64話.閑話王子ガララント3
ガララントの回なのにひと言も言葉を発することなく、
閑話が終了する話。
64話.閑話王子ガララント3
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ガララントが今まさに意識を失う頃、救護室にフーヴォ、エン、アボが入室した。腕輪によって魔力も暴走し、精神汚染が目に見える程、禍々しい様相を出している。
「…これは酷いね。俺でも精神汚染が見えるくらいだし。さっき会ってから、時間もそんなに経ってないのに、ここまでの状態になったってことは、何かトリガーを引いた?」
「禁止されてる行動か、ワードですかね?」
「でも魔石を使ってないから、これは魔道具に類するものと言えるのかな?」
「魔道具…、いえ、呪具の方がしっくりきます。正確には携帯型魔法陣と言ったら良いのでしょうか?それとも、核のない簡易ゴーレム?」
「魔石を使ってないから、腕に嵌める事で起動する仕掛け、かぁ。」
言うならば、スイッチの無い懐中電灯の様なものか。電池を入れ蓋を閉めたとたんに光り出す、そんなものかと推測する。
「でもこの呪具でしたら、アボ様にお任せすれば大丈夫ですね。」
「印象悪すぎて、助ける気にはならないけどね。」
例え王族であろうと、気に食わない者を助ける義務も無いしと、王国民でもないアボにとっては、まさに『対岸の火事』である。
流石に宮宰が苦言を呈する。
「助ける御力があるのに、死に瀕する者を放って置かれると言うのですか?」
「…何故、助けなければならないの?」
「ですから!死に瀕する者を目の前にして、何とも思わないのですか!」
「何とも思わない訳じゃないよ?ただ、貴方が思う想いとは違うってことは確かかな。」
「違うとはなんですか?!あの苦しんでる姿を目の当たりにして!」
「だからと言って助ける義理も無いし。勘違いしてるかもしれないから言っておくけど、俺は“聖者”じゃないんだよ。」
「!!!」
「今まで邪魔ばっかりされて迷惑掛けられてるの!それも俺じゃなくエンに対して!それなのに何で助けて当然みたいな口調になるかな?何も知らないで、ガタガタ言うなよ。
それに今日は通訳としてここに来てるの。治療士として来てるワケでもないし、国王さんもこの呪具の情報共有として救護室に案内したんだよな?違うか?
そもそも、第1王子達がこうなったのは誰のせいだ?本人のせいでもあるし、大きな枠で言えば「王国」の問題だろ?こっちに振ってくんなよ。」
こう言われると、当然のことながら何も言えなくなる宮宰。ものの頼み方、言い方を気を付けていれば、アボもここまで邪険にすることも無かったのだが。
「アボ殿、宮中を取り仕切る者として、幼き頃より接してきたガララントを何とか救ってやりたいと思う気持ちから、先走ってしまったのだ。その辺で許してやってくれ。」
「許すも何も、どうでもいい。この呪具が賢獣相手にも使われる手段となり得るかの確認のために来ただけだし。この呪具の発動状態も見れたし、対策は十分に可能ってことが分かった。他の賢獣にも、対策を含め通達しておく。それでこの件については終わりだ。」
「アボ様?」
「ん?エンは助けたいの?」
「報酬次第ですかね?」
「……そうか、まだ交渉もしてなかった。」
「条件次第では助けて頂けると思って宜しいのでしょうか?」
「そだね。エンの希望はある?」
「…アボ様のお手を煩わすのですから、それなりの物を所望いたします。」
「具体的には?」
「渡り人の件もありますので、彼女たちの働く場を作れれば一番良いかなと。」
「ん……。じゃあ3人の腕輪を腕を切らずに外す対価に、ある程度の箱、…空き店舗を。希望の間取りもあるから、出来れば更地か、取り壊しても良い物件を見繕ってもらえる?」
「サービスで3人共、傷ついた魔力経路も修復しましょう。」
「先に行っておくけど、賢獣の恩恵を使います。店は混むし行列も出来るでしょう。近隣に迷惑が掛からないよう配慮した区画をお願いね。」
アボの爆弾が投じられた。賢獣の恩恵を賜った商品を販売する店など、混まない訳が無い。余程の規制を掛けても近隣に影響を与えるのは目に見えている。
「……ムチャを平然と言われる。ちなみに何の店を開こうと言うのだ?」
「当面は食べ物の販売かな。」
「食べ物!しかし販売とな?調理したものを提供するのではなく、販売のみとするという事だろうか?先のビスコッティの様な。」
「最初はね。あの3人から食事の改善が入ってたから、王国自体の底上げも含めて徐々にね。」
渡り人3人に切にお願いされたため、エンと念話で話し合っていた。それならいっその事、食べ物を提供する店を自分たちで提供させればどうかとなったのだった。
もちろん“働かざる者喰うべからず”の精神で扱き使うつもりである。しかし、最初からレストランの様なものだと、接客などマニュアルも無いし不安が残るため、まずは対面販売のみの店を開業しようと思っている。
「貴族区画だと無駄な軋轢が起きるかの?」
「であれば商業区画では?食べ物の販売ですので、客層、客単価にも依りますが…。」
「客単価は平民が頑張れば食べれるくらいにするつもり。ほんとは安く売りたいけど、売ると競合相手を潰しかねないし。恨みを態々売ることもないしね。」
「転売目的の対策は?」
「賢獣様の恩恵を賜る商品ですから十分に考えませんと。」
「真似する分には構わないけど、転売かぁ。とりあえず、個数制限しか思い浮かばないや。」
「まぁ、そこら辺は開業までに追々考えるしかないだろう。」
「じゃ、そんなところで。」
アボが言った瞬間、カコンと何かが床に落ちた音が鳴った。もちろん腕輪が3人の腕から落ちた音だ。
「!!!」
どうやって?3人の側に寄ったでもなく、会話の最中にいきなりである。国王も含め、誰も反応も出来なかった。
流石にこの行為?治療?は規格外である。もちろんアボの転移魔法によって外されたのだが、誰も分からぬまま、腕輪の脅威は去ってしまった。
「それでは、傷ついてしまった魔力経路の修復を。フーヴォさん、貴方いつもタダ飯食べてるのですから、手伝いなさい。」
「ホーーホーー…(それを言われると逆らえないのじゃ…)」
「まあまあ、今度お店が出来たら試食も兼ねて食べに来ても良いからさ。」
「アボ様は甘やかし過ぎです。きっと毎日押しかけるか、居付いてしまいますよ?」
「容易に想像できてしまう所が“残念”賢獣だよな。」
何気なく喋ってる間にも、治療が生されている。救護担当の宮廷魔導士たちも開いた口が塞がらない。これほど精密かつ繊細な治療を無駄口を叩きながら行っているのだから。
流石は「賢獣様」と、その御業を目に焼き付けようと必死になっている。
そうして3人の治療は、瞬く間に終了した。
次回より、異世界学園編です。
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