78話.戦闘授業はテンプレの予感?4
貼山靠って、漫画や動画だと吹き飛ばすイメージが強いんですけど、それって別の技か、出来損ないの技なんじゃないかと思っているのは私だけでしょうか?
本来 震脚を使って、そのエネルギーを背中から重力の方向(つまり地面へ)叩きつける技だと認識していたのですが。。。
78話.戦闘授業はテンプレの予感?4
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貼山靠。
何故エンはこの技を放ったのか、ちゃんとした理由もあった。理由と言っても単にギャンクライの拙い“闘衣”では、突きを放っても貫通してしまったり手刀でも切り裂いてしまうからだ。つまり点や線の攻撃では殺傷能力が強過ぎる為、面の攻撃である『貼山靠』を使った。
まあ本音のところでは、手加減は出来るけどギャンクライが相手ではうっかり殺してしまうかも知れないし、一撃で終わらせるつもりも無いからである。
ギャンクライは、混乱していた。自身の渾身の上段からの一振りは、確実に生意気な生徒の脳天を捉えたはずだった。しかし結果はどうだ?なぜか強烈な衝撃を喰らい、地面で這いつくばっている。
何がどうなってる?全身の痛みは我慢出来ない程でもない。何とか立てそうだ。授業の初日から無様な姿を晒すことは今後にも影響する。急いで立ち上がらねば!
ガクガクと震える膝を何とか奮い立たせ、木剣を杖代わりにして立ち上がろうとした際、正面に斜に構えている足元が見えた。
何故、ここに立つ者がいる?ここには誰がいた?混乱する思考を整理しようとする前に木剣を払われ再度、支えを失った身体は木剣を手放し地面へと膝を着いた。
エンは「そういえば先生が武器を持っているのに私は持っていませんでしたわ」と言い、ギャンクライの手放した木剣を拾う。アボはニコニコとしながら止めない。
ガースは、このままでは危険とエンを止めようと声を掛けようとするも、その前にエンの奇妙なセリフに動きを止めてしまった。
「見よ!大海原で鍛え上げたこの技を!『クズの一本釣りー!!』」
エンがギャンクライの襟の部分から木剣を差し込んで言葉の通り、一本釣りの如くギャンクライを釣り上げた。
まるで釣り人の竿の様に、真上に振り上げられた木剣は、ギャンクライを釣られたカツオの様に天高く放り投げられ、再度地面へと激突。
あまりの力業にガースも唖然とし、天高く飛んだギャンクライを目で追うだけだった。
「人って空、飛べるんだねー。」
「いやいや、普通飛ばないからね!」
「でも『クズの一本釣り』は技名としてはどうなんだろ?」
「疑問を持つとこ、そこ??!!」
「アボット様?…私のネーミングセンスに文句がお有りの様ですね?」
ゆっくりと振り向いた、笑顔のエンの背後に般若が見える!そしてエンが一歩アボへと足を踏み出したとき、ギャンクライがアボとエンの間を塞ぐかのように、落下してきた。
「邪魔だ生ゴミ。」
と、木剣で掬うようにガースのいる場所へ放り投げる。怒りによって授業のことなど忘れてしまったかのようだ。投げられたギャンクライをガースは慌てて受け止めると、暴走するエンを止めようと必死に声を掛ける。
「まてまてまて!少しは落ち着け!まだ授業は始まったばかりなんだ!」
「ではこの怒りをどうしろと!」
「授業そっちのけで怒るポイントがそこ?!普通はギャンクライ先生に怒ってるとこじゃないの?!」
「タイガさんはこの尊いネーミングを侮辱された怒りが理解出来ないようですね。」
「ギャンクライ先生の存在、無くなってない?!」
「ま、アボット様には後ほど、ゆっくりとお話ししましょう。それではギャンクライ先生、授業を再開しましょう。」
「いやいやいや、急に授業に戻るの?ってか先生、気絶してるから!救護班をすぐに呼ぼうよ!」
「あの程度で救護?それならば先にあの生徒の手当てを優先すべきでしょうに。」
「じゃあ僕が先生を起こしてあげよう。救護の知識もあるし多分、大丈夫。……きっとね。」
アボットがニコニコしながら、手に纏った“闘衣”でギャンクライへと、にぎにぎしながら近付いてくる。
「マジでシャレにならん。」
ガースが流石に見捨てておけないと、カオスとなった現状に救世主として降臨。ギャンクライは救護室へと運び込まれ、アボ達の暴走を止めた。
「なんか、どっと疲れが押し寄せてきたが、とりあえず授業を再開するぞ!まずは近くの者でペアを作れ!そしたら交互に木剣で攻撃と防御を繰り返すぞ!
その際、攻撃の担当はどこに攻撃を当てようとするか、防御の担当に知らせてから行うように!それではペアを組んだ相手から始めろ!
特に“闘衣”出来なくても構わない!が、魔力の流れを感じれるように意識しながら行うように!」
「私達3人ですけどペアはどうします?」
「今のエンリと組むのは怖いからタイガ君と組む!」
「俺の意思は関係なし?!」
「では私は適当に探しますわ。」
と、さっさとパートナーを探しに出掛けてしまった。
「じゃあタイガ君始めよっか。どっちから攻める?」
「ほんと、強引だよな。まあ強そうな人と組まされるより、アボットの方が安心できるか。」
「まだ魔力循環も覚束ないタイガ君がうっかり強化系の子と組むと、木剣ごと破壊され兼ねないしね。」
「なにそれ、普通に怖い!」
「事実だし。」
タイガと話しながらエンを探すと、先ほどギャンクライに殴られた生徒と組むのが見えた。
アボとタイガが組んで何度か攻防を繰り返していると、他の組んでいる生徒が、こちらへやってくる。
「よう、ペアを交換しようぜ。」
ニヤニヤしながら寄ってくる生徒に悪意の笑みを感じたタイガは小声でアボに問いかける。
「なんか雰囲気悪いヤツラなんだけど?」
「大方、ガース関連で不満を抱えてるんだろうね。」
「ん?どういう事?」
いまいち理解出来ていないタイガはアボに再度問いかける。アボがその問いに答えようとした時、近寄ってきた生徒が言葉を被せてきた。
「あんたはガース先生の知り合いなんだろ?色々薫陶を受けてるかも知れないし、俺にもご教授してくれよ。」
その棘のある言葉の雰囲気でタイガも理解したようだ。
「い、いや俺たち、まだ慣れてなくて、アボットとゆっくり訓練するから……」
「グダグダ言ってんじゃねえよ。ガース先生と仲良いからって生意気なんだよ!」
決してタイガが仲良いワケではないのだが、とんだトバッチリである。アボはニコニコしながらも、さてどうするかと頭を悩ませていると、どこからか木剣が飛んできて近寄ってきた生徒2人に命中。
「いてっ!」
「ごめんなさい。木剣がすっぽ抜けてしまいました。」
安定のエンさん登場である。
「なにやら揉め事の様ですが…私、またうっかりすっぽ抜けてしまうかも知れません。その際にはご容赦くださいね。あら、また木剣が。」
木剣を拾い、再度木剣を投げつけ、生徒の脚の間に刺さる。先ほどのギャンクライへの暴行?を見ていた生徒2人は、震えあがり、しかしアボには「覚えてろよ!」とヤラレキャラ専用の捨て台詞を残してその場を去って行った。
あの様子じゃ、また絡まれるよなーと暢気に思っていると、怯えた様子のタイガがエンに向かって恐る恐る聞いてきた。
「…エンリさんって物理特化なの?」
「見ての通りですわ?」
「何故に疑問形?!」
刺さった木剣を拾い、颯爽と元の場所へ戻るエン。そしてタイガは、そんなエンを見ながらアボに問いかける。
「ひょっとして…俺の周りってかなりヤバい人ばっかり?」
「異世界に比べたら、少々過激かもね?」
「少々??」
「僕は人畜無害だけど。」
「それは無い!」
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「ルトさん、フラついてますけど大丈夫ですか?少し休憩します?」
ルトとは、エンとペアを組んだ生徒だ。しかしその顔は、眼鏡もひしゃげており、顔面も内出血が広がっていて中々のケガのようだ。
「すみません。少し、休んでも良いですか?流石にあの時は油断しておりました。」
エンはルトを支え、ガースに視線を送り休憩させる意を伝える。ガースも理解したのか、軽く頷きアゴで脇の方へ行くよう指示した。
「申し訳ありません。迷惑をお掛けしてしまって。。。」
「今更でしょう?」
「…やはりバレていましたか。」
エンはその問いに答えず、逆に問うてくる。
「このまま隠し通すおつもりですか?」
「…出来れば。せっかく身分も関係なしに受けれる授業ですので。」
「すぐにバレると思いますけどね。」
「まあバレるまでは楽しみたいので。」
「では、貸し一つですよ?」
「ん?」
何の貸しなのか理解出来ないでいると、エンの手のひらが淡く光り、赤黒くなった頬を優しく包み込んだ。
「…癒しの光。」
「この授業が終わったらお昼でしょ?その顔でアボ様にお会いしたら、すぐにバレてしまいますし。」
「…助かります、エン様。これは高い借りになりそうですね。」
授業が終わる頃、ルトの頬の腫れも引いて内出血の跡も残らず、治療がなされていた。
ルトって誰なんだろーー(棒)
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