46話.賢獣祭1
感動で言葉を無くすシーンって遭遇したことありますか?
歓喜で溢れるシーンはあるんですけど。。。
経験が無いと、表現が難しいですよね。
46話.賢獣祭1
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世界会議は、当初の予定よりも2日早く終わった。もちろんハーベスト神皇国とホランド公国からの全ての議案・提言が議題に上ることなく否決されたからなのだが、賢獣に見限られたことによる、移民・流民問題については、決定的な解決策は見出せないまま、会議は終了した。
どちらの国も、偏った主義・信仰心を持った者が中心の国であり、予想が着かないといった面もあるからだ。
今までも、賢獣に見限られたり、賢獣の卵を孵すことが出来ずに国が滅びたことは何度もある。しかし2ヶ国同時の賢獣の喪失は前代未聞の出来事でもある。
それだけ人類が賢獣に対してだけではなく、世界の全ての事柄に対して傲慢に、そして怠慢になって来ていたのかも知れない。
そして、世界会議の終了を持って、賢獣祭の開幕へと繋がる。
エーバー王国の王城、大広場を一望できるバルコニー。戴冠式や国民に対して何らかしかの発表など、王都の正門から王城まで続く大通りの最奥、王城の前の大広場では、賢獣祭の始まりを今か今かと待ちわびている者で溢れかえっていた。
「凄い、人で溢れかえってるね。」
「各国で持ち回りとはいえ、毎年活気に包まれる瞬間ではありますね。」
「国間の移動って危険じゃないの?」
「基本的に、賢獣様と共に開催国へと移動となります。その時点からのお祭りなんですけどね。」
「賢獣様をいつも以上に身近に、側にいられる行程ですから。」
「“世界の愛し子”と共にいられる幸福を、肌で感じられるんです。賢獣教の信徒でなくても参加したくなりますよ。」
「なるほどねぇ。それだけ人が動けば、経済効果も凄いことになりそうだね。」
「ですから欲に塗れた輩が出てくるんですよねぇ。」
身内話をしている間にも、王城のバルコニーに各国の代表、賢獣とその主が続々と集結する。
しかし、毎年開催する賢獣祭とは赴ぎが違う。10大国が整列するはずの所、8国の代表しか揃わなかったのだから。
賢獣祭が始まる前の、エーバー王国へ向かう道程では、ハーベスト神皇国とホランド公国は確かに賢獣と共に赴いた。
賢獣のシャーヤ、コウキはこの場にいる。だが、国の代表の姿が見えない。何らかのアクシデントがあったのか?大広場に集まった者達は、一往に不安に駆られる。
そして開催国であるエーバー王国が中心に座するのは分かるが、その隣に冒険者ギルドの代表であるグランドマスターが並んでいる。いつもは隅に追いやられているはずの冒険者ギルドが。
それから今までと最も違うのが、エーバー王国と冒険者ギルドに挟まれるように並ぶ2人の存在だ。見慣れぬ異国風の衣装をまとった2人は異彩を放っていた。
その姿は、色違いの様相で男性らしき者が黒、女性らしき者が白といった衣装で纏められている。しかしその顔は窺うことが出来ない。マスクを着けているからだ。被っているマスクは服とは対称に逆の色。男性らしき者が白、女性らしき者が黒色のマスクを装着している。
2人の衣装が異彩を放つ。各国の王族が纏う衣装も権威を示すため、豪華な様相をしているが、2人の衣装は決して重々しくなく、他の王族の様に重厚感はない。
だが、デザイン・質感共に洗練されていた。こちらの世界では知る由もないが、向こうの世界で言うところの、ビクトリア朝のファッションで、男性らしき者が黒を基調に白の刺繍、女性らしき者が白を基調に金の刺繍が施されていて、胸から襟にかけての刺繍は、大広場にいる人が、遠くから見てもこの世界の技術レベルを遥かに超え、十分に賢獣の恩恵を賜っていることを伺わせる衣装だ。
つまり、新たな賢獣様?!と期待と不安が入り混じった感情を、早く解決して欲しい想いでいっぱいの状態であった。
「賢獣祭の開催を前に皆の者に報告がある。」
それまで喧騒に包まれていた、大広場は一瞬で静寂に包まれた。
「今年も、“世界の愛し子”が集まることを誰しもが喜びに満ち、分かち合っている事と思う。
…そして今、ここで更なる喜びの報告を皆に知らせよう!
ここに、新たな賢獣様の来訪を!新たな“世界の愛し子”の顕現を!」
静寂の広場が、爆発したかのように、歓声が上がった。
歓声の中、静かに一歩、エンがバルコニーの淵まで前に出ると、また静寂に包まれる。それはエンの姿が、人の姿をしているからだ。
今までの賢獣は、全て人と非ざる姿を模している。だがエンは人の姿をしているのだから、人の言葉を発する期待を待って、皆が静かになったのだ。
エンは静かに両手を広げ、魔力を開放した。それは優しい光と共に柔らかな魔力の波動。晴れたこの晴天の下、静かに広げた両手を手前に、何かを包み込むように。
そして何かを持つかのように手のひらを上に向けると、そこには桃色になった魔力が、まるで花びらの様に大広場全体に降り注いだ。
「賢獣様の祝福…」誰からともなく漏れる声。そして祈るかのように腕を前に組む者、花びらがゆっくりと舞い落ちる様を見とれる者。
賢獣の恩恵を目の当たりにした者達は、今年の賢獣祭がいつも以上の希望にあふれる者になると信じ、エンから発せられるであろう言葉を待った。
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