L―2
2杯目のコーヒーに2敗したあと、私は出かけた。
夏休みに部活動は普通だろう
しかし、帰宅部に部活動があるのは、おかしいだろうと思う。
正しくは部活動と言う名の師匠からの呼び出しである。
「いやー暑いぜ」
教室の扉を開けた先に仁王立ちしている。
この暑い日に涼しげな水色の髪の師匠に
呼ばれ、言いたいことはあったが
それを飲み喉を潤した。
「霊霧師匠何ですか?」
私は暑さに溶けそうな顔を保ちながら言う。
「やあ、よく溶けないでここまできた褒めて進ぜよう」
霊霧師匠はまるで王様の様な態度で言った。
「ははあ、ありがたきお言葉」
いつもこの調子だ
あの日、師匠と会わなければ
私は、死んでたのか
それとも、人として生きていたのか
元々、人ではなかったんだけど
ちゃんと化け物として
人に化けて生きてはいたのだろうか。
「逝者が見つかったぜ」
生者でも正邪でもなく逝者
死期が近い者、または
すでに死んで現世に残っている魂、を総じて呼んでいる。
その魂を幽世へ送るのが私達死神の仕事だ。
そう、私達 霊霧師匠も死神である。
「今回はどっちですか? 死期が近い者なら周囲の人から
評価を聞いて寿命延ばしますか?」
死神だからこそ死を延ばせるのだ
私達は基本、人を導かない死神
さまよう魂を導くのを専門としている。
他の死神がどうなのか、他に死神がいるのかさえ
3年前のあの日から把握していない。
「いやあ、今回は特例のゾンビだぜ」
「ゾンビ……ですか」
ゾンビ……死体に魂が宿った存在
実体があるから魂とも言えないし、
かといって死期が近いわけでもない
むしろ死期を通り越してるのだ
導ける時期を過ぎているのだ。
「見失うと面倒くさいから連れてきたぜ」
そう言う霊霧師匠の後ろから
そのゾンビは出てきた。
「ずっと仁王立ちだったのは後ろに隠してたからなんですね」
「どうも……」
腰まである白にほんの少し茶色を混ぜたような髪
カフェオレの様な眼
フリルのスカートをはいた
身長はおそらく 140 ㎝
西洋人形のようなゾンビだった、
そのゾンビが喋ったのだ。
「え? 喋った」
「そう、喋るゾンビだ名前は名無 仮偽蘭だぜ」
驚く私に平然と霊霧師匠は言った。
「名前つけたんですか!?」
まだ、衝撃の迷宮から抜け出せない。