63話.閑話王子ガララント2
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63話.閑話王子ガララント2
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3人が救護室に運ばれた後、一通りの検査を行った報告を受け、執務室では、重苦しい雰囲気でパウルルトと宰相、宮宰、外務大臣が執務用のデスクの前のソファーに座っていた。
「それで呪具の解析はどうだ?」
「無理矢理の取り外しはおススメ出来ませんね。体内の魔力回路が暴走して、良くて廃人。最悪は死も。
まぁ、腕ごと切り落とすしか方法はありません。」
「厄介なものだな。」
「奴隷紋が付与されていないのが、せめてもの救いかと。」
「そこが腑に落ちん。傀儡として操ろうという意思が無いということだろう?何故だ?理解出来ん。」
「ただ、この腕輪はかなりの技術で作られています。なんせ魔石を使わないで効果を出していますから。」
「どうやって機能しているのだ?」
「腕輪を付けた本人の魔力を使って起動するようです。」
「可能なのか?」
「実際に機能している現物が3つもございますので。ただ、これは試作品の可能性があるとの報告もございます。3人共腕輪の魔力回路が、微妙に異なる形での働きが見られております。3人一人一人にカスタマイズさせたのではなく、機能させるための試行錯誤の特徴が見られるとの事です。」
「…ふむ。奴隷紋との違いについては?」
「一番の特徴は、思考能力の誘導でしょう。強制的に従わせるのではなく、自らがそう思うように“仕向ける”と言った方が良いでしょうか。
行動・身体を縛るのが奴隷紋。思考・心を誘導するのがあの腕輪。」
「そんなことが可能なのか?」
「基礎理論は、ゴーレム作成と魅了系の魔術を基にしているようです。ここまで突飛な考えは禁忌に近いものがありますけど。
下手な洗脳よりも質が悪い代物です。魔石を使わず本人の魔力しか使っていませんので、通常の魔力探査・検査にも引っ掛かりませんし。」
「で、容疑者とその呪具作成に関わる者の選定は?」
「やはりホランド公国のガゼリ侯爵が怪しいです。しかし我が愚息があの状態ですので聞き取りも難しく、ガララント様やバッカスも同じ状態に陥ると問題がありますから確認は遅々として進んでおりません。」
「ガゼリ侯爵の入国記録は?」
外務大臣が記録の紙を見ながらパウルルトの問いに答える。
「ガブル伯爵領への入国記録が残っております。ただ、ガゼリ侯爵は商取引で度々入国しておりますので、何とも…」
「取引内容は?」
「表向きは犯罪奴隷の買い付けと、武器の取引ですね。」
「ガゼリ侯爵領は鉱山での産出が盛んであったか。」
「今は、シャーヤ様の守護が無くなりましたので、武器取引が目立っていますが、今のところ怪しい動きと断ずるには至っておりません。引き続き、間諜には探らせるよう指示しております。」
「うむ。…しかしこのような技術が、まだ開発途中というのも気掛かりだ。今なら、最悪“腕を切り落とせば済む”がこの先それ以上の、それこそ賢獣様にも通用するような代物が出来上がってしまったら…。」
「ちょうど、フーヴォ様とエン様、アボ殿が登城されております。情報の共有とご助言を賜っては?」
「そうだな。至急連絡を。」
「はっ!」
宰相が返事をし、自ら連絡を取りに席を外す。
「宮宰よ。王妃の様子はどうだ?」
「相変わらずですな。」
「厄介なものだな。」
同じ言葉を繰り返し、パウルルトは眼を閉じた。
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救護室の一画。ガララント達3人はベッドに横たわり検査を受け続けている。宰相の次男、ジェームスと騎士団長の嫡男であるバッカスは拘束ベルトに縛られた状態だ。
ジェームスは狂ったように暴れ、手が付けられない状態だ。バッカスは日頃の訓練の賜物か、暴れるまでには至らないが、必死に耐えている様子だが、限界が近いのか、その表情は死相が見えているように見える。
「何がどうなっている!?ジェームス達は元に戻るのか?!」
誰も返答は返ってこない。宮廷魔導士から漏れ聞こえる話の内容では、どうやら私たちは精神汚染を受けているらしい。その事実を聞いた瞬間、頭が割れる様に痛み、何も考えられなくなる。しかし、ジェームス達ほどの状態にはならずにいる。
これは幼少からの王族教育、危険対処訓練の成果なのか、私の持つ“魔法適性”のおかげなのかは分からない。
しかしこれはエーバー王国へ対する攻撃なのか?私個人へ対する攻撃なのか?思えば、第1王子としては、好き勝手なことをしていた。それが許されていたのも、私の持つ、希少属性である“魔法適性”と第2王子のセガルルトの存在、そして王妃である母上のおかげだ。
元々、王太子となるつもりも、ましてや国王になるつもりもなかった。都合良く2歳年下のセガルルトは優秀だったし“魔法適性”のおかげもあり、王族教育に雁字搦めになることも無く、好きな魔法の訓練をメインにやって来れた。
母上は私の“魔法適性”を王としての資質と買ってくれていたが、それゆえに甘く、大抵のことは揉み消してくれた。
しかしある時、王位に就く気が無い事を母上が知られてからは、関係性が悪くなった。母上は何故かセガルルトではなく、私に王位に就いてもらいたい様であった。別にセガルルトは側妃の子でもないし、同じ腹を痛めた子であるのに。。
何かと立太子に向けて、後ろ盾となる勢力のある婚約者を見繕ったり、色々と画策してどうにか私を将来の王にさせるべく奔走する姿は、やがて私の反抗もあってかどんどん過激になって行った。
これは母上に逆らった罰なのだろうか?
そんなことを考えていたら、余計に痛みが走り、もはや考えることも出来なくなってきた。
遠くで誰かの声が聞こえてくる。意識が遠ざかる瞬間に、あの“女神”エン様の姿が見えた気がした。
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