15話.閑話 王国の賢獣フーヴォ
ちょこっと、フーヴォが脇役のままか悩み中。
でもちょくちょく出現しそうな気配。。。
15話.閑話 王国の賢獣フーヴォ
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最初、唯々驚いた。格の違いに、階位の差に。
そして食事に対する偏愛に。。。
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いつものように王宮の離宮近くにある果樹園で完熟の果実を啄んでいた時のことだった。
「ホーゥホー(たまには果実以外の美味しいものを食したいのー)」
普段、国の象徴でもある賢獣は、主と共に過ごすものだが、エーバー王国においての賢獣は、様相が少し違う。
そもそも賢獣というものは卵から孵る。その際に大量の魔力が必要となるが、その魔力をもって顕現する。
ちなみにこの世界で知られている賢獣とは
・現在確認されている数は10体。
・賢獣は、主を主として、大量の魔力によって卵から孵る。
・賢獣は、動物の姿を模すことが多い。
・賢獣は、主と共に寿命を共有する(寿命は一般的に20~50年と言われる。)
・賢獣の性質は、世界の知識を有し思慮深くもあるが、主との名付けによってパスが形成し、性格が変化する。
・賢獣の御力は、指し示すものとして、知識だけでなく“力”も関係している。純粋な戦闘能力だけでなく、様々な知識による恩恵も含む。
・主がお隠れになると卵に戻る。但し愛想を尽かされた場合など、卵には孵らず主不在で顕現したままの場合がある。
主の死後、卵に孵るとその時代の権力にもよるが、大抵の国は王族が大量の魔石や大規模魔法陣を使い、新たな賢獣を孵す。今までの賢獣の姿を踏襲し、同じ姿を模すことが通例だ。
その中でエーバー王国の賢獣は、主不在の珍しいパターンだ。決して前の主が“愛想を尽かされた”ワケではなく、単に主の性格が過分に影響している。
当時の主は、王族の中でも一番幼い第三王女レーラだった。これは少しでも長く賢獣様を現界に留めておきたい措置であった。
第三王女レーラは賢獣に『フーヴォ』と名付け、まるで兄弟の様に育ち、仲も良好だった。ある時、王女の気まぐれが賢獣『フーヴォ』の今後の生き方が変わった瞬間でだった。
「あーん♪」
「……」
「フーヴォ?」
幼いレーラは何の気なしにフーヴォに食べて貰おうと手に持った果実を差し出した。賢獣は物を食べなくても生きていける。この世界の食事事情も相まって誰も賢獣に供物として差し出すこともなかった。ひとえに幼いレーラの無知による善意であった。
レーラとしては魔物の肉は美味しくなく、果実は美味しい。美味しいものを一緒に食べたい、食べて貰いたい、ただそれだけだった。
フーヴォも普段は大気中の魔力を食し、別に不満もなかった。今まで賢獣を顕現させてきた歴代の主もマズい魔物の肉を出したことはあったが(御姿がフクロウの為、肉食と思われて出された訳だが)とてもマズく食べなかったため、それ以降食べ物を供物出すこともなかったし、魔力以外を食べようとも思わなかった。
そこに「あーん♪」と言って出された果実の一欠片。マズいものを食べたくないフーヴォに、キラキラと目を輝かせて食べさせようとするレーラ。
とうとう根負けして啄んでしまう。その時、自然の甘さ、爽やかな香り、瑞々しい触感、今までの記憶にない衝撃にフーヴォ自身、驚いて動きが止まってしまった。
「おいしい?」
「……」
「フーヴォ?」
「もう一口、所望する。」
レーラは笑顔で応える。それからフーヴォはレーラと共にサロンでお茶を嗜み、ドライフルーツや、新鮮な果実を欲するあまり離宮の傍に果樹園を造園させたりと自らの美食のためにレーラと邁進していくこととなる。
そして時は過ぎ、レーラが天に孵る際の最後の言葉が、
「…フーヴォ。あなたはこれで卵に戻ってしまうの?戦争の道具、王国の駒としての生き方以外の、あなた自身の生き方を見つけられたのに。。誰にも縛られることなく、その翼で自由に行きたい道を飛んでいけることが本当の私の望みだったの。
出来ればあなたを縛り付けたくはなかったわ。だってあなたは、私の初めてできたお友達なんだもの。
もちろんこの国は大好きだわ。でもだからと言って貴方を縛り付けて良いわけじゃないもの。
……私が天に還ったら、貴方は貴方の意思で自由になって良いと思うの。こんな風に思うのは、王国に対しての裏切りかも知れないけれど、私のお友達に無理強いはしたくない。自由に生きて。
私はあなたの主になれたことが一番の幸せだわ。ありがとうね。」
後に、家族が見守る中レーラが天に還ったあと、賢獣であるフーヴォが卵に孵ると誰しもが思っていたのだが、そうはならなかった。
涙を流しながら「ホー、ホーー」と鳴き続けるフーヴォの姿があった。
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いつもの様に、果樹園で果実を啄む。レーラが愛した王国であった為、王国から離れることはせず、王国を見守る象徴として顕在していると周知されているフーヴォ。
そんな平和の日々の中、衝撃的な出来事があった。いきなり体全体に響く圧倒的強者の魔力。これは上位魔獣?いや賢獣だ!それも抑えた状態で尚、この王国を灰燼と化すほどの。
しかし長年賢獣として顕在し、最古参と自負しているフーヴォでも知らない強大な力を有する魔力だった。あまりにも強大な魔力だったため、勝てないまでもレーラの愛した王国を守ろうと、フーヴォは決意しコンタクトを取ることにした。
『失礼じゃが、どちら様かの?ワシはこのエーバー王国の賢獣フーヴォじゃ』
『初めましてと言えば良いのかしら?私はエン。最近、顕現した賢獣ですわ。』
『先ほどの魔力は如何したのかの?』
『この世界、まだ10体しか賢獣は確認されてないでしょ?“賢獣の証”か“賢者の書”を見せる訳にも行かないし?だから証明のためにちょこっとだけ魔力を開放してみたの。』
あれがちょこっとだけだと?!と驚愕したが、努めて冷静に
『それで証明にはなったのかの?』
『ええ滞りなく。私と主様は、権力にとらわれず生きて行きたいだけですから。』
『…あくまでもこの王国に仇なすつもりは無いと?』
『もちろんですわ。…それと、もしかしたらだけど、少し力をお借りするかも知れないわ。』
『そなたの強大な力があって尚、必要とする事柄なのかの?』
『いえ、力ではなく、あなたの王国の賢獣という姿を。』
世界会議が近づく中、戦争などに駆り出されるのも、悪意が割拠する政局に巻き込まれるのも真っ平ご免だと思っているが、何やら様子が違う模様。
『詳しく聞いても?』
『話し合いが、たぶん夜に行われるから、その後でもよいかしら?』
『承知した。』
『それではまた連絡するわ。』
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『遅くなって申し訳ないけど今、大丈夫?』
『構わんぞ。』
『確認したいのだけど世界会議っていつ開催されるの?』
『2ヶ月後に。今年はこのエーバー王国で開催されるぞ。』
『あなたは中立派?』
『この王国が平穏無事ならば他には何も望まん。逆に言えば他が争おうとも被害が被らないのであれば好きにせえという立場じゃ。』
『分かりました。私の主様は世界を見て回りたいという夢がお有りです。その夢の為に私は最善の道を示したいと思っています。そのために世界会議に出席をすることになると思います。』
『どこの国に属すつもりじゃ?』
『話の流れで、国ではなく“冒険者ギルド”に助力する形ですかね。』
『…なるほど。戦争を助長してエーバー王国に攻め入るのでなければ歓迎じゃ。』
『そこで、あなたのお力をお借りしたいのですわ。この国にも冒険者ギルドにも、邪魔をしてくる輩、例えば貴族などが居るはずです。その輩が出てきた際には、この王国で絶対的な象徴である、あなたの御姿があれば話が早いので。』
本当に戦争に駆り出すのではなさそうじゃ。しかし我も果樹園の果実が待っておるからのう。余計なことで時間を取られたくないのじゃ。断ろうのかのぅ。
『その程度のことで我を呼びつけるには、ちと弱いの。我もヒマではないのじゃ。』
『相応のお礼はいたしますわ。あなたの望むもので。』
『何?望むものとな?』
『ええ。魔力の差で分かる通り、世界の知識量も貴方よりも過分にありますし、奥の手もありますから、期待にお答えできると思いますわ。』
『……では未知の食べ物を。美味しい食事を所望する!但し、ただの果実丸ごとではいかんぞ!われの食べたことのない美味なる食事じゃ!オヌシに用意出来るかの?』
『そんな簡単な事でよろしいのかしら?それでしたら試しに明日お会いして御試食されてみます?気に入ったのならご協力をお願いしますね。』
『簡単と抜かしおったか。重畳、重畳。それでは明日、楽しみにしておるぞ。』
そして、フーヴォはエンの魔力以上に衝撃の味を体験し、臣下のごとくエンと主であるアボを崇拝するようになった。
この時フーヴォは、ジャンクなピザと炭酸飲料に衝撃を受けました。
そして決して賢獣としての格によって、謙るのではなく、純粋に美味なる食事に感銘を受け
臣下の意を示したのです(笑)




