83話.単位が足りない! からの、結界の魔道具
前回のあらすじ:
エンとヤンとランがやらかした。
↓
授業に居辛くなった。
83話.単位が足りない! からの、結界の魔道具
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「学びたい授業が無い!」
「由々しき問題ですね。」
戦闘魔術の授業に居辛くなったアボとエンは途方に暮れていた。
「そういえば、学園の授業って偏りというか、足りない気がしない?」
「と言いますと?」
「芸術系とか、農業や料理系の授業とか。自国の発展、民の安全を考えるなら薬学とか。あとは…服飾関係とか?」
「料理については調味料が発展していませんから、授業としてやる意味も意義も無いのかも知れませんが、農業・芸術については…確かにありませんね。
薬学も、フーヴォさんのおかげで、薬草自体は発見されていますが、進展はほとんどありません。服飾は、素材の進歩があのレベルなので、デザインも限られてしまいますからね。
授業として成り立たないとはいえ、あまりにも偏り過ぎているかも知れません。
そう考えると、こちらの世界は閉鎖的と申しますか、面白みのない世界ですね。」
「そうなんだよ。この世界って、知の娯楽に対する考え方がさ、低いっていうか不足してるって思うんだよね。」
「心を豊かにするという意味では、不足感は否めませんね。」
「それに建築土木に関しても、その他の研究分野に関しても、専門的に習う場が「徒弟制度」しかないのは、国として損失じゃない?」
「アボ様が国を起こせばいかがです?」
「やだよ、面倒臭い。俺は自分の手の届く範囲の幸せだけで十分だし、それで精一杯だよ。」
いつもの雑談に突入していたら、いつの間にか近くに来ていたセガルルトが割り込んできた。
「ずいぶんと欲のない発言ですね。」
「そうかな?身の丈を知ってるだけだよ。」
いきなり話に割り込んできたセガルルトに対して、普通に会話をするアボ。もちろん側に来たのもエンとの念話で聞いていたからビックリすることも無く、自然な感じで話を進めれたのだが。
「一国の王族相手にタメ口を言ってる時点でどうかと思いますよ?」
「それはそれ。一応、賢獣の主だし。」
「どこぞの賢獣様を失った国の王よりも、位は高いですからね。」
セガルルトに対して敬意のかけらもない対応。お付きの護衛も引き攣った表情だが、いつものことなので、お構いないセガルルトにアボ&エン。
「それよりも、先ほどの話ですが…。」
「どの話?っていうか、どこから聞いていた?」
「受けたい授業が無い辺りから?」
「最初からじゃねえか。」
「実は“裏”授業というものがあるのですが…」
「何それ?」
「教えれる講師が居らず、廃れてしまった授業と申しましょうか。。。先ほどおっしゃられていた芸術、…例えば音楽にしても授業自体はあったのですが、講師がいなくて授業として成り立たず、見送りになってしまったものの一つです。」
「宮廷音楽家とか呼べなかったの?」
「自己の研鑽と徒弟制度の弊害で、授業として教える時間は取れないと辞退されてしまって。」
「なるほどね。」
「アボ殿が宜しければ、いくつかの授業を復活させることも可能ですよ?」
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学園を去り、セガルルトの執務室。アボとエンも一緒に、テーブルに置いてあるいくつかの“書類”を手に取り、何やら興奮している様子のセガルルトの姿があった。
「裏授業も検討したらと思ってましたが、こちらの資料を拝見するに、生態調査の別枠で授業と言うか、実験施設を作る方向が良いのではないでしょうか?」
「問題は、場所と魔獣関連ですね。」
「そうですね。アボ様や私がいる間は、魔獣を恐れる必要もありませんが、継続的にと考えると、流石にいつまでも張り付いている訳にもいかないですから。」
「経営や畜産のノウハウは、この資料である程度予測がつきますけど、永続的な魔獣被害の対策が急務ですね。」
「畜産に限らず魔獣被害の対策は急務だと思うけど?王都に居るからって被害意識が薄いんじゃない?」
「…おっしゃる通り。民の安全は何よりもの急務です。」
「ちなみに今までの対策は?」
「街や町には領主の護衛団の常駐程度で、村などは小規模の自警団にて対応している次第です。」
「後は冒険者ギルド頼みですね。」
「結界の魔法とか魔道具は無いの?」
「結界?」
「賢獣の恩恵で強い魔獣は近寄れない様にしていますが、結界と言う程のモノは敷いていませんし、魔道具も存在していませんよ。」
「じゃあ、結界魔法も存在してないんだ。。。」
「アボ様でしたら、作り出せると思いますけど。」
「本当ですか!?」
「ん?そなの?」
「アボ様、貴方のその自己価値の低さは改めた方が宜しいですよ?規格外過ぎて引きますけど。」
「ディスられた。。。」
「…アボ殿は、何者なのですか?
今まではエン様の、賢獣様の恩恵をフルに使われる主殿との認識でしたが、まさか、それさえも違うと云うのですか??
それに!結界という魔道具が作れるというのなら……!!」
「落ち着いてください。セガルルトさん?アボ様は、こう見えてハイスペックなんですよ?」
「こう見えてって、何やねん!」
「その話が本当でしたらハイスペックどころの話じゃないですよ!」
「セガルルトさんですから言いますが、今まで貴方が見てきた全ては賢獣の恩恵ではなく、アボ様の起こした奇跡と言っても過言ではなりません。」
「おーいエンさん、無視しないで!」
なぜかアボの存在すら無視し始め、暴走し始めるエン。
「『フーヴォの通う店』の提供しているパンにしても、あの建物にしても、全て賢獣の恩恵など必要とせずに作られたものなのです。」
「…なんと、賢獣様の知識以上の。。。それほどまでの知識と能力を有していると?」
「本人は地位や金銭にも執着が薄く、私達賢獣の望みの為、学園にも通わせて頂いたり、美味しい食べ物を提供して下さっていますが、それも全て、身内に対してのみです。
たまたま私の我儘で、冒険者ギルドや渡り人と関わってしまった為に、貴方達も含め、面倒を見ることになってしまいましたが、本来であれば……!」
「エン!」
「…失礼しました。」
流石にアボが止めたが、本来そこまでの情報を他者に喋るものではない。何がエンの琴線に触れた?エンが必要以上に熱くなったのは何だろ?
冒険者ギルドの時もそうだったけど、時々暴走するよなぁ。。。
気まずい沈黙が流れてしまったが、話を逸らすようにアボが結界について話を振った。
「とりあえず、結界の魔道具を作れるか試してみるよ。製作のヒントになるかも知れないから魔道具科・応用魔術の授業も参考にさせて貰おうとは思ってるけど。」
「…分かりました。至急、学園長に話を通しておきます。その結界?の魔道具があれば、国民の住まう地域の安全のみならず、食についても改善が見られますので。」
「とりあえず今受けてる授業は、継続で受けるから。それ以外の空いている時間帯を使わせてもらうよ。」
「承知しました。」
「それと…、」
「それと?」
「“アボ”の存在は、なるべく表に出したくないから。理解してね?主としても極力、表に出たくないから。」
「?」
セガルルトは一瞬、理解が出来ない表情でアボを見つめた。
「解からないようだから、もう一つだけ教えておく。…今の俺の年齢はいくつに見える?そして最初にあった時は、…いくつに見えた?」
「……!!」
「ヒトの一生は何年だ?50年か?それとも80年?俺は不死ではないし、そのままであれば不老ではないけど…、生きようと思えば。。。言いたいことは理解出来るな?」
「………」
「だからこそ、俺の存在は異端だ。ただでさえ、賢獣の主という存在に加え、俺の能力は『渡り人』の持つ“それ”を遥かに凌駕する。
目立っちゃいけないし、目を付けられる訳にはいかない。だからアボットという存在がいる。
そこのところを理解してくれるのならば嬉しいよ。」
「……情報量が多過ぎて、理解も出来ているとは言えません。が、この話は例え国王にも言いません。というか言えません。
…正直、何故この話を私に言われたのかも理解出来ません。為政者である王族なんですよ、私は!こんな秘密を抱えてこれからどう生きて行けば良いというのですか!」
セガルルトが怒りにも似た激情が溢れているように見える。やっぱり根が真面目なんだろうな。だからこそ、俺の根幹ともいえる秘密を話したんだけど。
「辛いのなら、契約魔法で縛っとく?信用してるからしなくても良いと思ってたけど。」
まるで揶揄うように、セガルルトに問う。
「是非お願いします!」
…即答されてしまった。そこまで追い詰めたか?
「そこまで重く考えなくても良いのに。もしバラしたら100年くらい消えるだけの事なんだから。」
「それが困るのです!もはや脅しや脅迫を通り越してます!」
「そ、そう?」
「この世界の進化を止める、大罪人になりたくありません!!」
必要以上に追い詰めていたようだ。
結局、エンが喋ったことまで契約魔法で縛ることになった。
結局バラしちゃいました。
契約魔法があるからこそのバラしでしたが。
もしバレてたら、100年どころか500年くらい引き籠る気満々のアボでした。
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