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#03 再生を司る神

(ええっと...。俺は死んだんじゃ無いのか?)


「うん死んだよ。でも僕が生き返らせてあげたんだ」


(お、俺の心を読んだ......だと!?)


 まぁ、ファンタジーならあり得るわな。

 いわゆる念話ってやつ?


(あの、とりあえず起き上がらせてもらってもいいですか?)


 俺は今地面に逆さまになっている。あれだ、死ぬときひっくり返っちゃう虫の習性(?)。

 昔飼ったカブトムシとかクワガタもこんな感じで腕を交差させて死んでたよな。あれって何でなるんだろうな。


「え~...。僕、虫だけは苦手で。特にそうやってひっくり返って脚をうねうねしてるとこマジで生理的に無理」


(ひどい!?)


 心底嫌そうな顔をした少年は一度離れると長い棒を持って来てそれで起き上がらせてくれた。

 そんなに嫌なのか。まぁ気持ちはわかるけど。


(それで、あなたはどちら様で?)


「僕? 僕はねここの塔の主である【再生を司る神】ネレフェクだよ」


 この世界は神が本当にいるんだな。

 これなら生き返らせるのもだいぶ無理矢理だけど納得できる。


(生き返らせてくれてありがとうございます神様。では俺はそこの木の樹液を飲んだら帰りますので)


 もうさっきからあの木の美味しそうな匂いが漂ってきて。

 口周りヨダレでべちょべちょですわ。でないけど。


「ダメに決まってるじゃないか」


 あ、ダメなんですか。

 たぶん俺は今、目の前にあったおやつを取り上げられた猫のような顔をしているだろう。

 何故猫なのかって? そりゃ俺が猫しか飼ったことないからだよ。

 本当ならもっといろんな種類を飼ってみたかったな。そのために軽く下調べまがいなこともやった記憶がある。


「あれは«(よみがえ)りの木»っていう神聖な木なんだ。せめてここにこれた理由を教えてくれないと......何で君みたいなただの虫がここにこれたんだい?」


(え、普通に塔の横を飛んで来ましたよ?)


「......結界が無かったかい?」


(ああ、あれですか? 普通に隙間を通って来ましたよ?)


「そうか。じゃあぼくもそろそろ引退時かなぁ」


 神は神妙な顔でそう呟いた。神だけに。

 はいすいませんつまらないですよねだからそんなおぶつをみるようなめでみないでくださいごめんなさい...


 というか神様って引退とかするんだな。


「うーん。こんな虫と仲良くなるのは気が引けるなぁ。でもまぁ、いいか。ぼくの最後の独り言、聞いてくれるかい?」


(片方は脳内だけど一応話してるんだから独り言じゃないだろう)


「はは、それもそうだね」





 そこから俺は空腹も眠気も我慢して三日三晩ネレフェクの話し相手になってやった。

 ほとんどが思い出話だった。でも、俺の疑問にはちゃんと答えてくれた。


 しかしこの神、話しが長いのだ。

 校長先生みたいに1つのことからよくわからん話に発展させて長くしてる訳じゃない。

 これでも3日に抑えられて良かった方らしい。生きてる間に起こった出来事が多すぎるんだと。

 .........そりゃそうだろ。

 だってこいつ5000年も生きてるんだぞ! そんなに生きていたらその間にいろんなことが起きるわ!


 でもおかげで俺はこの世界について結構知ることができた。

 この世界は神というのが身近に存在するとか。

 俺が今いる塔は«蘇りの塔»と呼ばれるダンジョンだとか。

 この世界は人間以外にも人型の生物がいるらしいとか。いわゆるエルフや、けもみみっ子のことね。あとゴブリンも。

 一夜漬けどころか3日ぐらいずっと知識を詰め込まれた感じだけど、そんなに苦にはならなかった。


「――......さて、僕の話も終わったところで、君の元の世界の話も聞かせてくれないかな?」


(あ、やっぱり聞きたい?)


「そりゃね。でもいくら考えても変だよね。僕は君を転生させた覚えが無いのにな」


 このネレフェクの仕事の1つとして[他界から迷いこんできた魂の転生]というものがある。俺がこの世界に転生したのならネレフェクが俺を知らないとおかしいのだが、ネレフェク自身は俺みたいな奴知らないと言う。


「これから何かがあるのかも知れないね。まぁ、僕はもう引退するから関係無いし別にどうでもいいんだけど」


(ホント、いい性格してるよ)


「神なんてみんなこんなもんだよ。自分良ければすべて良し。第一君も似た精神だろ? いいからそのチキュウってやつを教えてよ」


(わーたよ)


 ネレフェクには俺が16年間過ごした地球についていっぱい教えてやった。




「――......凄いね。そんな世界があるんだ! 僕もチキュウから来た魂を何人かここに転生させたけど彼らにはその後会ってないからね。いやぁ、聞けて良かったよ!」


(喜んで頂けて何よりです。ってことでそろそろ樹液飲ませてくれ。マジで死ぬ)


「そうだね。わかったよ」


(やった! ありがたくゴクゴク飲ませてもらうわ!)


 俺はフラフラと桜の下に向かう。

 桜の麓まで来た。

 ようやく、ようやくだ。俺の限界を越えた食欲よ、今解き放たん!!

 そうやって桜の木に噛み付いた時だった。


『称号【再生を司る神】を取得しました』

『【再生を司る神】ネレフェクの能力を一部受け継ぎしました』


(は?)


「その木は【再生を司る神】の核なのさ。それにダメージを与えた人が次の神になり、僕はこの世から居なくなる」


 その声に振り向くと半透明になったネレフェクがこっちに歩いてきた。


(じゃあ俺に噛み付かせるなよ!)


「僕は引退時だと言っただろう? 後のことは君に任せることにするよ」


(俺はただの蝉だぞ!? そんな奴に任せていいのか!?)


「そんなの知らないよ。僕はもうこの世界に居なくなるからね」


 結局人任せかよ。

 マジでいい性格してる。


「ただ、1つだけ僕のお願いを聞いてくれないかい? これから君はネレフェクと名乗ってほしい」


(それぐらい別にいいが......もう逝っちまうんだな)


 ネレフェク――いや、旧ネレフェクは体の半分以上がすでに消えていた。


「そう...みたいだね。じゃあこれからよろしくねネレフェク」


(ああ。自由気ままになんとかやるわ)


「ははは、君らしいね。安心しな。君は君が思ってるよりもずっとずっと強い。頑張ってね」


(おう。じゃあな。......今までお疲れ様。ありがとう)


「っ......こっちこそ。バイバイ」


 旧ネレフェクは最後に涙を一滴残してついに消えた。

 そしてここから俺のネレフェクとしての蝉生が始まった。

読んでいただきありがとうございます。

今回はどうでしたか?


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これからもこの作品をよろしくお願いしますします。

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