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準備万端で楽々異世界生活(仮)  作者: メイシン
序章 準備万端?編
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2話.いきなり過ぎる2

よろしくお願いします。

2話.いきなり過ぎる2






ゆっくりと眼を開けると、目の前に眼を瞑って座っている俺が居た。

どういうこと?


『恙なく移行に移せたようですね。身体の動きや記憶など、何か違和感はございますか?』


 とりあえず手を握ったり開いたりしてみる。問題は無いようだ。次にこの奇天烈な呼びかけ?からの怒涛の展開を振り返ってみる。うん、訳わからん。理解出来ないし納得も出来ないが落ち着いている。記憶は…年齢的にも全てをこの一瞬で思いだすことなど出来ないけど、思考も問題ないようだ、ただ違和感。。


「元に戻せるんだよな?まだ了承してないんだし。」


『え?何か問題ありました?』


焦った感情が流れ込んでくる。


「質問を質問で返すな。元に戻せるんだよなって言ってんだよ。」


分かりきったこと聞いてんじゃねえよ。“問題がない”ことが問題なんだ。肉体だけじゃなく魂も精神も完璧(笑)にコピーしたって言ったのは失敗だったな。これは俺じゃない。


『申し訳ありませんすでに移行が完了しました。そちらの肉体につきましては多少の修正は出来ますが、あまりにもかけ離れたものになると魂の定着が…、』


「元には戻せないってことだな。ま、元に戻したって言われても確認する術は無いけど。そもそも、肉体だけじゃなく魂も精神もって言ってたけど、じゃあ何で複製で階層破壊を阻止出来なかった?」


『…』


 声が言った言葉を思い出してみる『貴方様の複製をお創りします。肉体だけじゃなく魂も精神も。ただ、複製では何故か階層破壊を回避することは出来ませんでしたので。不思議ですけど。』…不思議でも何でもない。


「答えは簡単だ、俺がいるからだろ?。階層破壊を回避するには俺という存在が必要。なのに複製では回避出来なかった。ということは、俺という存在が複数いることによって存在が薄まるんじゃないか?いやちょっと違うか。複製した時点で唯一の存在ではなくなったからってとこか。」


今まで頭に響いてきた声が全く聞こえなくなった。感情の揺らぎ、うねりだけが押し寄せている。分かりやす過ぎだろ。


「であれば、複製では意味がなさない。別人として存在させなくてはならないってことになる。

 じゃあ何でこんな面倒くさいやり取りをしてる?ってことになるんだけど…、ここで“ここ”の階層管理者の存在が浮かんでくる。多分あんたより上位の立場なんじゃないか?だから下手なことが出来ない。ただでさえ、ここの階層管理者にとっては関係ないことで自身の階層に迷惑を掛けられて、おまけに人身御供を差し出せって言われたら…ってとこだろ?対価に結構無茶なこと言われたんじゃないか?この面倒臭いやり取りを振り返ってみると、俺に関しては本人の記憶の完全な移譲を以っての人格の再現。転生では魂の関係上、コピーすると階層破壊の回避ができない可能性があるから過去からの人格形成の経験と記憶をコピーすることによって本人と同じ人格を再現、違和感を感じないようにしたんじゃないか?」


 返答がないのは肯定の意か、単に話を聞いてるだけなのか?


「下手に記憶や思考を弄れば、ここの階層管理者にバレた時に問題になるからか、弄らないように言われてるからかどちらかだろ。その上で俺に了承を貰うってのが条件かな。」


『その通りです。例え“事後でも”了承を貰えれば、ここの階層管理者は納得して頂けるとのことでしたので。』


「俺が了承しなかったらどうするのさ?」


綱渡り過ぎるだろ。あんなやり方、俺みたいなひねくれ者には逆効果だし、最初の段階で真実を言わなかった時点ですでにアウトだ。


『時間を巻き戻して何回でも。』


「ぶっ飛んでんな。だったら最初から階層破壊の原因の前に巻き戻せば済む話じゃないの?」


『階層外での出来事ですので行使できないんです。今は階層間を空間座標固定して、何とか繋ぎ止めていますが、崩壊するのも階層外からですので止められないんです。』


「ふむ。あんたらの事情は何となく理解した。納得は出来ないけど。」


『それでは!』


「条件付きでこの身体での、違う階層?いわゆる異世界?に行くよ。」


どっちみち、もう元には戻れないんだしこれからのことを考えるほうが建設的だろう。


『ありがとうございます!して条件とは?』


「まず条件の前に、眼の前の“俺”を何とかしてくれ。気分が良くない。それとこの身体どこまで弄れる?」


『失礼しました。こちらでお預かりしますね。それと身体につきましては、現状とかけ離れるほど、精神との乖離・齟齬が生じますので。それを理解した上で申し頂けたらと。』


あ、俺が消えた。なんか呆気ない別れとなったな。今更どうでもいいけど。とりあえずソファーに座り、頭の中を整理しながら考えてみるが、乖離・齟齬か。。今まで自然に体を動かしていたことが出来なくなる感覚に近いのかな。だったら参考にしてみるのは…


「異世界のヒト族の平均的な身体と比べて、この身体はどうなの?」


『身体能力で言えば、10歳児に劣るくらいですかね。』


 やっぱりかぁ、そんな気がしてたんだよな。文明の発達したこの日本で、ぬくぬくと生きてきた体じゃあらゆる面で劣るわなぁ。最近は特に運動もしてないし。


「じゃあ齟齬が生じない程度に強化して。特に内臓系。偏食にも耐えられるように。」


向こうの食べ物とか、現代人には厳しいだろう。食生活事情も発展してないだろうし、きちんと食べられるか?無理だろ。


『承知いたしました。ちなみに外的な、容姿については?多少弄って齟齬が生じたとしても訓練したり時間が経てば馴染みますし。』


魔物とかが跋扈する世界でそんな余裕あるのか?レベル制の世界じゃないんだし鍛えてる余裕があるとは思えん。


「向こうの容姿の判断基準も知らないし。ヒト族と今の俺ってそこまでの違いはある?」


『…そうですね。美的感覚につきましては私では判断できませんが、悪くないと思います。身体的情報は身長は平均より少し上ですか。筋力や反射神経などの能力値につきましては、先ほど申した通り10歳程度ですが齟齬が生じない程度に底上げ致しますので向こうの平均成人くらいには上げられるかと。流石に精神的な耐性については向こうに行ってからご自身にて鍛えるといいますか慣れて頂くことになります。』


あぁ、グロ耐性ね。。それは仕方がないか。


「じゃあ条件についてだけど、今回の原因である3柱。俺が存在ごと消されることについて何か言ってた?」


『…それはもう、ここの管理者にも大変申し訳なく、貴方様にもできる限りのことはさせていただきたいと申しておりましたが。。』


「じゃあ1柱1つと考えて3つ。要望を叶えてもらおうかな。

 あんたが使ってた能力。複製の能力が欲しい。3日後に存在ごと消されちゃうんだろ?思い出の品も何もかも、俺に関わるもの全て。

 2度とこの世界に戻れないんだから、せめて複製した物だとしても、両親の形見くらい持たせて欲しい。」


『分かりました。ですが流石にこの複製の能力は燃費が良くないと申しましょうか、気軽に使える能力ではありませんので…。そうですね、小物でしたら3品ほど複製出来るくらいの魔力を魔石に付与いたします。』


「魔力を使い切っちゃうとどうなる?」


『使い切ると倦怠感・虚脱感ですかね。即、行動不動という程ではありませんが動きはある程度、疎外されます。』


「ここの世界では回復しないの?」


『本来、魔素の無い世界ですから自然回復は致しません。ただ階層破壊がすでに始まっていて魔力の流入が起こっていますので、多少は回復すると思います。あと、回復手段としては魔力譲渡及び魔力の回復薬か魔力練気法があります。』


「魔力練気法?」


『魔石・魔力を育てたり回復させたりする技術法の一つです。魔石内の魔力を循環、練り込むことで魔力を回復させたり増量させることが出来ます。ただ、回復量は、自然回復よりは早いですが慣れてないとかなり時間の掛かるやり方です。特に魔素の無い世界では、錬気の回復ですと1日で1割くらいでしょうか?増量の場合はさらに年単位で増やす修行法でもあります。』


「分かった。向こうに行くまでの3日間に魔力は使ってしまうと、回復はしないってことで合ってる?了解。じゃあ複製は向こうに行く直前ににしないと。

 さて次の要望は、さっき時間を巻き戻すとか、空間固定とか言ってたよね?2つ目は≪時空間操作魔法≫が使える様にして欲しい。

 当面の貨幣お金をくれるって言ってたけど、無限じゃないんだから働かなければならない。身体能力は上がっても慣れる期間もどのくらいか分からない。リハビリと考えれば、何か月も掛かるでしょ?魔法にしても魔石を育てるのにどれだけの時間が掛かるか。誰かに師事するにしても自力に比べれば短縮したとしても時間はかかるしお金も掛かる。でもラノベで良くある時間停止機能付きのアイテムボックスとかストレージ系の能力があれば、荷物にしても持ち運びの体力も軽減出来るし、逃げる時でも身軽に動ける。攻撃的な魔法よりまずは生き残るための魔法が欲しい。」


『…あちらにアイテムボックスの概念は無いのですが、こちらではそのような知識が豊富なんですね。。ですが無制限にとは出来ませんので魔力量に準ずる容量とさせていただきます。でも先ほど付与した魔力量の分しか使えませんので小型のキャリーバック程ですよ?』


「魔石が育ってないんだから容量が少ないのは仕方がないよね。とりあえずは形見が入れば問題ない。」


『なるほど。承知いたしました。』


「最後は、そうだなぁ特に思いつかない。向こうに行って便利になるような知識とか、何かある?」


『知識ではありませんが賢獣は如何でしょうか?旅のお供と申しましょうか。お独りであちらの世界で過ごされるには、慣れるまでお辛いかと思います。賢獣は知能も高く、育てば戦闘も熟す優れた知性と身体能力を持っていますので、きっと貴方様のお役に立つかと。』


「それいいな!でも賢獣ってどんな姿なの?」


モフモフ系とか想像してたら、ソファーの前のローテーブルにいきなりダチョウのサイズくらいの大きな卵が現れた。


『この賢獣の卵は主人となるものが魔力を注ぐことで孵ります。姿を思い浮かべながら魔力を注ぐことで如何様にも姿が変わるので一概に言えないのですが。魔力の注ぐ量が多ければ、より思い浮かべた容姿に近づきます。』


「じゃあしばらくはお預けかな。魔力がある程度育ったら孵してみるよ。向こうに行っても、しばらくは生活基盤が整うまでそんな余裕も無いだろうし。」


『分かりました。大事になさってくださいね。それでは改めまして、こちらの都合で貴方様の生きる世界を奪ってしまい申し訳ありませんでした。3日後のこの時間にお迎えに上がりますので、心の整理をお願いします。』


「了解。」


 いきなり過ぎる展開がとりあえず落ち着いた。さて、3日後には旅立つんだから会社に行ってる場合じゃないよな。身内の誰かに、不幸になってもらって休暇を貰おう。






ありがとうございました。

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