12話.ヤなやつ1
異世界料理のマズさ。こちらの常識を照らし合わせれば、納得なんですが、
考えてみれば、ご都合主義で異世界の料理が美味しいのは無理がある気がします。
2020/9/6 10大国の派閥の割合を変更致しました。
12話.ヤなやつ1
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「後ろ盾?」
今、こいつは「伯爵領でもない、もちろん王国でもない」って言った。だけど「すでに早馬を伯爵領へ放っている。」とも言った。伯爵ではなく伯爵領と。それに伯爵子息をお付きもなしに任される。
つまり伯爵に信用も高く、だけど伯爵自体に与する立場・組織ではないってこと。
この世界の情勢が分からないからこれ以上は想像できない。けど、賢獣たるエンなら分かるはず。
そっとエンの方へ目をやると、軽く頷いた。
「“冒険者ギルド”の後ろ盾ということでしょうか?」
これまた定番の冒険者ギルドが出てきたよ。テンプレだと国に属さない独立組織だったかな?であるならば、ある程度の説明はつく。
「そうだ。世界に現在確認されている賢獣様は10体と言われている。各国に1体。この世にある大国に1体づつ。逆に言えば賢獣様がいるだけで国を興せるレベルとも言えるかも知れん。
その大国に対して中立を謳う独立組織である“冒険者ギルド”にはいない。世界の愛し子たる賢獣様がいらっしゃられない。」
「つまり発言力・立場が弱いってことか。」
「今は魔物の活性化で戦争も起こっていないが、抑止力として中立を謳っている“冒険者ギルド”には力が無い。戦争などがあれば冒険者が使い捨てされる状態なんだ。
本来“冒険者ギルド”は国では時間の掛かる、または対応してくれない魔物への脅威から民を守る民間組織が始まりだ。国の争いごとに使われて良いコマじゃない。今度開かれる世界会議でもどんな無理難題を押し付けられることか解かったもんじゃねえ。」
「各国の賢獣の主がひとこと言えば済む話じゃん。それとも10人の主、全員がそこまで愚かなの?そんな愚かな主に賢獣が付き添ってるのは何故?」
「無論、全ての主、国王が愚かというワケではない。しかし“世界の愛し子”を穿った形で顕現させてしまう主、国王もいるんだ。」
「なら愚かでない国と手を組めば良い話じゃん。
極論を言えば、愚かな国とは縁を切って、その国からギルドを撤退されば良い話だ。人に頼る前に毅然とした態度で撥ね退けろよ。情で訴えるな。」
「民を守るギルドが民を放って撤退など出来ぬから助力が欲しいんだよ。」
気持ちはわかるんだけどね。。。だからと言って俺らが巻き込まれて良いって訳じゃない。根本の問題として俺に頼むリスクを理解してない。所謂『先走り』だ。もっと為人を時間を掛けて、理解した上で話さないと。
もっとも、理解してたら絶対に頼まないだろうけど。
「エンはどうしたい?俺のこと抜きに率直な意見を言って。」
俺をじっと見て、少し考える素振りをみせるエン。俺の考えは分かってるはずだけど。。
「その前に。穿った形で顕現させてしまう主、ですか?実際何人いるのですか?」
おお、確かに。そんな国、世界を見て回る時に除外したい。
「10大国のうち穏健派が2ヶ国。あと中立というか日和見が3ヶ国。完全な中立・不干渉派が2ヶ国。残りの3ヶ国が過激派だ。ちなみにこの国は中立派だ。」
予想よりも過激派が多いな。
「それでは次に。世界会議はいつ開催されるのですか?」
「2ヶ月後だ。」
「最後に。あなたの現在の立場・役職は?」
「伯爵領本部のAランクでギルド本部役外相談役だ。役外相談役ってのは発言権のある平社員みたいなもんだ。」
「伯爵領本部じゃなくてギルド本部の役外相談役。
それに発言力じゃなくて発言権ね。」
「主様。お受けしても宜しいでしょうか?」
「情に絆された?」
「いえ。主様は世界を見て回りたいという夢がお有りです。その夢の為に。」
「なってくれるのか!?ありがてえ!」
ガースよ。ちゃんと理解してるのか?諸刃の剣だぞ?俺に感化されて顕現した賢獣だぞ?
「エンが決めたのなら構わないけど。良いんだな?」
「はい。」
「でもガースさん、条件があります。私たちは極力目立ちたくありません。だから顔は隠させてもらいます。あのご子息には申し訳ありませんが私たちの記憶を弄らせていただきますので。」
え?エンさん、そんなことまで出来ちゃうの?
「その上で、そうですね。。明後日に伯爵領本部のギルドに伺います。その際に詳しくお話をするということでよろしいでしょうか?根回しをお願いしますね。」
「わかった。明日は遅めに出発するからバカが起きる前に出発してくれ。」
一番巻き込またくない権力に巻き込まれちゃった(ほぼエンのせいで)。
翌朝、朝食は簡単に済ませ壁を撤去し、ガースに挨拶した後、伯爵領に向かう。
もちろんバカの記憶は弄ってある。
ガース達が見えないところまで来た所で、エンが準備したい事があるから急ぎたいとの事。伯爵領の領都まで30kmほど。当初は行商として回るつもりだったが、予定が変わってしまったので、恐竜と大八車も全てストレージに閉まい、転移で向かうことにした。
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「はぁー、領都って栄えてるねー。」
「食事文化は最悪ですが、栄えてはいますね。」
「え?そなの?食事はマズい?」
「いつもの食事と比較すれば雲泥の差です。特に肉は最悪です。味付けはほぼ、塩味とハーブのみですから。地域によっては魚醤や胡椒もありますけど。」
「じゃあ焼き串やステーキも悲惨系か。」
「試しに、露店の焼き串でも買って食べてみますか?」
「そうしよう。」
領内を散策しながら適当に露店の焼き串を買う。1本銅貨10枚。以外に高い。
俺、エン、ヤン、ラン4つ買う。焦げた匂いとハーブの香りが相まって、悪くはない感じだが、一口頬張ると、最悪の意味が良く分かった。
「「みゃみゅーい!(まずーい!)」」
ヤンもランも日頃の生活で舌が肥えてるからな。この味じゃ満足できないだろう。
「ここまでマズいもんなの?」
「血抜きがほとんどされていないので、それを誤魔化すためにハーブを大量に使い、ほぼハーブの香りと味しかしないからですかね。しかも後味は血が回った肉特有のこみ上げてくる感じ。これがこの世界の標準的な肉料理です。」
「ちゃんと血抜きすれば済む問題じゃないの?」
「アボ様。一般常識として、血抜きをしないからマズいのではなく、時間経過による腐敗と過熱による調理法がマズくさせるのです。
血自体は美味しい物や無味無臭の物もあるのですが、血はまっさきに腐敗を始めるといっても過言ではありません。
捕獲した獲物をいつまでも放置しておくと、血が腐敗して肉に生臭い腐敗臭が残ります。これが原因の一つですね。
次に、動物の筋肉中に一般的に含まれている脂肪酸の一種が100℃以上に加熱されると、まわりの鉄分と結合して、嫌な臭いが発生します。
いくら血抜きをしても強火で加熱すると必ず臭いが出てしまいます。これが二つ目の原因です。
それを踏まえた上でお話しします。
魔物が溢れる地で狩りをします。血の匂いは魔物を呼びます。いつ襲われるか分からない状況で血抜きなんてそんな悠長にできますか?
だから普通は血抜きをしないで持ち帰ります。しかも1匹では採算が取れないので数を狩ります。内臓も取らずに取り置きされた魔物は当然、鮮度も良くないです。結果的に、血が腐敗し、肉全体がマズくなるのです。
その上、調理法が焼く・煮るしかない、調味料も塩とハーブのみ。キツい匂いと味を、大量のハーブで誤魔化し焦げ目をつけるように直火で、強火で焼いてます。この集大成が今食べた焼き串です。」
「いやな集大成だな。」
「アボ様がいなければ、“べじたりあん”になっていたと思います。」
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約束の日となり、ギルドの近くまで来た。面割れしない様、頭にはターバンを巻き髪色が見えないようにした。
マントも羽織って、念のため顔にはサングラスを掛け、鼻から下は布で覆っている。如何にも怪しい雰囲気を醸し出している。ヤンとランは窮屈だけど肩から下げたバックの中に入ってもらっている。
「さて、それではギルドの中へ行こうか。」
「ついでに登録でも致しますか?」
「面倒臭い。どうせ俺は戦えないし、あんまり意味ないかなー」
「ではそのままで参りましょう。ヤンさんとランさんはお静かにお願いしますね。」
「「みゃーん(はーい)」」
ギルド内に入ると、意外にすっきりとした印象。広いカウンターにスペースを開けて受付らしい女性が並んでいる。壁にはランク別の依頼表だろうか?木板に書かれたものが引っ掛けて並んでいた。
「酒場は無いけどミーティングルームみたいにテーブルはあるんだね。」
座席は無いが立って話し合いが出来るようなテーブルが何卓もある。ここで依頼を吟味するのだろうか?とりあえず受付の人に話しかけるか。
「すみません。ちょっとよろしいでしょうか?」
「はい、大丈夫ですよ。」
一瞬胡散臭そうな表情をしたが、一瞬で気を取り直し、笑顔で返事を返す。受付としてはまだまだだな。
「本日、ガースさんと面会の予定があるのですが聞いてますでしょうか?時間まで細かく決めていなかったので、まだ来られてない様でしたら出直しますけど。」
「ガースだと?」
受付に話しかけたのに、受付の後ろを通りかかった男が胡散臭そうな視線を向けながら話しかけてきた。気に食わん。無視しよう。受付に視線を合わせ、男の方には見向きをしない。
「おい、お前!」
案の定、イラついた感じで問い詰めてくる。当然無視。お前に話しかけちゃいないんだよ!
「おい、返事をしろ!」
声がでけえんだよ。目立つだろ。
「うるせえな。てめえとは話してねえだろ。邪魔!」
「なんだと!俺を誰だと思ってる!」
「知るか。カウンターの内側にいるんだからギルドの関係者だろうけど、今はこの受付の人と話してんだよ。横から茶々入れるな。話が進まねえだろ。」
受付の女性があたふたしている。煽り過ぎたか?カウンター越しに手が伸びてきた。
「副ギルドマスター!」
受付の制止の声。これが副ギルドマスターなの?
掴みかかる腕をスウェーで何回かかわし、遊んでいると、いつの間にか受付が居なくなっていた。呼びに行ったか?ギルド内も騒然としている。
でもね急に面倒臭くなった、帰ろうかな。。
「副ギルドマスターがこんな感じじゃ、面会の話も聞いてないようだ。縁が無かったようで。それではさようなら。」
怒れる副ギルドマスターを無視してそのままギルドを去ろうと歩き始めた時、階段からガースと受付の女性が飛び降りるように駆けてきた。
「待ってくれ!」
その声にギルド内も静寂に包まれたが、
「根回しはお願いしますねと言ったはずですが。目立ちたくないとも。
言葉の意味は子供でも理解出来るでしょうに。。残念です。」
エンのひと言でガースは目を見開いて、言葉を発しようとしたが、余計に目立ってしまうと気付いたのか、押し黙る。
そこに受付の女性が気を利かし、傍までやってきてギルドの奥へ誘導しようとしてくる。まあ、あんたは悪くないよな。原因は副ギルドマスターだし。悪ふざけした俺も悪いけど。
面会は、エンが了承したからだし、俺の気分で話し合いをせずに帰っちゃうのも、エンに悪いか。一応、話し合いの席には着かないと。
エンは基本的にアボの想いを組んで行動します。
アボさえよければ「それで良い」場合と、「そうじゃない」場合があります。
刹那的な視野では無い関係上、アボの意に反するように見えてしまうかも知れませんが
結果的にはアボ一筋です。




