47話.賢獣祭2
迷走中です。
47話.賢獣祭2
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魔力で作られた花びらがゆっくりと舞い降りた。それは賢獣、エンの祝福。広場に集う者たちの手のひらに舞い落ちた花弁は、淡雪の様に融け、指の隙間から零れ落ちていく。儚くも温かい、そんな優しい魔力。
“世界の愛し子”の恩恵は知識や、魔獣の脅威から身を守る障壁や結界だけじゃない。この『祝福』を浴びた者達の心情は、如何ほどの物だろうか。賢獣教の信徒でなくても、自身に『祝福』を受けたのならば、誰しもが賢獣に心酔し、“世界の愛し子”の恩恵を深く感謝するであろう。
ある意味、皆の心が一つになった時、静かに、しかし全員に届く声でエンが言葉を紡ぎだした。
「…皆よ。この声が聞こえるか?この祝音が心にも届いているか?」
魔力の浸透した声が静かに響き渡る。先ほどの間欲の花びらによって、辺りはエンの魔力がで満ちている。そのため魔力に乗せた声が一人一人にきちんと届いていた。
「今日は、皆に我の声が届けられて、嬉しく思う。
我の名は『エン』。
ヒトの御姿で顕現し、
ヒトの言語を介して賢獣の意を伝え、
世界の安寧へと導かんもの。
喜びに、希望に満ちた賢獣祭へと誘おう。。。」
人々が期待した、期待通りの幸福感に包まれた声に、更なる“恩恵”を感じる人々。しかし、次の言葉で、その気持ちは正反対の様そうへと変わっていく。
「しかし!誘う前に、皆に知らせなければならん事がある。。。」
その後は静かに、エンの声をひたすらに聞き入ってはいたが、その気持ちは、怒りに満ちて行った。
音吐清朗と、ハーベスト神皇国とホランド公国の、賢獣コウキと賢獣シャーヤを穢した事実を告げるエン。
両国の国民、信徒はその事実に驚き、唯々悲しみを涙に変え、流れ、出ず流るる後の瞳は、怒りだけが残り、その濃度を高めた。
当初、ハーベスト神皇国が考えた、ヒトの御姿であるエンが「ヒトの言葉」を発することによって与える、印象効果を逆手に取った手法である。
まるで扇動するかのようにも感じるが、あくまでも事実のみを伝えるエン。
「……流石にこれは、マズいんじゃないか?計画でもここまでの状況を作り出すとは聞いてないぞ?」
ぼそっとエビンがアボに囁く。エンやアボの、短い間とはいえ性格を見知った者でも危険な状態なのは「誰にでも理解できる」そんな状態に、アボは
「予想の範囲内でしょ。それにまだまだこれからだよ?」
「何を…」するつもりと言いかけたエビンに、悲しみの波動の魔力を纏ったコウキとシャーヤの鳴き声が、切なげに大広場全体に響き渡った。
エンの独白する事実は、悲しみと憎悪の様相へと変わっていく。
ここでエビンは認識の違いにやっと気づいた。エンは“世界の愛し子”ではあるが、民の為の愛し子ではないのだと。
あくまでも、アボに対しての愛し子だということを。アボが生きていく上で、害となる者の存在を許すはずもなく、世界会議でも言っていた言葉は、全て本心だったのだ。世界の安寧をはき違えている。エンにとっての安寧は、アボのみに向いている。
エンの言った言葉を思い出してみると、言葉の全てがアボのみの安寧を願っていたのは明白だ。
『……我が主に対して粗相を犯そうとしたならば、同じように覚悟を以って逝け。関係があろうがなかろうが、国ごと滅する。』
『…我はか弱き赤子であっても、主に弓なす者ならば容赦はせん。全ての力を以って応対しよう。』
我々は賢獣という存在を勘違いしていたのでは?“世界の愛し子”とは人類の愛し子だと、いつから勘違いしていた?
勝手に違う方向へ向かい始めました。どうしよう。。。




