84話.結界の魔道具
基本的に、アボは研究者でも開発系の職種だった訳でもありません。
そんな簡単に作れるワケねーだろと思いつつ魔道具作成に望んでいます。
84話.結界の魔道具
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あれから1ヶ月が経つ。結界の魔道具は未だ完成はしていないが、とりあえず王都近郊に牧場を作り、アボの空間魔法によって試験的に畜産を始めている。
まず最初に育てることにしたのは鶏だった。アボのストレージに有精卵があった為だ。烏骨鶏の有精卵もあったが排卵の頻度・数などを考慮して、今回は見送りして普通の鶏で試していた。
その他には魔獣ではない獣を数種類、飼育している。理由としては将来、結界の魔道具を発動した際、結界の内側にいる魔獣にどんな影響が起こるか検証も出来ていないためだ。
アボだけでなく、今年入学した生徒達も学園生活に慣れ、授業も段々と専門職を出してきた頃、魔道具科の授業でアボは手に、『鎖式』魔力診断の鎖を玩びながら、思案気に窓を眺めていた。
「アボット君?どうしたの?手が止まっているけど…」
そらが何気なく作業の手が止まっているアボを見つけ問いかけてきた。
「今、考えてる魔道具で悩んでてさ。行き詰まってる。」
「結界の魔道具だっけ?」
「そうそう。今いくつか案があるんだけど、壁にぶつかった。」
「ちなみにどんな?」
「今のところパターンは2つ。
1つ目は文字通りの結界。これだと出力の問題や魔獣だけじゃなく、人間も引っ掛かっちゃうって問題。今のところ入り口も作れないし、覆うだけ。出入りが作れないのは致命的な欠陥魔道具になっちゃう。
ついでに費用も出力によっては膨大になるし。あとは言いたくないけど軍事利用も可能だから、作れたとしても表に出したくない。
2つ目は魔獣が嫌がる薬草の匂いを人工的に作り出す形の結界。これも金額はともかく、風向きに寄っては、匂いで住民にも不評を買う。当然、周囲に漂う匂いが、テイムした獣魔にも畜産予定の魔獣にも不快だしね。
どっちにしても費用対効果を考えると、微妙なんだよなー。」
「いっそのことキラリちゃんの聖魔法で、覆っちゃうような魔道具でも作れたら良いのにね。」
「それだと1つ目の案とほとんど一緒なんだよね。町全体だと膨大な出力になっちゃって莫大な費用が掛かっちゃう。一応、キラリさんに協力してもらって聖魔法の魔力パターンは解析してあるんだけど、特殊なだけあって、再現するのにかなり余計な魔力を使っちゃうんだ。」
「ふーん、難しいんだね。でもアボット君のやってることって、魔道具科の授業の枠超えて、研究系の学科みたいだね」
「まさしく、開発っていうよりも発明って感じだよね。」
自身の空間魔法を使っても、以前フーヴォが激突したように、全てをシャットアウトしてしまうし、エンなど賢獣の魔力を放出するパターンだと、人工的に再現しようとすると、すぐに不具合が起きてしまっていた。
「結界っていう考え自体が視野を狭めている気がする。」
そういって手で鎖を弄っていたアボだが、何か思い付いた様に鎖を凝視し始めた。
「そっか!結界にこだわり過ぎていた!生態調査の講師に聞いてみて、仮説が合っていたらイケるかも……!」
「お?何か思い付いたみたいだね。行き詰まった時って、得てして関係ない人と雑談することで、違う視点が見えて来ることもあるよね。
ついでに生態調査の授業受けてるから、聞いてあげよっか?」
「ほんと?!光が見えてきた気がする。ありがと。」
「どういたしまして。上手く行ったら将来、私が牧場で就職する気になった時には斡旋してね。」
「ん?牧場っていうか畜産に興味あるの?」
「私の魔力適性知ってるでしょ?」
「土系統・特殊寄りの『草』魔法と支援系のダブルだったっけ?」
「そうそう。適性的に農業も良いかなって思ってたけど、牧場でも重宝するかなって思ったワケさ。」
「なるほど。畜産や牧場の運営はセガルルト王子の管轄だから、その気になったら相談してみるのも手だね。
そしたら生態調査の講師に魔獣の分布と、町や村の魔獣の被害状況。主に地上と空からの被害の割合を聞いてもらえると嬉しい。」
「了解。」
「これで、一歩前進しそうだよ。」
そう言うアボの手には、くるくると回りながら鎖自体が淡く光っていたのだった。
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「やっぱりそうか。これならローコストで行けそうだ。」
早速、そらに生態調査の講師から聞いてきてもらった資料を見ながら、確信を深める。
「どのようなコンセプトで行くおつもりですか?」
「基本的に、全方位で覆う形の結界は規模と言い、出力的にもコストが掛かり過ぎる。そらが聞いてきてくれた話によると、上空からの被害は町や村によってもマチマチだけど、年に数回程度。そのために上空も結界で覆うのは無駄が多いと思わない?
それならば、いっそのこと上空の防衛手段は諦めて、地上の防衛を主としたものを作った方が、ローコストで作れると思ってさ。
全てを賄う結界は現実的じゃない。もともと無かったんだから、そこら辺は我慢して貰う方向で行こうと思う。」
「…お考えは理解しましたが、魔道具の仕様はどのようになさるのです?」
「それについてはこれ。」
アボの手にあるのは『鎖式』魔力診断に使用する鎖。
「これに魔力を通すと、全適性が分かるところに着目した。この材質を使えば、聖魔法の魔力もある意味“発現”するでしょ?魔力回路の応用で一方行、もしくは任意の方向のみ発現させ、その他の部分は遮断出来る様にすれば、必要なところだけ魔力を発現させることが出来るし、経済的かつ効率も良くなる。
匂いと違って人間には害は無いし、柵や壁の外側だけ放射するようにすれば、内側にいる魔獣や獣魔・使い魔には影響は無い。
出来れば、これに出力の調整とスイッチを付けた魔道具にして、出入り口を除く形で設置すれば、俺や賢獣が居なくても運営していけるんじゃないかな?」
「鎖式に着目されたのがアボ様らしいですね。」
「一応、最初に手にした魔道具だしね。」
「出力部分は鎖の材質そのままで行けると思いますが、出力調整やスイッチ部分の設計が面倒ですね。
それとキラリさんの魔力パターンを使うにしても、魔石を聖魔法の魔力として出力変換させる魔法陣の開発は、年単位でも難しいかも知れません。」
「それはそうだね。だから開発できるまでの繋ぎに人工魔石を使う。」
「その手がありましたか!今まで負の側面が多かった人工魔石でしたが、そういう使い方でしたら、新たな運用方式として認知される可能性が高いですね。」
「教会関連が悪用しそうだけど。」
「聖属性の人工魔石を高額販売しそうな気もします。」
「そうなったら、賢獣の名のもとに大量に複製して、すぐにでもデフレ状態にしちゃうけどね。」
「まずは簡単な魔力回路の基板を作って試作を作ってみるよ。電池となる人工魔石の調達は頼める?」
「承知しました。出来上がりが楽しみですね。」
モノ作りは嫌いじゃないとはいえ、何でこんな面倒な事引き受けちゃったかなーと首を傾げながらも、何だかんだでお人好しのアボであった。
1ヶ月で開発出来ちゃうご都合主義で申し訳ありません。
アボの中では懐中電灯を自作する程度の感覚です。
続きが気になると思って頂けた方は
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