73話.アボの学園風景
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73話.アボの学園風景
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翌日、早速授業が始まった。最初の授業は基礎教科。特に覚えることも無いと思っていたが、こちらの世界に来たばかりの新参者だ。基礎も何も土台が無い状態なので、素直に授業を受ける気持ちである。
基礎教科は、担任のサングが受け持つようだ。今日は初日という事もあって、初等育成で習ったお浚いって感じの授業から始まった。
しかし基本的な算式の復習は向こうの世界でいう小学生の低学年の内容で、今更感が強く、真面目に受けている他の生徒に対してここまでレベルが低いの?と頭を抱える事態に。孤児院から来てもらった従業員の方がよっぽどしっかりしている印象だ。
眠たくなる授業を何とか乗り越え、次は生産技術の授業。名前からして、何かを作る授業だとは思ったが、最初は授業で使う道具を保管する『道具箱』の作成から始まった。
「まずは材料の木の選定。正目と巡目の違いから~…」
この手の講師の話は意外に為になる。年輪の方向から気の反りを考えながら道具箱の外側、内側の向きを確認する。家具の作成の基礎にもなるし、自分で作る道具箱というのも、愛着も出るので、教育としても良いんじゃないだろうか。
この世界にもカンナがあるようで、木材の表面を削る作業は薄く繋がったカンナ屑が、長く透ける様に削れると、何とも嬉しくなる。
隣で真顔のエンが、見事なカンナ捌きで1m程のカンナ屑をしゅるるるるーっと作り出す姿が何ともシュールだ。
説明を受けながらの製作は時間の経つのも早く感じ、あっという間にお昼となった。
「アボ様。お昼はどこか中庭の様な所で頂きます?」
「ん?食堂か、ここ(基礎クラスの教室)で良いんじゃない?」
「私たちのお弁当は、皆さんには刺激が強すぎるかと。。。」
「あー、なるほど。目立つよね、きっと。ちなみに今日のお弁当の中身は何?」
「今日は無難にサンドウィッチです。」
「だったら、そこまで悪目立ちしないんじゃ?」
「ですが、タイガさんやキラリさんがいらっしゃると……。」
「騒ぎ出すのが目に浮かぶ…。」
「とりあえず、基礎クラスに戻ろっか。」
生産技術の作業場から基礎クラスの教室に戻る途中、食堂を覗いてみる。案の定、肉とサラダとナンの様なパンのセットと野菜炒めのセットしかない。
こちらの食費も王国の厚意で安く提供してくれているが、何とも味気ない食事風景だ。こちらの世界では、これがデフォルトなんだけど。
アボとエンが教室に着くと、タイガとキラリが一緒にバゲットをかじり、そらは自分の席で静かにパンを食べていた。
「アボットー。遅かったな!一緒に食べようぜ!」
「もう食べ始めてるくせに。」
「細かい事言うなよ。久しぶりの授業で腹が減っちゃってさ。」
「そらさんとは一緒に食べないの?」
「何か静かに食べたいってさ。」
「エン、俺たちもそうしよう。」
「ひでぇ!」
すでにエンは自分の席でお弁当を広げ、準備を済ましていた。アボも体よくタイガのお誘いを断り、エンと一緒の席に座った。
「「いただきます。」」
まずは卵サンド。白身のつぶつぶ感と黄身が程よく混ざったマヨネーズが何とも言えない。美味しい。ロールパンに挟む卵サンドも好きだけど、シンプルな食パンの卵サンドも捨てがたい。
次のハムカツサンドを頬張ろうとした時、教室の外でガヤガヤと騒ぐ声が。
「アボット殿!」
また面倒臭い奴が来た。
「セガルルト様?!」と教室で叫びにも似た声が聞こえたが、それも仕方がない事だろう。何せ平民のクラスに第2王子が来訪したのだから。
「……。」
そして、無視する訳にも行かないが、口の中にはハムカツサンドが。仕方がないので急いで咀嚼し、立ち上がって頭を下げる。
「ここは学園だ。しかもお昼時にいきなり押しかけたのはこちら故、頭を上げて貰えぬだろうか?それと、席を共にしても?」
「………。」
思わずジト目になるのを無理矢理抑える。みんながいる前では不遜な態度や断ることが出来ないのが分かってて言ってやがる。
「…どうぞ。」
「食事中に済まないな。何分、公務もあるので中々時間が取れなくてな。」
ちょっと前に、わざわざお店までパンを買いに来てたくせに時間が無い?笑える冗談だ。
セガルルトのお付きがカゴからランチョンマットやナプキンなどを取り出し、食事の用意をしれっと行う。
「今日は私も其方たちの店のパンを持参……」
言葉の途中で、俺たちのお弁当の中身を見て言葉が止まった。
「…何か?」
「い、いや。見たこともない物が並んでいると思ってな。」
「普通にパンに色々挟んでるだけですよ?」
「その中身が問題なのだが。。」
「一つくらいなら食べてみます?ハンバーグが挟んだやつなら、腹にも貯まりやすいし受けが良いかな?」
俺もしれっと目の前にあるバーグサンドに手をかざし、手品の様に複製してからセガルルトのお付きに手渡す。一応、第2王子だ。毒見も必要だろう。
お付きの者のチェックを済ませ、セガルルトが一口頬張る。堅苦しくナイフトフォークを使わない所が楽で良いよね。
「!!」
驚きの表情。某グルメ番組の様に、実況中継の様に「味の感想」を言うかと思った。まぁ食に関して、そこまでのボキャブラリーがこの世界には存在しないのだから当然なんだけど。
「…これは肉なのですか?」
「そだね。ひき肉…、お肉を細かく刻んで固めたハンバーグってやつ。元々は固いお肉を柔らかく食べるためとか、切れ端の肉やくず肉をどうにかして食べれる様にしたのが最初だったかな?諸説あるけど。歯が弱くなった人でも気楽にお肉が食べられるから、便利な調理だよね。」
「ちなみにこれのレシピは……?」
「肉の下処理が出来ないと美味しくないから無理だよ。」
「それこそ畜産を始めませんと、こういうお肉は手に入らないですよ?」
「畜産……。それは難しい物なのでしょうか?」
「魔獣の脅威が無ければ。広大な土地で数年掛けてやっとって感じじゃない?今の状態じゃ、その広大な土地を管理・警備するだけの人件費とか捻出できないでしょ?膨大な赤字になってまで作り続けれるものじゃないよ。」
「たしかに。いや、でも、しかし…諦めるにはとてもじゃないが美味し過ぎて。」
「以前にフーヴォ様が下賜されたビスコッティにしても、メープルシロップの採集が難しい現実は把握してますでしょ?木の樹液を取ってくるだけでも魔獣の脅威は恐ろしいんです。
ましてや、土地を構え、畜産をしようとなると、どれだけ警備の人件費が掛かるか。その前に人が集まるかも分かりませんけど。」
「諦めるしかないか。」
「それか魔獣を解体処理できる施設ごと移動しながら狩猟出来るのならば話は別ですけどね。」
「それなら……可能か?いやしかし、それにしたって費用が掛かり過ぎる。」
「専門の解体処理できる職人を伴って狩りが出来れば可能ですけど、王都や街全体に行き渡すくらいの量を確保するのは難しいでしょうね。」
「戦闘実習で魔獣を狩る機会があったら、解体の仕方を教えましょうか?エンリが。」
あくまでもエン頼りのアボ。血抜きや内臓の処理など、アボには絶対にやる気も無い。魚を捌くくらいは出来るけど。
「戦闘実習はだいぶ先ですので、機会があればの話くらいで聞き流して頂ければ幸いです。それよりも早めに食べ終わりませんと。タイガさん達が突入しようとしています。」
エンに言われ視線を向けると、タイガやキラリの目がサンドウィッチにロックオンしているのが分かった。
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