4話.サヨナラの前に2
ある種、説明回が続いてしましました。
申し訳ありません。
4話.サヨナラの前に2
「現場の加藤さーん!そちらの様子を教えてくださーい。」
テレビの報道番組では緊急のニュースと謳って、どこのチャンネルも緊急特番が放送されている。
「こちら現場の加藤です。入口はテープで封鎖され、ブルーシートで覆われた中は、窺うことが出来ません。関係者の話では本日午後13時35分頃、ミニタリーショップ『ザ・サバイバルン』にて、店内の商品が忽然と消える事件が発生しました。忽然と消えた商品はサバイバルナイフを始め、ボーガンなど27点、非常に殺傷力のある物もあり、被害総額は175万以上になる見込みで、警察は防犯カメラの解析を急ぎ、消失・盗難事件として捜査を進めている模様です。」
「はい、加藤さんありがとうございます。それでは事件のあった店舗の防犯カメラの映像が入手出来ましたのでお流ししたいと思います。また本日コメンテーターに、犯罪心理研究家の佐竹さんと元警察庁捜査二課の神田さんにお越しいただいております。」
防犯ビデオの映像を流しながら、あーでもないこーでもないと好き勝手に独自の解釈を述べる解説者達。また他のチャンネルに変えてみると、同様の事件があった薬局や洋服などのアパレルショップ、アウトドアショップなどが放送されていた。
「このように、同様の事件が近隣で何件も起こっているため、警察は同一犯の犯行とみて現場付近の防犯カメラの解析を急ぎ……」
俺はテレビのコントローラーを持ち、電源を切った。
「嵩張らないものを中心に集めてみたけど、意外と容量に空きがあるな。というより、時間加速のおかげで容量がハンパない。こうしてる間にも、どんどん大きくなってる。これならいずれ、家でも楽に入りそうだな。
ま、基礎の部分とか良く分からん部分があるから難しいけど。。。そうだ!トレーラーハウスなら!!」
ノートPCでトレーラーハウスを検索する。大きさも様々だったが大きいものでもサイズは3.4m×12mくらいのものだった。しかもバス・トイレ・キッチン付き!
「まあ、公道を走って設置するんだからそんなもんか。でもこのサイズくらいなら何とか行けそうだし、明日にでも見に行くか。実際見てみないと分からないもんな。展示場もあるみたいだから楽しみだ。」
ストレス無く生活できる予想が立ってホクホクである。特にトイレに関しては妥協しなくて済むのは朗報だ。
「あ、そろそろ予約の時間に間に合わなくなる!」
*****~*****~*****~*****
今、星3つの店に来ている。食べ納めではなく、向こうに行っても食べれるように、コース料理を複製しに来ていた。食べに行かなくても複製するだけなら出来るが、ちょっぴり味わってみたい。一人で食べるのが少し切ないが、仕方がない。連れがいると、余計な時間を取られる可能性があるから。
ゆっくりと食べながら自分の食べている料理とは別のコースを頼んでいる客の料理も一緒に複製していく。ついでに周りにある別のレストランの料理も空間把握で調べ、複製していく。
「時空間魔法サマサマだな。明日も違うエリアで複製しておこう。ストックはたくさんあった方が食も豊かになるし。
さて、明日はトレーラーハウスを見に行って、サイズ測ったら中に設置する家具も見に行こう。あと付随して給水タンクとプロパンガス、ソーラーパネルも見に行けば一応、目標クリアか。
寝てる間もストレージがもっと大きくなるから、他に入れたいものも探してみようかなー。」
家に戻ってテレビを付けると、夜の報道番組でも奇天烈な盗難事件を特集を組んで放送していた。
「やっぱり防犯カメラって厄介だな。でもポディティブに考えると、向こうに行った後、自分が使う分には便利になるかも。明日の予定に家電量販店も足しておこう。」
確認のリストに追加して書き込むと、リストにチェックしていない項目を見る。
「移動手段か。時代的に馬車だよなー?お尻が痛いと有名の。一応ネットで販売されいるか確かめてみるか。。。」
検索してみるとシンデレラが乗るようなカボチャ風の馬車から実用的なものまで多種様々なものが販売されていた。
「ま、3日後のストレージの容量次第だな。今はトレーラーハウスの分を考えたらいっぱいいっぱいだ。たくさん料理を複製したから、魔力もほとんど無いし。一旦、回復に回してから魔石を育てて明日に備えるか。」
*****~*****~*****~*****
翌日、いつもの様に起きてからテレビをつけ、コーヒーを一杯。会社に行かなくて良いというのは気持ちの余裕がハンパない。そこまでブラック体質の会社ではなかったが、上司のパワハラが思ったよりストレスを感じていたのかも知れない。
テレビから流れるニュースを聞きながら、ぼぉーっとしていた時、ふと、違和感に気づいた。
「魔力があり得ないほど増えている?じゃなくて魔石が育ってストレージの容量が測れないほど大きくなってる!そうか、魔力が回復して時間加速の度合いを増やした結果だ!。」
回復したことによって、時間加速に使う魔力を大幅に増やした結果、年数に換算すると1000年近く魔石を育てていた。そしてそれは現在進行形。
「…これは流石に、予想の斜め上を行き過ぎて怖くなってきた。向こうに行ってから無双出来ちゃう。。目立ち過ぎちゃうから程々にしたいけど、楽して生きようと思ったら、すぐにバレるよなあ。とりあえず今日持ってく物をを収納したら、自衛手段を真剣に考えよう。」
*****~*****~*****~*****
隣県にある、トレーラーハウスの展示場に来た。
「一人で暮らすなら十分過ぎる設備ですね。エアコンも付いてて、オプションでお風呂も湯船に浸かるタイプもあるし。」
「そうですね。洗浄付きのトイレもオプションでお付けできますよ。」
案内の女性に説明を聞きながら、色んなタイプのトレーラーハウスを見ていく。見てるだけでも楽しい。わくわくしながら説明を聞いていく。
「ちなみにソーラーパネルと給水タンクを取り付けることは出来ますか?」
「最近、離島や田舎に家を持ちたい方が、トレーラーハウスを購入していただくことが増えまして、ちょうど明日設置される方用に納品されたものがございます。大きさなど参考になりますので、見て行かれます?」
「是非!」
倉庫に案内されると折り畳み式のソーラーパネルの枠組みと、
「えっと、給水タンクはこちらですね。水道管直結型の移動式ステンレス製給水タンクです。サイズは1tタイプで、トラックに乗せて緊急災害用などに使われたこともあるタイプですね。2家族で離島にてご使用されるとのことで、このタンク1台で4人家族×2のおよそ一週間分の飲料水・生活用水に十分対応出来る容量になっているんです。毎日お風呂に入られると足りなくなっちゃいますけど。」
茶目っ気に答えてくれたが聞きたいところは、そこではない。
「これって一人で設置することも可能なんですか?」
「一応、トレーラーハウスへの接続部は法律で決まっていて、簡単につなげる様になっています。固定資産税が掛からない理由の一つです。基本、設置までこちらで行いますが、水平を見たりなど出来れば素人さんでも可能ですよ」
そのあとも逆浸透膜装置?付きの排水処理装置や1枚あたり出力300Wのソーラーパネルを20枚分と設置用の骨組みを見せてもらった。
「本日は色々とありがとうございました。参考にさせていただきます。」と挨拶してから、次の予定地へ向かう。家具専門店、家電量販店、インテリアショップと向かい、あらゆるものを収納した後、トレーラーハウスを空間把握で指定して何種類か収納した。
「流石に目の前で収納したら怪しまれる。だけじゃなくて、警察の事情聴取なんてされたら面倒くさいし、時間が勿体ないからな。」
車を走らせ、自宅へ戻っているとオーダーカーテンの店を見て思い付く。
「反物とか商売のネタになるんじゃないか?トレーラーハウスに使うカーテンも欲しいしちょっと寄ってみよう。ついでネタになる商品とかも考えなくちゃなー」
異世界あるあるネタだと香辛料・布地・反物・ガラス製品だけど、他に何があるかなぁと考えながら、一通り見て回った後、店を出る。
家に戻る前に売り物になる物を求めて宝石・宝飾店、酒屋、書店を巡り、ついでに目についた業務用調理用具専門店で大型の寸胴鍋など店の中のもの全てを収納したところで、遠くから音楽が聞こえてきた。
「そういえば、テレビの特番で公開収録やってたな。ああいうところってどうやって電気を供給してるんだ?発電機?出店もやってるし寄ってみよう。」
近くの駐車場に車を止め、お祭り騒ぎしている会場周辺を見て回る。人気の俳優やアイドルが多数出演してる為、来場者数がすごいことになってる。会場の外では出店の香しい匂いで如何にも食欲をそそらせていた。
「流石にこれだけ人が多いとより分けて収納が出来ないぞ。いっその事、全部複製しちゃうか?魔力足りるかなぁ?この会場を範囲指定して……、うん無理だ。
でも複製出来なかったのに魔力がほとんど無くなっちゃった。何でだ?失敗しても魔力は減る?向こうに行ったら検証しないと。まぁいいや、諦めて帰ろ。」
この時、俺はストレージ内のリスト表示をしなかったため、気が付かなかった。
*****~*****~*****~*****
夜、レストランで堪能したあと、ぶらぶらと歩いていると、後ろから人の気配が近づいてくるのに気が付いた。空間範囲で索敵代わりに確認してみると、前後に1人づつ俺を挟み込むように近づいてきていた。
気付かないフリをして歩いていると、前から歩いてきた男がやっと声を掛けてきた。
「相田墨人さんですね。」
「違いますよ。」
すでに複製された身体だからな、本人ではない。軽くいなして、そのまま去ろうとすると、一瞬呆けた後、慌てて進路をふさぐ。
「いやいやいや。面は割れてんだ、ウソはいけないよ相田さん?」
「違うって言ってんだろ。それに初対面で馴れ馴れしくない?おまけに名乗りもしないくせに。どちら様ですか?」
「警察です。」といって一瞬だけ手帳を見せる。見せる気は無いのがバレバレだよ。一瞬ムッとするも笑顔で返答する。
「これが噂の職質ですか?いやぁ初めてですよ。人違いとはいえ、何の用だ?あいにくと暇じゃないんだけど。」
笑顔から一転、ゴミ虫を相手取るように吐き捨てる。
「まだ誤魔化しますか。昨日今日と、ずいぶんと活発に動かれてるようで。会社には身内の不幸があったとウソをついて。」
「相田って人の代弁するとしたら、そうでもしないと有休消化出来ないんですよ、きっと。公僕には分からない悩みかな?」
馬鹿にした言い方で煽ってみたが、普通に引っ掛かってくれない。ため息を一つつき、
「それで?普通、違うって言ってんだから身分証で確認しようとか思わないの?」
「じゃあご提示をお願いします。」
俺の自信あり気な態度に、一人はもし違っていたらと焦った表情が見え隠れしている。ふっ、若いな(笑)もう一人は疑った表情のまま提示を促した。
財布から免許証を出して、二人に渡す。免許証を見て、驚きの表情をしながら一人が携帯を取り出し、どこかに電話を掛けた。身元確認の照会だろう。
こんなこともあろうかと家を出る前に複製を駆使して偽造した免許証だ。すぐにはバレることはないはずだ。
「手前は一瞬しか手帳を見せなかったくせに、こっちのはじっくり見るんだね?」
一瞬、顔が歪んだが取り作った笑顔に戻し、世間話をしてくる。それもニュースで話題の消失・盗難事件。時間稼ぎか?というより明らかに疑われてるな?なんでバレたんだろ。
「警察も大変ですねー。ひょっとしてその相田さんって人が容疑者なんですか?」
明らかに俺を怪しんでるが、ニヤニヤしながら答えてやる。物的証拠がないから堂々としたもんだ。その後も、のらりくらりと言質を取られないように世間話をしていたら、電話を掛けていた男がもう一人に耳打ちし、その内容に舌打ちをした。
「どうやら人違いって分かったみたいだな。免許証、返せよ」
名前は誤魔化しても指紋は誤魔化せないからな。まったく、どうしてバレたんだろ?車で移動しまくってたから、防犯カメラで犯行現場との関係性を結び付けたか?
ま、どっちみち証拠なんて無いんだから堂々と逃げるけどな。小細工はしてるけど、拘束されたら面倒だからって理由だけだし。
免許証を返却され、帰ろうとしたがまだ付きまとってくる。そして一人が、さらに近づいてきた。
「転び公妨」
ぼそっと言った俺の一言に、刑事の動きが一瞬止まる。その隙に身体能力をさらっとみせつつ二人をかわし、路地の小脇側に出る。
「それじゃ。無駄な捜査、ご苦労様。青島刑事(笑)」
手帳を一瞬で読み取った(空間把握で見ていたからだが)某ドラマと同じ名前の刑事に半笑いで言い、すぐそばの路地に入った後、思いっきりジャンプしながらビルの屋上まで駆け上がる。警察は俺を見失ったまま路地を駆けていった。
「手帳をすぐしまったのって、某ドラマの主人公と一緒の名前だったからだったりして?」
*****~*****~*****~*****
「くそっ、どこ行きやがった!」
刑事の一人、青島が毒付く。一瞬の隙をついて、あっという間に逃げられてしまった。プロの刑事2人が傍に居たにも拘らず。
「青島さん!どうしますか?本部でも免許証の番号は別人で確認取れてますし。そもそも何で一瞬、隙見せたんすか?」
「…転び公妨って言われたんだよ。」
「動き、読まれたんですか?」
「ぶつかる素振りは見せてなかったんだけどなぁ?カンが良いのか何なのか。それにしてもあの動き。動きは素人なのに何ちゅう速さだ!」
俗にいう【転び公妨】【当たり公妨】と言われる、ワザとぶつかったりして公務執行妨害罪などを適用できる状況を作り上げ、それを口実に(別件で)逮捕・勾留する、決して褒められないやり方だ。
「青島さんのカンは当たるから付いてきましたけど、相田って男クロっすかね?」
「怪しい動きをしていたのは間違いない。それより本部の追跡班に再度連絡しろ。この場所もすぐ割り出したんだ。まだ遠くには行ってないはず。」
「了解っす。それにしても監視システムって怖いっすね。中国だけの話だと思ったら日本でも簡単に追跡出来ちゃうんだから。」
*****~*****~*****~*****
「さて、家にも警察が張ってる可能性が高いな。朝まで戻らない方が…ん?3日後って思ってたけど、明日の朝に迎えが来るんだから、実質2日じゃん!」
勘違いにやっと気づいた俺。でもまだ修正は利くはず。急いでリストを取り出し残っている項目を見る。あと残っているのは馬車と娯楽品だ。
車で移動するのはリスクが高いと感じ、その場で空間範囲を限界まで広げ、初めて試みる“転移魔法”を使ってみる。転移する場所が安全か確認できれば、それほど危険はないだろう。やってみると、一瞬の浮遊感のあと、無事に転移出来た。
「これなら全国の珍しいものでも収納しに行けるな。」
収納できる範囲が狭かったため今までは車で移動していたが、魔力も増え転移魔法も出来る様になったからには人目も気にせず行ける。
そして、夜通しで役に立ちそうなものを収納していった。
*****~*****~*****~*****
「青島さん!本部から全国で消失する盗難事件の被害報告が!……ってあれ?何、叫んでんだ俺?」
やっと次話から異世界となります。