37話.世界会議3
エンさん無双。
37話.世界会議3
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怒り心頭の様子の両国の主達。しかし勘違いしてはいないか?こちらには、賢獣の意思を直接伝える術がある。決して主を介しての言葉ではなく、直接賢獣から発する言葉があるのだ。
剣呑な雰囲気の中、発言を求めるかのように、静かに立ち上がる賢獣。。
それはエンだ。エンとアボの賢獣の証の色は“赫黒”だ。すなわち怒り・激怒。
「…そこな賢獣の主達よ。その言は、真に賢獣の意思を言葉にして発したものと申すのか?」
「な、何を申し…」
「問いに答えよ!!」
激しい動揺が見られるのか、一気に挙動不審になり目が揺れ動いている。
「おぬし等、久しく賢獣の言を聞いていないのであろう?」
「!」
「…シャーヤ。おぬしはまだ染まり切ってはおらん。縁ゆえ、強制はせん。しかし“世界の愛し子”であるおぬしが一人憂いでるのは忍びない。穢れた魔力を身に纏った愛しき子よ。自身の望みを叶えたくはないか?」
「……ブルル(良いのですか?)」
シャーヤが久しぶりに自らの言葉を発したのだろう。シャーヤの主が驚いているようだ。
「“世界の愛し子”は本来、何事にも強制されるものではない。主との縁を大事にしたい気持ちはよく分かるが、己の信念・存在の意義を否定してまで、有るべきものなのであろうか?」
「か、勝手に我らの賢獣と…」
シャーヤの主が焦って否定しようとしたが、シャーヤが蹄を強く踏み、大きな音を立てて黙らせる。
「ぬしが望むのであれば、我が主の力も借りて、穢れの呪縛を解き放とうぞ。」
「……ブルルルル?(お願いしても宜しいでしょうか?)」
「相分かった。…主殿。宜しいか?」
アボは静かに頷いた。
先ほどとは違い、柔らかな風と共に優しさを持った魔力が辺りに充満する。これが本来の賢獣の魔力なのであろうか?
「…纏衣。。」
誰ともなく呟かれた、纏衣。近年戦争もなかった為か、纒衣を知る者も少ない。見たことのある者達は、古参のクライファート精霊王国、メシドーノツリー樹王国、トロック岩窟国くらいであろうか。
騎士やメイド達だけでなく、首脳陣達も神々しいまでの魔力の発出に、言葉を失っている。
「…あっ、シャーヤ!」
シャーヤが宙を歩くようにエンの傍へとゆっくりと歩み始める。主の呼び止めようとする声がするも、シャーヤが一度、主へ一瞥し黙らせると、再度エンの元へ歩み始める。空中ではあるが、傍まで歩み寄ると跪くかのように脚を曲げ、臣下の意を示した。
「我が主の御力と賢獣の書の御業をもって、浄化せん。
浄化せし後の補充に
世界の安寧と
自身の望む姿にて
再度、顕現せよ!」
淡い光の粒がシャーヤの周りを祝福するかのように踊りだし、シャーヤの身体が少しづつ、光に包まれていく。
光が収まりだすと、シャーヤの容姿があらわになってくる。そこには雄大に翼を広げる、ペガサスの御姿であった。
「気分はどうじゃ?」
「……ブルルル(ようやく目が覚めたかのようです。)」
「して、この後はどうする?」
「ブルブルウウ(もうホランドには戻りません。)」
「なんと?!血迷ったか!」
ホランド公国の主が驚愕に包まれた表情でシャーヤの言葉を聞き、ホランドの首脳陣は慌てふためく。何故なら賢獣が国を見限ったと公言したのと同意なのだから。
すなわち、大国の一つと称されたホランド公国が、賢獣の住まうホランド公国が無くなる、もしくは俗国の一つに格下げされたことを意味する。
ヒト族至上主義を掲げるホランドにとって、過激派の推進を務めていた国々が大きく減退する、予期せぬ痛烈な一手となった瞬間だった。
「こ、こんな事!許されない!賢獣をワザと離れさすかような誘導の仕方!シャーヤは我が国の物だ!こんな……」
ハーベスト神皇国以外の賢獣が一斉に、今発言した者へと殺気めいた目を向ける。
「ひっ!」
「…今、何と言った?【物】とな?賢獣を物扱いか。さすがに蛮勇と片付けるには、いささか。。。
我はともかくとして、他の賢獣達も同様に、ホランドは賢獣を物扱いする国と認識してしまったようだ。」
「お待ちください!そのような事実はございません!言葉の綾でございます!」
賢獣は一同、言葉も発せず、黙って発言している者の目を射抜くかの如く見つめている。
「そ、それに今発言した者が個人的に言ったことでございます。ホランド公国全体の総意ではないことだけは信じてください!こ、こら、お前も呆然としてないで謝罪しろ!」
焦り狂うホランド公国。しかしいくら形だけ謝罪しようと、瞳の奥の怒り・嫉妬心は消せやしないし、隠せない。
「まあ良い。ことはシャーヤに任せよう。何あろうと我に実害があったわけでもないしな。」
「そ、それでは!」
「勘違いするな!シャーヤの意思に任せると言ったまで。おぬしらを許すなどひと言も言ってはおらぬ。」
ホランド公国の面々は安堵の雰囲気から一転、不安に満ちた表情となる。
シャーヤはゆっくりとホランド公国一同を見回し「…ブルル。ブルルル(さらば。国を捨て旅に出ます)」と言い、ホランド側には戻らず、エンの側に立った。そしてホランド公国は世界会議での発言権を全て失った。
「あとはコウキ。ずいぶんと穢れが混じっておるな。我の声が届いておるかも判断に迷う。」
次の標的となった、ハーベスト神皇国。人口魔石と“香”によって意識も朦朧と、まるで麻薬漬けのような状態。実はシャーヤよりも深刻な状態だった。
「ハーベスト神皇国とは賢獣を信仰する敬虔な信者の集まる国だったと認識しておったが、これはどういう事か?」
「……どういう事かとは?我らがハーベスト神皇国は、賢獣様の御意思を察する信仰心を育てて参りました。これまでも、これからも。
賢獣様の御心を少しでも理解し実践すべく日々邁進してきた我らの信仰心を否定するとでもおっしゃいますか?」
「ふん、歪曲した神託をするような上層部が、信仰心を持っておるとは思えん。」
「湾曲とは失礼な!我らが賢獣様の主が神託を賜り、それを実行実践しているだけでございます。」
「コウキのその姿を見て、まだそのような迷いごとを言うというのか。。。」
「コウキ様本人がおっしゃっているのならともかく、コウキ様が不平不満もおっしゃられないのに、難癖を付けないでいただきたい。」
「……」
「何も言えないようですね。でしたら、我らの信仰心を否定した貴方様に、謝罪のをお願いしたい。」
「謝罪?……はぁ、これはしたくはなかったが。。。」
エンは徐に右手を水平に上げると、コウキに向かって掌を広げた。
「世界の意思に従い、
自身の行いを鑑みて
世界を弓なす行為と
認めたのならば
卵に孵れ。。。」
コウキの姿が光ったかと思うと、卵の状態に戻った。
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