20話.訪問、突撃フーヴォ。食の探究者1 ~スパイスの香り~
やっと拠点に戻ってきました。
異世界料理としては定番の料理がやっと出すことが出来ました。
20話.訪問、突撃フーヴォ。食の探究者1 ~スパイスの香り~
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「アボ様?少々報告したいことが。」
王国から転移魔法で拠点である離島に戻ったアボ達は、久々のホームに戻ったこともあり、ウッドデッキでゆっくりと寛いでいた。
今日のデザートは某有名店のバームクーヘンだ。コーヒーも良いけど、今回は紅茶にした。美味しい紅茶の淹れ方なんて某刑事ドラマで見た、空気を含ませるようにした淹れ方を見たことがあるだけだ。茶葉のジャンピングとか聞いたことはあるが。。。こういうことはエンにお任せしよう。
一応、向こうの世界の本屋さんで回収した『優雅な紅茶生活』というセレブリティな本をエンと一緒に読みながら勉強する。こちらの世界の淹れ方とさほど違いは無いようだが、この本の方が、玄人っぽいらしい。
なんせ、こちらの世界の食事に合うものが少なく、あんまり発展していないようだ。ほぼ塩味とハーブの味しかしない肉類がメインの世界だからなぁ、濃い風味の飲み物(赤ワイン系)か、口内・後味をサッパリさせるハッカ系の飲み物が主流になるのも理解できる。
紅茶なんて貴族か生産者以外嗜むものも少ないだろう。なんて思ってバームクーヘンをヤンとランと一緒に食べていたら、エンが報告と言いながら少し困った顔で話しかけてきた。
「どした?」と問いかけると同時に、遠くから響き渡る声が聞こえてきた。
「ホーーーーーーーー!(アボ殿ーーーーーーーーー!)」
「ありゃ?」
フーヴォ。の声が聞こえてきたと思ったら『ガンッ!!』とぶつかる音がした。
透明な障壁に当たりフーヴォが無残に海に落ちるのが見えて、慌てて転移魔法でフーヴォを迎え入れる。脳震盪を起こしたように目を回している状態のフーヴォ。
これが世界に10体しかいないと言われている賢獣なのだろうかと一瞬疑問に思うが、とりあえず目を覚ますまで放置することにした。
「「みゃうみゃみゃ、みゃーん?(アボさまーきょうのよるごはん、なにたべるのー?)」」
二人で追いかけっこしていたが飽きたのか、ヤンとランと一緒に夕ご飯の献立を聞きに来た。子の前みたいに手伝いたいのかな?
「帰ってきたばかりだから、簡単に済ましてもいいかなって思ってたけど……、一緒に作りたい?」
「「みゃうみゃみゃー(つくりたーい!)」」
「じゃあ、今回はヤンとランがメインで夕ご飯を作ってみる?」
「「みゃうんみゃー(つくるー!)」」
みんな一緒にキッチンに向かう。まずは手洗い(脚?洗い)だ。エンやヤンたちに聞いたところ、賢獣は身体のほとんどが魔力で構成されているらしく、抜け毛も自らの意思で抜かない限り、無いらしい。なので安心して調理の手伝いもして貰える。でも手洗いはしっかりと。
今回作るのは、異世界で定番のカレーだ。日本じゃ専門店でも多くのお店が出店されていたが、市販のルーも種類が多いし国民的家庭料理の一つなんだと思う。
小さい頃は、カレーは「ごちそう」だった。母親が半日近く時間を掛けて作ってくれるだけで「ごちそう」ではあったが、家族全員で笑顔で囲む食卓も「ごちそう」なんだろうと、ふと思う。
若干、感傷に浸りながらも、今はエンもヤンとランも一緒にいる。楽しく美味しいカレーを作ろう。といっても本格的なカレーなんて作れないから、市販のルーを使うが。
「まずは肉だ。今日はすじ肉を使おう。」
ヤンとランに見本で牛すじ肉を一口大くらいの大きめに切りって見せる。フーヴォも起きたら食べるだろうからすじ肉だけで1㎏使っちゃおう。ヤンとランの指先の爪?が薄く伸び、包丁の刃のような形状になり、スパスパすじ肉を切っていく。…まな板、切れてないよね?「「みゃうん♪みゃうん♪」」と歌うようにリズミカルに。切ったすじ肉はエンが大きい寸胴鍋に入れていく。
お酢カップ一杯・酒は二杯、あとはお肉が被る程度の水を注いで、蓋をせずに下茹で。30分も中火~弱火で茹でれば良いかな?
お酢が多かったのか、最初は驚くほど泡立って、お酢の香りが立ちこめた。ヤンとランは寸胴鍋をのぞき込んでいたから、咽込んでる。
エンが涙目になってる2匹を宥めながらも、アクを取りながら煮込んでいると、徐々に落ち着いてくる。
作業は終わりじゃないので、アク取りはエンに任せ、次の作業へ。
玉ねぎ2個を細めの櫛切り、にんじんを薄めの乱切りにする。ヤンとランも玉ねぎに苦戦するかと思ったら、俺が切った玉ねぎのおかげで涙目になっていた。
ヤンとランの爪だと繊維をつぶさないでスパスパ切った加減か?何気にチート。
平皿に乗せてラップしてレンジで加熱。うーん、文明の利器♪
もう2個、玉ねぎと皮を剥いたリンゴ、ニンジン2本をすりおろす。すぐに酸化して茶色くなるのが面白そうに見ている。全然、問題ないからね。
レンジがチンした。野菜が半透明になり、しんなりしてる。レンジから出したが、ラップは外さずに出番が来るまでそのまま予熱で放置。
そうこうしてる内に、牛すじが柔らかくなった。ザルに上げ、流水で洗う。
洗ったすじ肉と玉ねぎ&りんごと共に鍋に戻し、赤ワインをすじ肉がヒタヒタになるくらいドバドバ注いで漬け込んでおく。ドバドバと言っても、小さいヤンとランも食べるのでカップ2~3杯くらいだけど。
漬け込んでる鍋に、レンジした野菜を加えて火に掛け、アルコールが飛んで具材が色付くまで、そのままワイン煮。エンにお任せしよう。
エンにはローリエとチューブタイプのおろしにんにくやおろししょうが、鶏がらスープの素を加えてコトコトと煮込んでもらい、アクが出たらその度にすくい取ってもらう。
しっかり煮込めたら一旦火を止め、独断と偏見で、俺好みの市販のカレールー2種類を割り入れ、ブレンドする。某有名メーカーのルーだ。下手に自分で作るより、断然に旨い。焦げ付かないように煮込めば完成だ。エンさん頼みます。
カレーの暴力的な香りが辺りを蹂躙する。スパイスの香りが刺激したのか、フーヴォが目を覚ましたようだ。
「……ホーゥホー?(……なんじゃこの刺激的な香りは?)」
「目が覚めたか?」
俺の問いに応えず、キョロキョロと首を振る。段々覚醒してきたのか、エンが見張り番をしている寸胴鍋に視線が固定された。
「ホーーー!(新しい料理か!)」
ばっさばっさと翼で羽ばたくと、エンの肩口に止まり、じーっと寸胴鍋をのぞき込み、興味深そうにカレーを見ている。
その間に、おれは隣のコンロで150℃くらいに熱した油にフライドパスタを作ってる。ショートはペンネ、ファルファッレ、フジッリの3種類。ロングは適当。じっくり10分くらい揚げる。
揚がったフライドパスタをバットに開け、一味唐辛子、塩、カレー粉、シナモンシュガー、ハーブソルトで好みの調味料で味つけをする。冷めたら完成。
おつまみに合うんだよね♪
最後にサラダを適当にざく切りして盛れば一応完成。あと何か足そうかな?そうだ、温泉卵をカレーにトッピングしよう。まだカレーは…、エンさんが「一度冷ましてからの方が味が沁み込みますよ?」というので安心して、温泉卵を作った。付け合わせの薬味はラッキョウにしよう。デザートは……、久々にコーヒーゼリーで良いか。
あっ!ご飯を炊くのを忘れてた!!
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せっかくなので、広いウッドデッキで食べることにする。フーヴォもいるしね。
寝そべったタイプのデッキチェアを一瞬で収納して、サイドテーブル付きのデッキチェアを2連タイプ、シングルタイプを出す。ヤンとラン用・フーヴォ用だ。
俺とエンは普通にテーブルにイスに座ることにした。今回はヤンとランがメインで作ったカレーということもあって、いつも以上に楽し気な雰囲気で食卓を囲んでいる。
「それではいただきます!」
フーヴォも器用にスプーンを使ってる。見事と言うしか言葉が見当たらない。ヤンとランは魔力で爪をスプーンみたいに形状変化させていたが。
「「みゃうみゃー!(からいけどおいしー!)」」
リンゴをすりおろしているから多少マイルドになったかな?思ったよりも辛くない。逆にコクが出ている感じがする。
「ホーーーー!ホゥーーー!(暴力的なスパイスの香り!刺激的な辛さ!)」
フーヴォが煩い。そっとフーヴォの周りの空間を操作して層を何重にもする。だいぶ煩いのが収まった。
温泉卵をスプーンで割り、カレーと一緒に口の中へ。よりまろやかに口内に広がるカレー。
食べ終わったらコーヒーゼリーをみんなに渡そう。個人的に、カレーの後は、コーヒーを飲むのが定番になっていたが、たまにはコーヒーゼリーでも良いだろう。
フーヴォの声が遠くで響きまくっているように感じながら。やっと拠点に戻ってきたと安心しながら、夜も更けていった。
次回は、食の探究者2 フーヴォの食レポ♪
をお送りします。




