28話.それぞれの……
やっと国名が出始めてきました。
28話.それぞれの……
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それからはゼガルルトにとって、いや王国にとって怒涛の展開だった。事の次第を現国王パウルルトに報告。恩恵の件についてはフーヴォがいた為に比較的スムーズに話はついた。
そして話は本題へ。ギーホの件とエンについて。
この場には王国側は賢獣のフーヴォ、国王パウルルト、宰相ジェラルド、第2王子ゼガルルト、ギルド側にグランドマスターのエビン、エルマ。そして俺たちアボ、エンだ。
ギーホの消息については、ガースより随時、上がっているが芳しくない。まるで消息がつかめない。それよりも他国から訪問の打診があったのだ。世界会議は2ヶ月後だというのに、訪問の打診。つまりギーホからエンの情報が漏れた可能性が非常に高いという事だ。打診があったのはハーベスト神皇国とホランド公国。どちらも過激派の所属で厄介な国である。
ハーベスト新皇国は、賢獣教会が牛耳ってる賢獣の信仰に盲目なイカれた国。
一方、ホランド公国はガチガチなヒト人種至上主義の貴族で構成された差別の横行している国である。
ちなみに、話はズレるが【階位】というものがある。冒険者ギルドではA~Fまでのランクで個人、集団での総合能力を加味して決められる。
そして魔物の場合は同じくA~Fでの単体脅威度、集団脅威度で決められる。
対して、賢獣の場合は少し様相が異なる。元より単体脅威度・集団脅威度が桁外れの為、此れに当てはまらないからだ。現在確認されている10体の賢獣の脅威度はほとんどが同じ。
これは魔力を注ぐ量が(魔石などを集められる量が)ほぼ同じだった為であるが、何れにせよ、単体で都市を蹂躙できることを考えると“世界の愛し子”であると同時に、国に対する脅威への対抗手段としても、信仰を集めるものであった。
そんな中、同じ賢獣であるフーヴォが俯く存在。明らかに同列では説明できない賢獣が現れた。
聞くところによると、賢獣でも階位が存在するとの事。10体の賢獣は同列の階位である為、今まで均衡を保ってきたし、一般的には賢獣に階位は無いと思われてきた。それが崩れたのだ。
もちろん同列の階位でも集団脅威度が高い、単体脅威度が高いものはいるが、そういう問題ではない。
世界会議では10体の賢獣が集まる機会でもある。そのため賢獣を崇める教会も『賢獣祭』が執り行われる。本来は総本山のある神皇国で執り行われたいのだが世界会議は各国の持ち回りである。そのため、毎年『賢獣祭』も賢獣様が集まる国で執り行われている。
その賢獣教会の信仰が最も厚く国教でもある神皇国は、過激派に属している。エンのことを知ったらどう動くのか?
自国の賢獣よりも階位が上の存在がいる。今まで自国の賢獣が、この世界で最も尊いと教義にあった神皇国にとって、エンはどう映るのか?
ホランド公国にしてもヒト人種至上主義の中、ヒト人種の御姿をした賢獣のエンはどのように映るのか?
自国の賢獣よりも階位が上で、ヒト人種の御姿。主以外にも言葉を交わすことが出来、意思疎通が容易な存在。またヒト人種と同じ見目をしており、子を成す可能性もある存在。
流れる汗が止まらないのは、ゼガルルトや国王だけではない。ギルドのエビン、エルマもまた、事の重大さに、ギルド組織の後ろ盾になってくれるというエンに迷惑どころじゃない脅威が目の前にぶら下がっていることを自覚し、途方に暮れた。
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「……ここはどこだ?」
ガララントが目を覚ましたのは王宮の医務室であった。隣にはジェームス、バッカスもベッドに横たわっている。状況を把握しようと記憶を探っている時、声を掛けられた。
「目が覚めましたか?ガララント様。」
「…侍従長。ここはどこだ?どうして俺はベッドに横になっているんだ?」
「覚えていないのですか?…余程フーヴォ様の威圧が強かったのでしょうか?」
「……!」
どうやら状況を思い出したようだ。
「そうだ!エン嬢!!」
その大声で、ジェームス、バッカスも目を覚ました。
「エン嬢?それどころではありませんよ?ガララント様がフーヴォ様の逆鱗に触れたと王宮中、大騒ぎなんですから。」
「逆鱗?どういうことだ?」
侍従長は医務室に運び込まれる際、事情を聴いていて、国王から沙汰が下りるまで監視する様、宰相からのお達しが下っていた。
「ゼガルルト様とギルドの方々、そしてフーヴォ様たちの話し合いの場に乗り込んで邪魔をされたとお聞きしております。」
「邪魔とは心外な!その話し合いが終わるまで待っていただけだ。」
「それは同席を許可されてお待ちしていたのですか?」
「第1王子である私が待つと言ったんだ。許可も何もないだろう。」
話しても無駄だと思いつつも、侍従長は言葉を続ける。
「つまり許可を取っていないというワケです。
普通に考えて、フーヴォ様がいる時点で公式な場での打ち合わせとなります。そんな中、許可も無しに乱入して居座ろうとしたのですから、邪魔をしたと思われても仕方がないのはご理解いただけますか?
ガララント様がどのように思われようと、公式の場に、呼ばれもしない人が、いきなり乱入し、居座ろうとした。これが客観的に見た事実でございます。」
「ら、乱入して居座ろうしたなど誇張して事実を曲解して言うな!」
それはお前だろ!と言いたい侍従長だったが、取り巻きのジェームスとバッカスは、事の重大さに気づき始めたようだ。
「ガララント様、今回は分が悪いです。」
「そうです。事実、ゼガルルトの執務室に押し入ったのは間違いないのですから。」
「…ぐぬぅ。」
「此度の件は、相応の覚悟の準備をされた方が良いかと。追って宰相もしくは国王様より通達がございますので、このまま安静になさってお待ち下さいませ。」
流石に分が悪いと理解したガララントだが、それでも納得がいかないと怒りがこみ上げるのであった。
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Side:ホランド公国
「魔導通信にて打診はしたかぇ?」
「滞りなく。」
「ガブル伯爵も中々使えんの。情報をくれたまでは良かったが、その後がいかん。こういうものは早期に手を打たんとならん。なれば直接乗り込むのが吉。世界会議が始まるまで待ってはおれんでの。…ヒトの御姿の賢獣様。早く会いたいのぉ。」
「我が公国にピッタリの賢獣様でございますから。我が国へお越しいただければ、きっと気に入って頂けることでしょう。」
「そうじゃの。エーバー王国に留まるなど御身が穢れてしまうかも知れぬ。」
「まあ、クレイ獣王国に居ないだけ良かったではありませんか。」
「そうじゃの。あそこに居ったら本当に穢れてしまっておったかも知れん。」
「あとは、ギルドの連中とエーバー王国が早急に、賢獣様との謁見をセッティングするのを待つのみじゃ。」
「最悪、謁見が為されない馬鹿な考えを持つかも知れません。我が国の賢獣様も連れて行き、直接呼び出されることもお考え下さい。」
「そうじゃの。主共々、久々に連れ出すかの。」
世界会議を前にして、早々に事態は動き出す。
ちなみにガブル伯爵領は、ハーベスト神皇国とホランド公国と隣接しています。




