69話.開業に向けて~ お店の説明
切りの良い所が分からず、中途半端な文字数になってしまいました。
69話.開業に向けて~ お店の説明
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従業員となる5人と渡り人との顔合わせを済ませ、『フーヴォの通う店』に向かった。ちなみに身辺警護の人員は、希望が多すぎて取りまとめることが出来ず、暫定的に近衛の騎士2名が日中は来てくれることになった。
店の前まで来ると、豪華な馬車が2台止まっている。何故かパウルルトとセガルルトがお付きの者達と一緒に来ていたようだ。
「…国王様に第2王子。近隣に迷惑が掛かる。」
「奇遇だの!巡回に市内を回っておったら、セガルルトと合流しての。何やら期待に胸膨らませる出来事がありそうで一緒に来てしまった。」
何が『来てしまった』だよ!偶然じゃないだろ、絶対!でもまぁ試食してもらって、この世界の住民に感想を聞くのも悪くない。
「とりあえず、馬車を何とかしてください。こんな豪華な王族専用の馬車が店の前で停車されてたら、オープン前なのに無駄に目立ってしまうので。」
「承知した。」
パウルルトがお付きの者に一言いうと、すぐに御者が馬車を移動させてくれた。
「それにしても、この様子ではまだ店を開けないのではないか?連れてきた者達は人工として使うのか?」
確かに、目の前に映る店舗は、購入したままの古びた建物しかないのでそう見えてしまうのは仕方がない。
「とりあえず、まだオープンしてないので、目立ちたくなかったから、一種の目くらまし?の様な結界を敷いてあるんで。このまま歩いて、こちらに来てください。」
皆が店舗の区画に一歩足を踏み入れると、一瞬言葉を失ったように口を開けたままで固まった。
それも仕方がないか。足を一歩踏み入れた途端、古びた建物が“一瞬で”どの国でも見たことのない異国の建物に変わったのだから。
建物は、道路から3mほどさがった位置に立っているが、店の入り口部を除きプランターが置かれ色とりどりの花が咲いている。これはシャーヤとコウキの力作であるが、アボも種を提供し時間経過を加速させ、咲き誇った姿に変身させている。
そして1階部分の全面ガラス張りの壁面。こちらの世界では、ここまでの透明度を誇るガラスは存在していないので、それへ目を引くであろう。店内はロールスクリーンによってみることは出来ないが、期待感が増してくる様子だ。
一行はガラス扉を開けた途端に、また動きが止まる。特に渡り人3人に至っては、いつの間にか涙を流していた。
店内から漏れ出でる『焼き立てのパンの香り』。もう口にすることが出来ないと諦めていた文明の香りが目の前にあるのだから。
「夢じゃないのか?」
「凄い種類のパンが目の前に…」
「ショーケースの菓子パンも凄い!」
3者3様の驚きも去ることながら、国王も含め、こちらの世界の住民も驚きでいっぱいだ。飲食物を販売する店とは聞いていた。しかし見たこともない形状の食べ物は、賢獣の恩恵とはいえ“店いっぱい”に溢れんばかりの量が、香しい匂いと共に暴力的に脳に訴えてきている状態なのだから。
「…これは、ここまでの物とは思わなんだ。。。」
やっとのことで言葉を発した国王。まるで宝石を愛でるかのように店内の様子を眺めている。
なんとか立ち直り全員が店内に入ると、香りを楽しみながら狭い店内を見て回る。アボは倉庫に向かう振りをして、バレない様にストレージから椅子と小さいサイドテーブルを何脚か取り出し、店内に戻って国王やセガルルトを含め、全員を一旦座らせた。
「とりあえず、改めて挨拶を。私はアボット、隣はエンリ。賢獣様よりこの商品類の販売の許可をもらった者です。
当面の間は、私とエンリの2人で商品の供給・製造を担います。皆さんにはお客様に商品の販売・品出しをするのがメインのお仕事になります。いずれ慣れてきたら製造もお任せするかもしれません。と、ここまでは王城でお話した通りですが、何か質問は?」
一応、国王とセガルルトには偽名を使う話は前もって伝えてある。
「特になければ次に進みます。こちらにある商品を販売して頂くのですが、お客様に説明を求められた場合、知らなければ説明も出来ませんので、今日からオープンまでの間に全ての商品を食べ、自分なりにお客様にご説明出来る様になってください。質問は?」
賢獣の恩恵である食べ物を誰よりも先に食べる事への、歓喜と恐れ多いと思う気持ちがごちゃ混ぜになった心情の子もいれば、国王たちの様に羨ましがる者、渡り人の様に純粋に喜ぶ者、それぞれだ。
「言っておきますが、これだけの量です。何種類も食べなければいけませんので……大変ですよ?とりあえず定番の食パンから順に試食していきましょう。」
「その前に。アボット様?」
「あぁ、そうか、先に皆さんにお渡ししておくものがいくつかあります。まずは皆さん大変優秀で記憶力も良いとは思いますが、忘れてしまうことがあるかも知れません。ですのでメモ帖と筆記用具をお渡しします。これから食べるパンの特徴や、仕事内容など、忘れない様にメモして覚えましょう。」
っと言って、1人1人に手帳の様なメモ帳と万年筆を手渡す。国王やセガルルトが欲しがっているような目をしているが無視だ。
「皆さん、文字の読み書きは大丈夫でしたよね?自分なりの書き方で結構ですので、しっかりと活用してください。
それでは試食していきましょう。」
壁面の棚にある3斤用の食パンを取り、ショーケース横のカウンターで切り分ける。ちょっと厚めにきり1/4にカットしたやつをお皿に乗せて並んでいる皆に手渡していく。
しれっと国王やセガルルトも並んでいやがる。しかたがねぇ、ほんとは嫌だが分けてやるよ。
今まで食べていたナンの様なものと比べ、ふんわりとした食感と美味しさは、驚きと歓喜が交互に押し寄せ、目を白黒させている様が面白い。
「食べながらで良いので聞いてくださいね。今食べているのが食パンの3斤サイズです。ちゃんと味や食感を確かめてくださいね。
ちなみにこのまま食べても美味しいですが、炙ってカリカリにしたり、ショーケースにあるパンのように、何かを挟んで食べるのもおススメです。
渡り人の方々は慣れたものですよね?賢獣様からお聞きしましたよ。渡り人の居た世界ではこのような食べ物が普通に売られていたと。」
泣きながら食べていた坂上タイガが「懐かしいっす!」とお代わりの仕草で皿を突き出す姿が笑える。
「ペース配分は大丈夫ですか?まだまだ沢山食べて頂くのですから。」
周囲の子たちも笑っている。俺が次々と、色んな種類のパンの説明と試食をしている間、エンとヤン、ランには従業員の着る制服を選んでもらっていた。
もちろん『メイド衣装』にはしない。お貴族様専用のお店じゃないし、メイドさんと勘違いされて、あれこれ貴族に指図される被害を無くすためだ。
坂上タイガがいるから男性用の制服も用意しなければならない。…面倒だ。いっそのことタイガちゃんデビューしてもらおうか?
そして全部は食べきれないので一旦、休憩。
「皆さん、お住まいについては、今までどうされてましたか?渡り人の3人については、王城にいらっしゃったのは聞いていますけど。」
大人?といっても、この国での成人である15歳前後の子が代表して答える。
「私共、フーヴォ様の王宮果樹園管理出身の者は、果樹園の離れにある使用人専用の宿舎に住んでおりました。」
「じゃあ、果樹園からこっちに就職した形になるから、ここに住んでもらうことになるのかな?」
「そのようにお聞きしております。」
「1人部屋、2人部屋とか希望があったら言ってください。出来るだけ希望に沿った形で考慮しますので。」
「……」
あれ?黙っちゃったぞ?
「…そのような好待遇でよろしいのでしょうか?」
「どういうこと?」
「私共は基本孤児出身の者達ばかりです。今までもみんなで雑魚寝に近い状態でしたし、専用の部屋を頂けるなんて。。。」
「あぁ、そういうことか。勘違いされている方もいらっしゃるようですので、説明しておきますね。この店は『福利厚生はしっかりと』が基本です。
お休みの日や労働時間、御給金も後で、書面に記したものをお渡ししますのでちゃんと確認してください。
男性の方もいらっしゃいますので1人部屋は当たり前と考えてください。まだ幼い方もいらっしゃいますが、不公平を無くすために皆さんにも1人部屋を用意しています。
ただお1人だと、慣れない環境で寂しくなる方もいらっしゃるかもしれないと思い、2人部屋でも構わないといったところですかね。
休憩が終わりましたら、お部屋を案内します。それを見てから決めて頂いても結構ですので、ゆっくりと決めてください。」
住居についてはプライベートな空間でもあるので、国王たちには“お土産のパン”を持たせて、お帰りして頂いた。
そこまで広くはないが機能的なリビング、キッチンお風呂に感激し、個人部屋には恐れ多いと恐縮されたが、小さい子2人と、15歳くらいの子ともう1人の子(実は姉妹だった)が2人部屋。ベッドを2段ベッドに交換して対応した。
もう一人の18歳くらいの子は彼氏がいるとの事で、結婚するまでの仮住まいとして1人部屋(連れ込み禁止)となった。渡り人3人はそれぞれ個室。
照明のスイッチやお風呂、キッチンの使い方などに驚いていたが、細かい説明については渡り人たちに任せた。
その中でも、皆に(特に渡り人には感謝されたが)好評だったのがトイレだった。洗浄ウォシュ〇ットって偉大だよね。。。
いよいよ次話でオープン!そしてその次で学園に入学です。
続きが気になると思って頂けた方は
是非★★★★★のエナジーをお願いします。




