L―5
店を出た頃には夕方になっていた
100 万円はつけにしてもらった
バイトもしてない普通の女子高生には
とても払える額ではなかった
まあ、私は普通じゃなく死神なんだけど
しばらく歩いていると
「鈴さん……」
不意に背後から声がした
「ゾンビか何のよう?」
私はさっき貰った物を手に身構える
「あ……いえ、お使いの帰りで」
霊霧師匠拾ったその日にお使いかよ
ひょっとして人手がほしかっただけなのでは
「ゾンビお前の目的は何?」
「あの……帰りたいです」
迷子だった……
「帰りたいって霊霧師匠の家? それとも自分の家か?
それとも土に帰りたいか?」
「いえ……ゾンビの私に元の家はありません 霊霧さんの家に」
霊霧師匠の家に向かってる間に私はふと思ったことを聞いた
「ゾンビお前の誕生日はいつなの?」
「12 月 29 日です……」
それは、どっちなのだろう
生前の誕生日なのか
ゾンビになった日なのか
「ゾンビになる前の記憶はあるの?」
「いえ……私の記憶はゾンビになってからです」
なるほど、さっきの誕生日はゾンビになった日か
「ゾンビお前、現世に未練ない?」
「未練ですか……生前の記憶がないので」
ゾンビとはいえ幽霊と変わらないのだ
ただ、魂だけか体を持ってるかの違いで
知性があるなら体と魂の繋がりは強いだろう
現世の未練を解消し魂を浄化することで
体と魂の繋がりが緩くなった時をねらえばいいか
「お前みたいなゾンビがいるとはゾンビも進化したんだね」
「……そうですね」
「やあやあ、ここであったのも、また運命」
急にかけられた声の方をみると
そこには紫髪の女性がいた
「後ろに」
私はゾンビを後ろに隠した
「おやおや、そう警戒しないでくれよ
君とは鎌鼬で会ったばかりじゃないか」
ひょっとしてこの人がさっき店から出てきた人か?
「おやおや、失礼それは明日の出来事だった、
1日勘違いをしてたよ、今日はそう、すれ違っただけ」
何を言ってるんだこの人は
「いやいや、失礼私には未来も過去も
全部見えているけど いつの出来事か記憶してないのでね」
胡散臭いとことん胡散臭い
「あらあら、胡散臭いと思ってるね ゾンビに鈴さん」
名前を言ってないのに言い当てた
それにゾンビと言ったか寿命が見えない以外は
普通の人に見えるこのゾンビを
「お前は何を知ってる」
「いやいや、何でも知ってるよ死神さん」
私を死神と呼んだか
さすが鎌鼬が信じるほどの占い師兼情報屋か
「すごい……」
そう言って緊張の糸を切ったのはゾンビだった
「お姉さんすごい……私を占って」
「おやおや、何を占うのかい?」
そういうと鞄から水晶玉をだした
「あの……私は鈴さんと仲良くできますか?」
「どれどれ、見てみようか」
怪しいとても怪しい
「ほらほら、見えてきた 大丈夫仲良くしてるよ」
「良かっ……た」
このゾンビと私が仲良くだと
そんな未来あってたまるか
「そうそう、そろそろ迎えが来るよ」
「おや?鈴じゃないか 俺の可愛い家族を誘拐して
何をしようとしてるんだぜ」
占い師兼情報屋の言う通り迎えが来たようだ
「霊霧師匠この占い師がですね」
「鈴さん……もういないです」
指差した先には何もなかった
「まさか鈴が屍姦の趣味があったとは いいぜ二人の結婚を認めるぜ」
まて私にそんな趣味はない 第一結婚だと
まてまて、女同士だぞ同性婚の法律はまだないはずだ
いや、それより相手はゾンビだ法律的にどうなるんだ?
「鈴さんと……幸せになります」
おい、認めてんじゃないよこのゾンビ
話がややこしくなるだろうが
「おや、本当にそんな関係だったとは驚いたぜ」
「もう……そんな関係ですよ」
あー、訂正するのも馬鹿らしくなってきた
というか目眩がしてきた
フラフラしてきた
てか本当に意識が……