85話.牧場での一日
昔、鶏を飼っていた時のことを思い出しました。
あの頃は貧乏だったけど充実してたなぁ。。。
85話.牧場での一日
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「ねえ、アボット君?なんで玉子って生だと危険なんだっけ?サルモネラ菌ってのは聞いたことあるんだけど…。」
畜産の実験施設に来ている。鶏舎を前にして、そらが聞いてくる。
「エン様からお聞きした話だと、鶏の卵を産む出口と糞尿する出口が同じって言ってました。だから家禽の腸管内に常在しているサルモネラ菌?が卵に付着している可能性が高くて、食中毒になりやすいって言われたかな?
それを洗卵、検卵、選別をしっかり行うことで、渡り人…特に日本人?が好む生の状態でいただくことも可能だとか。」
「え?そうなの!?人間と体の構造が全然違うんだねー。でも賢獣様って向こうの知識もあるんだね。日本人を知ってるなんてさ。」
実際、生を好むのは日本人だけじゃない。イタリアなども好んで食べる。カルボナーラが良い例だ。
「渡り人は数は少ないけど、こっちの世界に何人か来てるらしいからね。」
「…帰れた人っているのかな?」
そりゃ知り合いも居ない世界にいきなり連れて来られたら、不安になるよな。
「帰りたい?」
「ううん。私は、家族とも仲良くなかったし、友達も居なかったから、構わないんだけどさ。時々、隣の部屋で泣いてる声が聞こえちゃうんだよね。。。」
あぁ。気丈に振舞っていても15歳の女の子だもん。ホームシックになっても仕方がない。
「そらさんは強い人だね。」
「どこが?」
「他人を思いやるってところが。」
「…一応、同郷だし。」
照れ隠しの様に顔を背けた姿に、そらの人の好さが見える。
とりあえず鶏舎と鶏については順調のようだ。鶏も有精卵とはいえ、アボの時間経過の能力で一気に孵化させた点と、異世界で向こうの鶏が無事育つのか?検証段階のため、10羽ほどの(雄鶏1羽、雌鶏9羽)を育てている。
昼間は外で自由にさせ夜は鶏舎に入れているが、夕方になると自主的に鶏舎の中に入ってくれるのが地味に嬉しい。
最初はヤンとランが追いかけて鶏舎に入れていたから。何故鶏舎に入れるかというと、鶏は午前中に卵を産む性質の為、なるべく鶏舎の中で卵を産んでくれないと、どこで生むか分からなくなり、牧場を探し回らなければならなくなるから。
ヤンとランは楽しんでいたが、毎日の事となると…、出来ない時もあるからね。鶏も習慣づけることで、鶏舎に入る癖がついてくれて良かった。
鶏舎を出ると、木陰で子ヤギが寛いでいるのが見える。そして何故かヤギ小屋の屋根の上にもヤギがいる。ヤギは高い所が好きっていうのは本当みたいだ。
「あ、子ヤギの尾っぽが立った!」
アボが急いで尾っぽの立った子ヤギをヤギ小屋の近くの一角へ誘導する。どうやら排泄のようだ。
「トイレを躾けてるの?」
「そだよ。基本的にヤギは垂れ流しだけど、躾けるのは可能みたい。後処理も楽になるし、まだ実験段階だけど。」
「ちなみにあれは?」
「ん?あれはアニマルソルト。ミネラル補給のためだね。」
「大きいね。」
「5㎏くらいかな?」
「育てるにも色々あるんだね。」
「動物は飼ったことない?」
「転勤族だったから。」
「なるほど。でも動物の触れ合いは楽しい?」
「うん!」
「ま、この子ヤギも食べられる運命だけどね。」
「こんな可愛いのに!無理無理。アボット君は鬼だわ!!」
「そらさん、畜産に向いてないわ。」
2匹の子ヤギの可愛さにメロメロなそらに呆れるアボだった。
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牧場で飼育されている動物は、牛・ヤギ・羊・豚・鶏の5種類。どれも向こうの世界から持ち込まれた動物だ。
ちなみに小説での定番のストレージやアイテムボックスには生き物の収納は不可能なモノが多いがそれは何故だろうか?
俺的に考えられるのは、小説としての「倫理の問題」ではなかろうか?でなければ、草木は収納出来て動物や人間が収納できないのは理屈に合わない。
どれも生命という意味では同じなのだから。時間停止の機能があれば呼吸も必要ないし、生命維持を気にする必要も無いんだし。
生き物は収納出来ないと言いながら、味噌などの発酵食品だって、生命という観点から見れば、菌も生命として考えなければおかしいのに、収納できるのはご都合主義にも程がある。
生命としての大きさの問題?そんな訳ない。作者側の倫理的な問題だけであるとアボは思っている。そうでなければ理屈が通らない。
他のファンタジー作品の批判をする訳ではないが、生き物が収納出来てしまうと、誘拐など倫理的にアウトな事案が発生してしまうので、収納出来なくさせているのではないだろうか?現にアボは収納出来ているのだから。
話が横に逸れてしまったが、こちらの動物や魔獣を畜産で育てるには、ノウハウが何もないので、向こうの世界の“食用”に品種改良された動物で実験した方が、畜産にも向いていると判断した。
畜産なんて素人でノウハウも無いのにいきなり魔獣など食用に育てるなんて、普通に考えて無理だろ。
まあ、結界の魔道具の作成のため、魔道具科の授業以外の時間は牧場に付きっきりでも構わないと言われてるので、学園はしばらくお休みして、動物と触れ合っているわけだ。
ぶっちゃけ、俺は学園の授業なんて出なくても構わないしね。エンが通いたいって言ったから来ているだけだし。
ちなみに葛城そらは、生態調査の授業の単位をこちらに来ることでもOKと言われ、手伝いというか雑談相手として来ている。一種の冷やかしとも言うが。
それにしても、このまま順調に育っても俺だって出産や種付けの経験は無いし、出荷(解体)時期の見極めも出来ないし、その辺はどうしたもんか……。
鶏については幼い頃、両親が飼っていたので、問題無いのだが。
朝元気に『コケコッコー』と鳴いていた鶏が、夕飯におかずとして食卓に上った時は、姉が泣きながら食べていたのを思い出す。俺は父と一緒に鶏を絞めてたから。忌避観はまるで無かったけど。
「さて、魔道具の調子も問題無さそうだから、そろそろ魔道具もセガルルト様に引き継ぎしようかなー。」
「ねえ、アボット君。この牧場って国営なの?」
「そだよ。土地の用意にしても全て、国費で賄われてるはずだよ?」
「…それなのに誰も手伝いに来ないんだね。。」
「最初は共同で研究する予定だったんだけど、急遽立ち上がったプロジェクトだったからね。人の手配も間に合わなかったから、とりあえず俺が小規模で実験することになった。
一応、運営管理する責任者は据えるけど、実務は孤児院の出身の子たちに頑張ってもらう予定。」
「孤児出身だと雇用の面で不遇だから?」
「それもある。あと、下手な「しがらみ」があると、利権関係が面倒臭いってこともあるしね。美味しい食肉を提供出来ることになれば、貴族とか面倒臭いでしょ?」
「確かにねー。絶対に関わりたくない。」
「魔道具の調整も一段落したし、来週から孤児院の子たちが着ても大丈夫かな?」
「ある程度人数が来るなら、泊まり込み出来る宿舎も大きくしないとね。」
「それもそうか。どのくらいの人数で運営するかも考えないと。宿舎の規模も決めれないか。。」
「…アボット君って何屋さんか分からなくなるね。」
「素人に何やらすんだって思うけど、言い出しっぺだからなあ…。」
トホホなアボであった。
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