10話.伯爵領?いやいや、寄るワケないだろ
男爵 → 伯爵に変更しました。
10話.伯爵領?いやいや、寄るワケないだろ
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「エン。とりあえず殺気を抑えろ。」
こんなんじゃ話が進まん。
「憂いを無くすには殺して埋めてしまえば。。。」
「それって問題解決になってないからね!」
「暴食ザウルスを殺ったの、嬢ちゃんだろ?『殺して埋めて』とかシャレになんねえから!」
俺とお付きの人がツッコミ入れる。
「でも伯爵の子息様がこれ以上問題起こす前に、あんたが何とか出来るのか?こっちは爵位持ちの子息って面倒を持ち込まないでくれよていうのが本音だよ。」
「俺はアレの護衛の任務を請け負ったガースって言う。今回は本当にすまん。一応雇用主の伯爵より道中の護衛で付き添ってるワケだが。。こっちも本音を言えば、こんなトラブルは契約外と言いたい気分だ。」
「一応、聞いておくが、伯爵様は真面な御人か?」
「評判も悪くなかったから受けたんだけどなー。そもそも伯爵のお付きがいない時点で事故物件だと気づくべきだった。『くれぐれも頼む』って言われた意味をよく考えりゃ良かった。」
苦労してんなーと他人事で考えていたが、俺たちも(主にエンが)当事者だった。とか考えながら子息を見ると、眠らされたようで、馬車に連れ込めれてるところだった。
「…あの扱いって問題にならないか?」
「今更だよ。事あるごとに問題起こしてくれちゃってるんだから。正直、依頼金いらねえから関わり合いたくねえ。」
「関わり合いたくないのは俺らもだけど、起きたらまた何か言ってくるんじゃないの?」
「その頃にゃ馬車は走り出してるよ。」
「万が一、どこかで会ったら言いがかりつけてこないと確約できる?」
「…すまん確約出来ねえ。」
「だったら根本的な解決にはならないだろ。」
「じゃあ一緒に伯爵領に来ないか?依頼完了の時に伯爵のところに行って確約させるから。」
「伯爵領?寄るワケないだろ。面倒ごとの予感しかしないもん。」
伯爵自体が真面な人でも道中、ずっと絡まれ続けることになりそうだし。
「アボ様、私たちが向かう先も伯爵領ですよ?」
「そうなの?飛ばして次のとこにする?」
「見たところ行商だろ?お貴族様に繋ぎを持てりゃメリットが大きいんじゃないか?」
「デメリットが多すぎる。そこまで儲けたいとも、目立ちたいわけでもないし。」
秘密にしたい事が多いからな。
「それに、連れのこともあるから」
「確かに目を付けられちゃったからなー。最悪、取り上げられちゃったら目も当てられねえ。」
「それは無理ですけどね。」
「ん?嬢ちゃん、お貴族様は例え伯爵でも、権力は馬鹿に出来ないぞ?」
確かに命の軽い世界みたいだし、ちょっとしたことで『不敬だ』って殺されちゃうこともありそうだ。でもエンは…
「大丈夫ですよ。私は賢獣ですもの。賢獣を主様から離すなんて愚行、世界がお許しになりませんわ。」
え?自分から賢獣ってバラしちゃうの?
「賢獣って嬢ちゃんが?世界に10体しかいないっていう?…どうみてもヒト族じゃ……!この魔力は?!」
さっきまで殺気を醸し出していたエンが今度は魔力を滲み出させている。
「賢獣の証か“賢者の書”をお見せしますか?それ相応の覚悟が必要ですけど、それが御有りなら。」
知らない情報が次々と。世界に10体?賢獣の証??賢者の書???あの管理者もそんな貴重なものを気軽に渡すなよ!あとでエン達に詳しく聞かないと。。
「“賢者の書”?!そんな世界を弓なす行為、出来るワケねえだろ。賢獣の証だって滅多に見せれるもんじゃねえはずだろ?ある意味、王族より尊い“世界の愛し子”なんだから。心臓に悪いことは言わんでくれ。
それに嬢ちゃんの魔力をこれだけ感じるんだ。賢獣様って言われても嘘だとは思えねえ。。そうか!あんたが目立ちたくないって言ったのも。。。」
なんか勝手に勘違いしてるみたいだけど、上手く事が転がるかな?
「何にせよ、賢獣様は自由を尊ぶ。意思を尊重するのは吝かでもない。ただ、このことをアレが知ったら絶対に伯爵領に招致したいって言ってくるぞ。
国に囲われていない賢獣様なんて滅多にいねえんだから。賢獣様が拒否しても、あの手この手で誘ってきやがるぞ。」
「面倒臭い。」
「普通、階位が違い過ぎれば無体な事は無いはずでは?」
「ヒト族の場合は。。。搦め手が得意だからな。」
もはやため息しか出ない。エンがいった通り、消しちゃうか?それとも消えちゃうか?
「アボ様、如何なされます?この際、関わりを無くすのであれば、ヒト族の国から離れてしまえば、その場では済むことですが、後々も同じことの繰り返しの感もありますし。」
だよなあ、別に拠点で引きこもっても構わないけど、せっかく異世界に来たしなあ。。。問題はエン達に力があっても、俺はそうじゃないってことだ。搦め手で俺がハメられたら、って考えると躊躇するぞ。でもここで逃げればきっと噂が広がる。どこに行っても“気を置く”生活は勘弁だ。
「エン、ヤン、ラン伯爵領に行っても大丈夫?嫌なら避けても構わないけど。」
「「みゃうみゃうみゃー(だいじょうぶー)」」
「問題ありません。何でしたらこの国の賢獣を呼べば、万事解決しますし。」
「そんなこと出来るの?」
「問題ありませんわ。」
「いきなり呼ばれた方は処刑に近い絶望を持つだろうから絶対に止めてくれよな。」
それフラグ立ったんじゃ。。。
結局、一緒に伯爵領に行くこととなった。食事を続ける気も無くなり、手早く腹に収め片付けた後、伯爵領へと向かうことにした。ちなみに恐竜は大八車の後部にポールを立て吊り下げている。
俺じゃ、とてもじゃないが重くて曳けないのでエンが(軽々と)曳いてくれてる。伯爵の護衛の人たちも軽く引いてるのが遠目からでもよくわかる。俺らの後ろに速度を合わせて馬車が付いてくる恰好だ。
問題はあの子息だ。今は眠ってるから良いが、起きた時のことを考えると憂鬱だ。
「アボ様、どうやら起きられたみたいですよ。」
馬車の中が騒がしい。ガースが馬車に馬を横付けして必死に説明しているようだ。
「あのガースって男、いくら伯爵の子息だからって貴族に対しての態度とか違和感ない?」
「実力はともかく、言葉遣いはガサツですが所作が所々、違和感はございます。貴族でも物怖じしない態度、謙りながらもあの物言い。賢獣に関しての知識。。。我々も隠してることもありますし、お互い様ですが。」
「ま、もうすぐ夕ご飯だ。近くに野営地はある?」
「この歩みならば、あと30分くらいですかね。」
「絶対に絡んでくるよな。。面倒臭い。
あ、そういえば“賢獣の証”とか“賢者の書”って何なの知らないんだけど?」
「あぁ、それはですね。。。」
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一方、馬車では
「ん?何で馬車が動いてるんだ?おい!誰か返事しろ!」
「起きた。隊長に報告してこい。」
並走していた男がガースを呼びに行く。ガースは面倒臭そうに馬車に横付けし、気の進まない感じで説得にかかった。
「旦那、どうしたんで?」
「どうしたもこうしたもないだろ!あの女はどうした!」
「行き先が一緒なんで。うちらの前を進んでますよ。」
「すぐに呼んで来い!」
「後悔じゃ済まないレベルの事態になりますぜ?いくら覚悟がお有りでも、こっちは下ろさせてもらう。命は一つしかないんだ。旦那の命だけじゃなく伯爵領だってどうなるか分かりませんぜ。」
「どういうことだ?あんな成りして高貴な身とでもいうのか?」
「ある意味そうですぜ。“世界の愛し子”って言えば解かりやすいか?」
「なんと!賢獣様だと申すのか?ヒト型の賢獣様なんぞ要るワケがない!」
世界に10体要ると言われている賢獣は、そのほとんどが動物の様相だ。確認されている賢獣でヒト型は1体もいない。もしヒト型の賢獣が居るのならば、主以外で意思疎通が出来る、現人神にも匹敵する存在といえよう。
「本当に賢獣様なのか?」
「ウソだとお思いなら“賢獣の証”でも“賢者の書”でも確認してくだせえ。伯爵領が滅びても構わないのであれば。」
“賢獣の証”は賢獣である証ではなく、主との繋がりの証である。当然、主も証を持っている。魔石とは違い、繋がりが色となって表れる為、他人に見せるのを嫌がられる代物。
主とは一心同体と言われているが、もし主の証と賢獣の証の、互いの色が違った場合、賢獣は怒り狂って主だけに及ばず、周辺諸国にまで焦土と化すと言われている。
実際は怒り狂うことはなく、せいぜい主を見限り去ってしまった事例があるだけである。ただ“世界の愛し子”が離れるということは、国を見限ったと同意であり、国は周辺諸国からも見限られ、荒廃していくので似たようなものだが。
“賢者の書”は賢獣がこの世界に顕現する際に吸収した世界の理。もし手に入れればこの世界の英知を治められると言われているが、同時に世界に弓を弾く行為として忌避され、世界条約でも賢獣の書の閲覧は第1級犯罪とされている。
ちなみに貴族であれば賢獣について習う、一番最初の常識である。
「しかし、にわかには信じられん。確かに人外の美しさではあるが。。」
「さっきの無体は水に流してくれそうですが、これ以上は庇い切れませんぜ。
あ、そろそろ今夜の野営地ですけど、くれぐれも賢獣様御一行に粗相はしないでくださいよ。」
出来れば声も掛けてくれるなと願うガースだった。
会話か説明かどっちかになってしまう。。
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