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#08 勇者召喚

 勇者召喚。

 人族が人神と協力して世界の次元を無視する魔法。

 言葉は悪いが、他の世界から強力な助っ人を無理矢理喚びだし使役する一種の召喚術だ。

 俺もこの神になってから3回ぐらいそれにたち会った。というか転移の手伝いをしてやった。


 転移してくる勇者たちはどれも地球、それも日本の人たちだった。

 これは俺の仮説だが、勇者召喚に使う魔方陣に書かれているであろう、転移させる場所の座標が変わらないからじゃないだろうか。


 実は神でさえも勇者召喚の原理がわからないのでこの魔法は[人族の奇跡]と言われている。しかもその詳しいやり方を覚えている人も書かれている本もなく、あるのは魔方陣だけ。

 幸い魔方陣というのは準備が完全にできていてあとは魔力を流せば発動できるものだから、そこにすがって人族は同じ魔方陣を使い回している。


 ということはその魔方陣にある、位置を示す部分も変わらず使い回されるため、毎回転移させられるのは日本にいる人だけなんだろう。

 俺はこの原因をそう考えている。

 まぁ、俺以外にこの理由に疑問を持った神はいないけど。


 今回も仕事なので手伝わないといけない。そのために人神と勇者が一度経由する世界の境目で待ち合わせをしていたのだが......。


「すみません。お待たせしました」


 相手が遅刻してきた。


「遅れたのは別にいいですが......あれ?マイルスさんは?」


 ここに別人(別神?)が来たことを考えると大体理由は分かるが聞いておきたかった。


「はい。マイルス様は50年ほどに私に仕事を任せ、【神々の街】へと旅立たれました。これからは私、カメラが人神を務めさせていただきます。挨拶が遅れてしまい申し訳ありませんネレフェク様」


「そうでしたか。よろしく、カメラさん」


「はいよろしくお願いします」


 どうやら先代人神は寿命を迎えたようだ。

 あの神様子供たちのため子供たちのためって忙しい神だったからな。【神々の街】ではゆっくりして欲しいな。


「じゃあ早速、転移の時にして欲しい要望はありますか? ちなみに今回は3人きますよ」


「そうですね、いつも通り[アイテムボックス大]と[人族言語理解]と[微鑑定眼]はください。それと隠れスキルで[成長率増加大]と[初期ステータス5倍]をお願いします」


「そこはわかってますよ」


 それはマイルスの時もそうだった。

 スキルや称号などは、生き物が下界に降りてしまったらもう誰にも付与したり変更させたりすることができない。

 だから今のウチに魂に干渉できる俺が書き加えてやるのだ。


 中には相手のスキルを奪う系のチートもあるが、それは例外中の例外。そういうのは神だったり悪魔だったりロクなものが関わっていないので、俺はオススメしていない。



「それぞれの称号はどうします?」


「【勇者】【魔導師】あと......【防護術師】にしてください」


 防護術師か。珍しいけど何でだろう。

 カメラさんは何を狙って勇者召喚を? いや、まぁ勇者召喚は他神との戦争に使うものではあるんだけども。


「わかりました。じゃあ俺からも転移者にプレゼントを贈るけどいいですよね?」


「え、そんなことしてもらっていいんですか?」


 あれ?これは俺が【再生を司る神】になってから毎回やっていたけどな。伝わって無かったのか?

 まぁ、そんなことぐらいあるか。

 俺は肯定として頷いた。


「それでは、お願いします」


「相談事はこれぐらいですね。勇者が地上に降りたらカメラさんは彼らに介入できなくなりますよ。他に何かないですか?」


「......大丈夫だと思います。それでは勇者たちをお願いします」


「はい。ではまたいつか」


 カメラさんはスッ...と消えていなくなった。


 *


 そろそろ勇者がくるな。

 まったく。死魂に干渉できるのが【再生を司る神】だけって、誰か手伝ってくれたりしてもいいのに。

 まぁ俺は魂の案内の自動化に成功したからこのぐらい別にいいけどね。


 それから少しの間(ほう)けていたら3つの魂の気配がしたので、魂が入り込める媒介を用意する。

 この媒介は【創造を司る神】がこの勇者たちの前世の姿を見て作ってくれたものだ。――あ、これは手伝いに入るのかも。

 この媒介、前世通りの姿形(すがたかたち)だから自分たちが死んでしまったとは思わないだろう。

 そう、転移と言っても向こうでは死んだことになってしまっているから地球に帰ることはできないのである。この子たちも(あわ)れだな。

 他人行儀に言ってはいるが、俺も一応転生したんだよな。きっと俺もあっちで死んでるんだろうな。まぁ蝉に転生したもんな。

 みんなは元気だろうか。まぁ、関わりはほとんどなかったけど。


 そんな思い出に浸っていると勇者たちの魂が飛んできた。

 ちょっと捕まえてさっきカメラさんと相談したスキルだけ貼り付けておく。

 俺は称号をその人の人となりをみてから付与することにしている。なのでスキルだけだ。


 スキルを付与し終わったので魂を離すと、それぞれの肉体へと向かっていった。


「うおっ!」

「きゃあ!」

「わ!」


 魂が媒介に入った途端、それぞれが悲鳴を上げた。

 この子たちにとってはいきなり床が光って、いきなりここに来たって感じだからな。

 とりあえずできる限り優しい笑みを浮かべて問いかける。


「こんにちは。早速だけど異世界転生ってわかる?」


 *


 まだ何事かと戸惑っている3人を落ち着かせてから簡単に説明した。

 ここは地球じゃないとか、俺が本当に神だとか。うん説明というか前提の押し付け。


「......――それで、君たちには勇者となって人族を助けてほしい」


「なるほど、テンプレですね」


 3人の内、唯一の男子が目を閉じながら答えてくれた。

 先のことでも考察中かな?


「お、わかる? 話が早くて助かるなぁ」


「何をいってんの! 私はいやよ! 茉莉(まり)もいやでしょう!?」


「......神様、私たちって地球に帰れるの?」


 茉莉と呼ばれたフワッとしたミディアムヘアの少女は俺に恐れることなく質問してきた。

 勇気あるね。テンプレ的に勇者は男の子だけど、少し特殊にしてみるのもありかもな。


「それは無理だね。このまま地上に行って人間に従うか歯向かうかのどちらかさ。でも魔王を倒せたらその可能性もでてくるよ」


「そう。無理なんだ。じゃあしょうがないんじゃない? 紀薗(きその)も早めに諦めたほうがいいよ」


 状況判断も早くて正しい。


「はぁ!?帰れない!? 家族は?えいりんは?もう会えないの!?」


「残念ながらその通りだね」


「そんなっ――!!」


 紀薗と呼ばれた金髪少女の方はまだ認めたくないようだ。


「ねぇ、康介(こうすけ)もなんか言いなさいよ!」


「俺? ......あなたの世界に行っても僕たちは生活できますか?」


「そういうことじゃないわよ!!」


 この感じだと康介くんと茉莉ちゃんが既に割り切れていて、紀薗ちゃんはまだ承諾できなそうだな。

 これから話す内容で納得してくれればいいけど......。

読んでいただきありがとうございます。

今回はどうでしたか?


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これからもこの作品をよろしくお願いします。

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