14話.王国の賢獣
言い訳を上手く言える人って
ある意味尊敬します。
14話.王国の賢獣
*****~*****~*****~*****
窓のブラインドを盛大に吹き飛ばし、首飾りを掛けた1匹の白いフクロウが飛び込んできた。
「な、なにご……!」
言葉を最後まで紡ぐことは出来なかった。それもそうだろう。この王国の“世界の愛し子”である賢獣が現れたのだから。
フクロウの賢獣が辺りを見回し俺たちを見つけると、目の前に降り立ち、頭を下げる。まるで臣下の意を示すように。
「なんと…!」
明らかに自身よりも上の態度を取る姿に、誰も何も言えなくなる。賢獣1体で一国を相手にできる攻撃力、知識を有する存在が臣下の意を示すように頭を下げたのだ。。その意味を理解できない者はここには居なかった。
「面を上げよ。」
いつものエンの口調とは違う、明らかに格上の話し方。…あれ?エンって顕現したのって最近だよね。新参者っていうか、生まれたばかりなんだから明らかに態度が逆というかオカシイ気がするんだけど?
フクロウの賢獣がゆっくり頭を上げ、エンと俺、そしてバックを見つめる。ヤンとランのことも分かってるようだ。ひとしきり見つめ満足したのか、くるっと振り向きギルドメンバー一同を見つめる。この静寂の中、誰も言葉を発することもできない。しかし我に返ったのか、次々と首を垂れる。
フクロウは、さっき代表と言っていた人の前に立ち「ホーゥ」一声鳴いた。
「け、賢獣様にあらせますれば、このような場所での拝謁、大慶至極に存じます。」
賢獣は一瞥することもなく、代表と言った人を見つめている。言葉を発した貴族派の偉いさんには目もくれない。
「ホーゥホー」
頭を下げたまま誰も言葉を発しない。ここに主が居ないため何を言っているのか判らないためだ。
「誰も言葉を理解なされていない様子、訳した方が良いか?」
「ホー」
「了解した。」とエンが通訳を買ってくれた。その様子を本部ギルドの面々は驚いた。賢獣と意思疎通が出来るのは、同じ賢獣同士かパートナーである主のみだからだ。
逆に言えばパートナーである主で無いのならば同じ賢獣であることが証明された瞬間であった。
「『話をするために集まったのであろう。いつまで頭を下げているのだ?』と申しております。」
お前が突然乱入したからだろ!と思えないわけでもないが、そこを突っ込んではいけないのだろう。ここに呼んだのは俺たちなのだし。
以下同時通訳
「ホーゥホーゥホー」
『此度は世界会議に対する事前の打ち合わせと聞く。我は中立派なれど、世界の均衡を保つためならば喜んで手を貸そう。そのために、ここに来た。』
「ホーホー」
『して、何やら揉めておったようだが何か問題があったのか?』
俺らが賢獣とその主かどうかの問題だったが、すでに通訳している時点で証明というか解決してしまっている。
「い、いえ。その…」
ギルド本部の代表は言い淀む。身内の恥を晒す行為をはたして話しても良いのだろうか?しかし聞かれたことに対して答えないのも不敬に当たる。そこに原因でもある貴族派の男が口を開いた。
「賢獣様!恐れながら、代わって返答をさせて頂きます。私はギルド本部の末席に名を連ねるギーホ・カンビッタ・ラルホードと申します。先ほどの問いにつきましては、何の問題も起こっておりません。2ヶ月後に開かれる世界会議でのギルドの立ち位置を明確にさせ世界の均衡を図る中心的な役割を…」
「グェーーー!」
ギーホの言葉を遮るように切り裂くような鋭い声が響いた。
『オヌシの発言を許した覚えはない。』
こいつバカだろ。王国の賢獣だけを気にして。。
「ホーホーホーゥ」
『それにオヌシの物言い。我以外の賢獣がここにおられるのを知ったうえで無視しておる訳か?良い度胸だの。』
「あ……!」
憖っか目の前にフクロウの恰好をした賢獣がいて、エンの姿が人と同じだから、意識から外れちゃったのかな?
「ホーゥホーホーゥ!」
『オヌシのような不埒な輩、同席するのも烏滸がましい。早う去ね!』
フクロウが翼を広げ威嚇するも動けないギーホに、翼を羽ばたかせると、勢い良く吹き飛ばされ、扉に激突し、強制的に退出させられた。
うん、ナイスコントロール。
「それで、副ギルドマスターはどうする?」
にっこりと笑う俺の問いに、すごすごと退出していった。
*****~*****~*****~*****
何故かフクロウが優雅に紅茶を飲んでいる。器用に脚でカップを掴み、貴婦人のように華麗に。
邪魔者を退出させた後、王国の賢獣は必要なくなったから帰れとも言えず、約束だったから、時間つぶしに紅茶と茶菓子にクッキーを出したら、大そう気に入った様子で。羨まし気に見ているギルド本部の面々にも紅茶とクッキーを出す羽目になった。
おかげで話がまるで進まない。香りで驚き、食べて驚愕し、食べ終わると恍惚な表情をし、空になった皿を見て泣きそうになり、その後レシピを求めてくるので「賢獣のレシピだ」といったら渋々沈静した。隣でフクロウが『ホーホー!(そんなレシピ知らない!)』と喚いていたが、言葉が通じないからバレずに済んだ。
ちなみにフクロウの賢獣も、エンやヤンとランと一緒で趣味嗜好として物を食べることもあるらしい。(帰りにお土産が欲しいと強請っていた)
「それじゃ2日くらい前にギルド本部に行けば良いかな?」
「当日参加される国々の方の挨拶もあるので、本来ならばもう少し前にいらして欲しいのですが、メリットよりもデメリットの方が大きいので2日前くらいの方が良いかと思います。」
「ガースは来るの?」
「役外相談役って平と変わんないんだぜ?食事は是非一緒にしたいが、傍には要れないだろうな。」
「下手に私たちがガースに構うと妬まれてしまいますよ?ただでさえここの副ギルドマスターやさっきのギーホの様に。」
「それって構えってフリ?フリだよね?ガースに妬まれるようにしろって…」
「んなワケねーだろ!賢獣様、勘弁してくれ。」
「なんか扱いが雑じゃない?おれってエンの主だよ?」
「尊敬の念が持てない。」
「じゃあ料理も無しだな。」
「……!」
「じゃれ合うのはその辺で。それでは一度、お暇したいと思うのですが、扉の向こうの方々を何とかして頂けますか?」
「あー、そうだな。あいつ等なんとかしないとな。面倒臭え。」
先ほど追い出したギーホ達が手ぐすね引いて待ってるようだ。そりゃ、賢獣様相手に粗相をしてしまったのだ、名誉挽回をしとかないと、後々大変なことになるだろう。
しかもこの国の賢獣だけでなく、今後後ろ盾に立つエンにも嫌われちゃってるのだから。
「それもそうなんだけど、この子が壊した窓は如何なさいます?」
そうだ、この賢獣が室内に入ってくるとき、まどをブチ破って入ってきたんだよな。
「逆に、記念に残しておきましょうか?」
「ホーゥホー(恥ずかしいから止めてくれ)」
「“世界の愛し子”がブチ破った窓って言えば金取れるんじゃないか?」
「ホーーーー!(オヌシには血も涙もないのか!)」
「残念ですがこの子も嫌がっているので修繕の方向で。」
「それより、何でこの子って呼んでるの?エンより先に顕現してるんだから先輩じゃないの?」
「そのことですか?私たち賢獣は魔力の大きさで格、こちらの言い方ですと階位で立場が決まります。私よりもだいぶ下の階位になりますのでこの子って呼んでいます。世界の知識量にしても私の方が上ですし、そんな物だと思っていただければ。」
「ちなみにエンはこの世界で何番目くらい?」
「ここで聞きます??聞いてしまうと、主様以外の方々、特にガースさんなど、今後一切、喋ってくれなくなると思うのですが。。。」
「あーーー、言わないでくれ。いや、言わなくても今のやり取りで何となく分かっちまったけど、聞きたくねえ。食事も喉に通らなくなる。」
「またフリですか?仕方がないですね。それで「やめてくれーーーー!」は…。」
どこまでも平常運転のエンだった。
ふくろうcafeって行ったことあります?
おなかが減ってないときに行くと、近くに来てくれないんです(涙)
私だけでしょうか?




