックが入ってしまう。
しかし、そこは安定の時間経過促進を使い、耐火コンクリートが完全に硬化するくらい時間を進めてある。
「まずは下の窯で火を起こそう。勿体ないから、この木型を燃やしちゃう。」
エンが切った木型の切れ端なども窯に突っ込み、魔法で火を灯しゆっくりと焼いていく。まずは小さい火で。大きな火力で焼いていくと、クラックが入ってしまうからだ。
「さて、セガルルト様を呼びに行こうかな?来る頃には火入れも終わるし、余熱も十分だろうから、ピザも役に丁度良いし。」
「王子呼ぶの?」
「前に、セガルルト様に声掛けたからね。それに大勢で食べた方が美味しいでしょ?」
「そりゃそうだけど…、気兼ねなく食べたい気もする。。。」
「手伝わなかった人に文句は言われたくありませーん。」
「そりゃそうか。」
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王宮から馬車でやってきたセガルルト。今日、ピザを焼くって言ってはいたけど、フットワーク軽いなあ。王族って忙しいと思うんだけど。。
「お待たせしました!アボット殿。」
「さほど待ってないけどね。それじゃ、作って行こうか。今度はそらさんもキラリさんも手伝ってね。」
「「りょーかーい!」」
そらとキラリにも手伝ってもらい、生地から作っていく。ここは強引にセガルルトにも生地を捏ねろと強要した。ついでにお付きの人も巻き込んだ。自分で喰う分は自分で作れ!
まずは大きめのボウルに強力粉と薄力粉を振りながら合わせ、塩、ドライイーストを入れ軽く混ぜ合わせる。
オリーブオイルとぬるま湯を注ぎ入れ、生地が馴染むように捏ねる。 自然と粉が纏まるようになるまで捏ねると、ボウルについていた粉も生地に綺麗にまとまる。
生地がまとまったら、表面が滑らかになるようにバコンバコンと台に打ち付ける。10回くらい打ち付けたら、1回生地を包み込むように練り、また10回打ち付け、1回生地を包み込むように練る。だいたい10セット位やったら丁度良い感じになった。
打った生地をきれいにしたボウルに入れ、ぬれふきんをかけ、1時間程、時間経過促進で発酵させ、押すようにしながらガス抜き。
次に丸めて、ぬれふきんをかけて、さらに20分程、常温で寝かせ二次発酵を促す。
「さて!生地を伸ばそう!」
「プロみたいに出来るかな?」
「私のマネすれば宜しいかと。分厚いところに人さし指を入れて、くるくる回すと遠心力で意外にのびていきます。やり過ぎると穴があくので要注意ですよ!」
拠点で作り慣れているエンは、まさに「ピッツァ職人」顔負けの腕前である。右に左にくるくる回したピザ生地が舞うように広がって大きくなっていく。
「あれは無理でしょ。」
「マネ出来ると思うエンリさんがオカシイと思う。。」
エンの手さばきにドン引きする女性陣。意外にもセガルルトのお付きの人が上手い感じでくるくる回していた。
「それじゃあトッピングしていこう!」
「私は定番のマルゲリータ!」
「私は適当に、ベーコン・玉ねぎ・ピーマンをトッピング♪」
トマトソースをお玉の底で器用に円を描くように外側へ薄く伸ばして塗塗り広げ、キラリはモッツァレッラチーズを好みの大きさにちぎってソースの上に散らし、パルメザンチーズや海塩も全体に散らしていく。そらは玉ねぎを全体的に散りばめ、べーこんやピーマンを彩りを考えながら散らして行った。
「トッピング一つとっても性格出るね。」
「「確かに。」」
2人は声を揃えながらもセガルルトのトッピングを見ていた。セガルルトのトッピングは、均等に添えられたサラミとミニトマトが、まるで万華鏡の様に並べられていた。
「それじゃ、焼いて行こうかね。」
ピザピールとかパーラーと呼ばれる平たいスコップみたいな道具で器用に窯に入れていく。
「忘れてた!」
ダンパーが閉じたままだった。閉じたままだとすすが付いたり煙臭いピザになるんだよね(拠点で学習済み)
ダンパーも開け、焼け具合を見ながら、意味も無くパーラーでピザを回転させる。ただのカッコつけである。
「それって意味あるの?」
「くっつく時あるからね。」
「へー」
適当なウソが重ねられていくが、元々女性陣が竈の火の使い方を慣れさせるためにピザ窯を作ったことを忘れている。
「…鍋将軍ならぬ、“カマ”将軍…(ぷっ)」
「“窯”が違う響きに聞こえたのは俺だけ??」
「しかしこのように石窯を使い自分で料理をするというのも初めてですが、楽しいものですね。」
「そりゃ王子様が自ら料理なんてしないもんね。」
「っていうか、しちゃダメでしょ。立場的に。」
「賢獣様が言ってましたけど、昔レーラさんって王女様は、フーヴォ様と一緒に料理をしてたらしいよ?」
「そうなの?王女様なのに??」
「記録によると、食の探究家でしたから。」
「へー。王族でも色んな方がいるんですねー。」
「そろそろかな?だいたい5分くらいだね。」
アボがパーラーでピザを取り出し、台の上に滑らすように置く。そしてエンがピザカッターで綺麗に8等分にし、柄の短いパーラーで掬いあげる様にして、各人の目の前へおいて行った。
「さて、セガルルト様の毒見ってこういう場合でもするのかな?」
「…職務ですので。」
平静を装っているが目が喜んでいるぞ?しかし、出来立てのピザは…
焼き立てなんだぜ?熱々のチーズのお味は如何かな?
「………!!!!」
毒ではないが、一口食べたお付きの口の中は、火傷しちゃったよね?でも焼き立てなのは見てたんだから分かるだろ?自業自得な気がする。。。
火傷しながらも職務を全うしたお付きの者は、涙目になりながらも美味しさを噛み締めてましたとさ。
友人のナポリの人は、お店でピザを食べるとき、ピザ窯の一番近いカウンター席で
出来上がったピザをすぐに、火傷をするくらい熱々で食べるのが“通”な食べ方って言ってました。
ほんとかなぁ?
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