5話.こんにちわ異世界。って言うとでも思ったか!クソ野郎
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5話.こんにちわ異世界。って言うとでも思ったか!クソ野郎
「おぉ!これが異世界かー。自然豊かな景色、目の前には涎を垂らした象よりデカい生き物。フザケンナこのクソ野郎!」
異世界に着いていきなり命の危機にならない配慮はどこ行った?!敵が動く前に、全力ダッシュ&短距離転移!上空1000mとか海の中ではなかったけど、死の危険を感じる度合いはさほど変わらないと思うのは俺だけだろうか?どうせならヒト族の住んでる村か町の近くに転移して欲しかった。
もちろん、最初はヒト族の町の近くに転移するはずだったのだが、複製や収納でムチャをしたため、地球の階層管理者(修正する側)の怒りを買い、ちょっとした?意趣返しに魔物の前に転移させられた事実は、知る由もない。
「さて、まずは何をするべきか。町を目指すか、生活拠点を早々に作ってしまうか。ぶっちゃけストレージに入ってるものだけで一人でも生きていけるんだよなー。人との関わり合いが無いだけで。
まぁせっかく異世界に来たんだし、いざとなったら逃げれるようにして、無理しない程度に楽しむか。ってことでまずは襲われない、邪魔されない拠点を作ってから町を目指そう。」
拠点を作るに当たっての基本方針。“襲われない”“邪魔されない”
「下手に陸続きだと追いかけられる可能性があるから。。魔物のいない離島がベターか。空間範囲拡大で海をしらべ……ぐぁっっ?!」
空間範囲で確認しようとしたらあまりにもの情報量に、脳が爆発したかのような感覚に陥り、空間範囲を切らしてしまった。頭を抱え痛みに悶えながら5分ほど経ちやっと痛みが治まったが無防備にうずくまるその姿は、魔物が襲い掛かってくる世界であり得ない行動だった。
「良く襲われなかったな。。でもラッキーで済ましちゃいけない事態だ。頭の痛み以外に違和感はあるか?そもそも何で痛みが襲ってきた?」
身体の状態を確かめて、すぐに違和感に気づいた。それは魔力の量だ。正確には回復量。考えてみればここは魔力のある異世界。回復量を含め空間範囲の索敵も、元の世界で同じように魔法行使を行った結果、規模が桁外れとなり情報過多で過負荷を起こした。
「環境が違うだけでこんなに勝手が違うとは。。慣れるかなぁ?とりあえず魔力を絞って空間範囲は徐々に広げて…。
って細かい魔力制御なんてすぐに出来るか!とにかく南に行って、海を目指そう。寒いより暖かいところ!
でも南はどっちだ?地球と太陽の関係は一緒?。近くの森の木を見て確かめればいいか。」
方角を木の生え方や苔の植生などを見て、何とか方向を確認した俺は、ふと森から顔をのぞかせる大岩を見た。
「これって使える?」
試しに空間を切り取るように、切断。大きなブロック状にして収納。
「……結果として、攻撃魔法を会得してしまった。それもメチャ強力なヤツじゃん?!」
でもビビリな俺は極力、魔物と遭遇しないように南を見据え、短距離転移を繰り返して魔物をかわしつつ、海を目指した。
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海岸線に着いた。が、近くには島が見えない。そして波が妙に高い。波があるということは月があるのだろうか?
「ここからは空間把握を使わないと島は見つけられないな。島に限定して情報を絞れば、そこまで負荷は掛からないか?あと360度じゃなくて180度にして。」
脳になるべく負荷を掛けないようにしながら島を探していく。ここから20kmくらいの距離に適当な規模の無人島を発見した。魔力は潤沢にあるので20kmの距離でも問題なく転移出来た。
「なかなか良さげな島だなー。波が高いけど切りだった崖側にトレーラーハウスを置けば津波とかがあっても安心かな?」
島は海岸を含め500m四方で片側は10mほどの崖になっており、なだらかに勾配がついた小さな島だった。
まずはトレーラーハウスを取り出す。勾配の付いた地面では水平を取るのが難しいようだ。
一旦、トレーラーハウスを収納し、先ほどブロック状にした岩を空中に取り出す。重力に引かれて地面に落ちたところは、だいぶ沈んだ。
「空間圧縮」
トレーラーハウスを置く予定周辺の地面を圧縮してみると、かなり凹んだ。そこに再度ブロック状の岩を落としてみる。今度は沈まないようだ。
岩を複製しながらきれいに並べ、地面より飛び出た部分は水平に空間ごと切断。一旦収納して、遠くの海に捨てる。
「これで設置できる。」
トレーラーハウスを取り出し10か所以上の個所にジャッキを設置した。油圧ジャッキとはいえ、かなりの重労働に辟易する。
「ちょっと休憩。ジャッキの数が多かったからしんどい」
さっそく家の中へ。疲れたのでソファーを取り出した後、倒れ込むように座った。
「ゆっくりとスローライフって思ってたけど、ラノベのように楽には行かないな。ストレージがあるから資材は問題ないけど。ま、焦らず行こう。」
続いて給水タンク・排水処理装置も接続バルブのある裏側に置き、邪魔にならない場所にソーラーパネルを設置。最後にプロパンガスを接続。ほぼ設置するだけだったはずなのに結局4時間近く掛かってしまった。
「エアコンの配管の接続、舐めてたわ。モデルルームを収納してて良かった。一人じゃ接続にどれだけ時間が掛かったか分からん。」
元の世界から持ってきた水を給水タンクにドバドバ注げば、とりあえずは生活できるはず。
「ちょっと遅いけどメシでも食べるか。」
風が気持ちいいので外でレジャーシートを敷き、ストレージからおにぎりを出す。ふんわりとした手作りおにぎり。中身はおかかだ。
「ここの店のおにぎり絶品!海苔もしっとり。パリパリも好きだけど、家庭の味って感じでほっとする。のんびりスローライフ最高~♪」
青空の下、のんびりと昼ごはんを食べていると、遠くに渡り鳥が編隊を組んでとんでいるのが見えた。
長閑だなーっと眺めていたら段々と近づいてくる。目の錯覚か、縮尺が少々オカシイ。
「渡り鳥じゃなくて翼竜に見えるんだけど。。クソっ!」
俺をエサと認識したのか、飛び込むような状態でスピードを増して襲い掛かってきた。
「空間障壁!空間遮断!!」
島を囲むように透明な障壁を張ると、次々とぶつかってくる。ドドドドンッドンッ!とすごい音を立ててぶつかった翼竜?はかなりのスピードでぶつかったせいか、脳震とうを起こしたり、首の骨が折れたりして次々と海へ墜落した。
「怖かったー。初日から何回ヤバい場面に遭遇するんだよ!半日で2回だぞ。
…なんか優しくないぞ異世界。」
翼竜を撃退した後はやる気が起きず、部屋の家具だけ配置したら、ぼぉーっとし、ビールを飲んで寝てしまった。
翌日になると、魔物対策のために魔法を鍛えようと決意し、魔力・身体能力の慣らしと幼き頃に封印した(中二病的な)魔法開発をしようと思ったがすぐに飽きてしまい、暇つぶしの釣りなどをしようと釣具屋から海釣り用のデカい竿を取り出し崖側の海に向かう。
前の世界では海釣りはやったことがなかったため、楽しめればいいかとビーチチェアに座り、サイドテーブルを出してビール・おつまみ完備で準備万端である。
「大物釣るぞー!」
言葉だけは勇ましく、身体能力に任せ、思いっきり竿をしならせながら、遠くへ擲つ。
「すっげー。100mくらい飛んでった。」
釣竿を固定した三脚に置き、手ぶらになると早速ビールを片手にのんびりとヒットするのを待つ。
「こんなに楽して楽しんで、スローライフってこういう事を言うんだろうなー」
すでにほろ酔い気分で、釣りそっちのけで酒盛りしていると、竿が大きくしなった。
「ヒットー!」
急いでビールを竿に持ち替え、当たりを確かめる。かなりの大物の感触。
リールを巻いたり離したりと大物との駆け引きの末、やっと魚影が見えるところまで来た。
「体感で30分も格闘したんだから、絶対に釣る!」
30分の格闘で、腕はパンパンになっていたが、最後の力を振り絞って一気に持ち上げようとしたら、いきなり竿が軽くなった。
大物が自ら飛び上がったのに気づいた時には、ギザギザの歯のついた大きな口が目の前に飛び込んできた時だった。
「ぎゃーっ!!」
何とか避けた俺の横を通り過ぎた大物はビッタンビッタンと跳ねまくり、再度海へと帰って行った。
「……これってスローライフなの?」
そうして1ヶ月が過ぎ、異世界での生活に寝れ始めた頃ふと、あのことを思い出した。
次話はやっとヒロイン枠の登場です。